厄災戦争 大魔王アザトースvs世界4
神聖皇国軍聖堂騎士団第一団長ジークフリード。
聖堂騎士団の中で最も強いと噂されるジークフリードは、乱戦の中暴れ回っていたシンナス達がれっせいになりはじめていらのをみて光司への援護を辞めて戦線の維持に出る。
勇者と魔王の戦いは拮抗状態。
僅かでも隙を作ろうとジークフリードや第五団長のエルドリーシス等も大魔王アザトースニ立ち向かうものの、これと言って大きな隙を作れた訳でもない。
明らかな実力差。
正直な話、ジークフリード達が居なくとも光司は大魔王を抑え込めていただろう。
それほどまでに、ジークフリードを含む神聖皇国軍は蚊帳の外であった。
「アイリスさん達は1度引いて休息を。ここから先は持久戦です」
「........時間が経てば経つほど私達は不利になるぞ」
「分かっていますが、持久戦以外に選択肢がないのは分かっているでしょう?最初の数時間の間で大魔王を討伐できなかった時点で、僕達は不利になっているのですよ。ここからは、気合と根性の勝負です。何らかの変数が訪れるまで、私達は戦わなけれなりません」
ジークフリードはそう言いつつ、迫り来るニャルラトホテプの大軍を1人で抑え込む。
“何らかの変数”。
ジークフリードもアイリスも、その変数となりうる男の顔を思い浮かべて小さく笑った。
こんなにも大事な戦いで彼らが現れないはずが無い。
敵は大魔王だけではなく、その他にも多くおり、今はその相手をしているのだろうと。
そして、彼が負けるはずもない。
人類最強所か、世界最強とも言える化け物じみたその人間が死ぬ姿を、誰一人として想像できないのだ。
「ハハッ、アイツが来るまで耐える勝負か。まだ勝ち目があるように思えるな」
「えぇ。しかも、彼には厄災級魔物が付いています。私はその目でハッキリと見ましたよ。“流星”リンドブルムが国を滅ぼすその姿を」
「それ、援軍に来てくれたとしても被害が半端ない事になりそうだな........」
「ハハハ!!それは僕も思いますよ」
ジークフリードはそう言いつつも、聖堂騎士団第一を率いて分身体達を抑え込む。
誰もが必死に戦っている中で、呑気に会話していたジークフリードが1番敵にダメージを与えているその姿は、間違いなく神聖皇国最強を名乗るに相応しいだろう。
それでも、圧倒的な耐久力を誇る大魔王アザトースの分身体を倒すには至らないが。
「アイリスさん達は休息を挟みつつ、光司さんの援護を。正直、ロムス以外役に立ってませんがね」
「分かった。死ぬんじゃないぞ」
アイリスはそう言うと、遊撃部隊の全員に軽い休息と勇者への援護を命令する。
(頼むから早く来てくれよ........)
世界最強が今どこで何をしているのか。アイリスはその事を考えながら、少しの間疲れを癒すのだった。
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大魔王アザトースと対峙する勇者光司。
女神イージスが直接作った異能の力を引き出し、その力を使って戦う彼は今までにない程の集中力を見せて人外じみた動きをしていた。
「やはり、その力は厄介だな」
「さっさと殺られて欲しいんだけどね」
「それはお断りしよう」
しかし、どれだけ人の域を超えた動きをしようとも、大魔王アザトースにその剣が届くことは無い。
雨のように降り注ぐ様々な魔法を避けつつアザトースに接近するものの、無数にある触手が邪魔をする。
その体に剣を差し込もうとしても、一撃を与える前に触手がゆく手を阻むのだ。
「まだ昔のような感覚が思い出せんな。昔ならこの程度の相手、欠伸が終わる前に殺せたというのに」
「過去の栄光に縋り付くのは老人の悪い癖だよ。現実を見たらどうだい?」
「口だけは先代よりも達者だな」
アザトースはそう言いつつも、自分の体が思っていた以上に上手く動かない事に頭を悩ませる。
過去の栄光に縋る訳では無いが、明らかに昔よりも動きが鈍い。
力は全盛期まで取り戻していると言うのに、長年の封印と怠惰な生活によって戦いの感覚を忘れてしまっていたのだ。
でなければ、今ごろ目の前でうろちょろとハエのように飛び回る勇者を叩き落として殺している。
光司は確かに強いが、2500年前の戦乱の世を生き抜いた初代勇者に比べれば圧倒的に経験も力も足りていないのだから。
「喰らえ!!」
ミスリルすらも容易く切り裂く剣が、アザトースの脳天をかち割ろうと迫り来る。
アザトースはその動きに合わせて触手を振るい、勇者の一撃を止めると素早く反撃として闇の魔法を放った。
が、勇者はその魔法を異能による聖なる光によって防御。
またもや仕切り直しとなってしまう。
そして、何度も繰り返される攻防の中でアザトースは確信した。
この勇者、自分が大魔王アザトースを倒せないと判断した後直ぐさま持久戦に持ち込んでいると。
(なにか狙っているな。私の集中力が切れたその隙を狙っているのか?それとも、時間をかけることでこれ以上の威力を引き出す何かを持っているのか?)
アザトースは思考をめぐらせながら、先程から横でちまちま攻撃を仕掛けてくるエルフの男にも視線を向ける。
本を手に持ち、アザトースに大きな動きをさせないように動くロムス。
彼も勇者がアザトースを倒せないと判断したのか、とにかく時間を稼ぐ戦いをしていたのだ。
(不気味だ)
アザトースはモヤモヤとしながら、勇者達と戦う。
その体力を削る戦いは、なんとまる2日も続くのだった。
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