厄災戦争 呪縛解き放たれて人を越する2
花音の煽りを受けて始まった魔女との戦闘。
ニヴはありとあらゆる属性の魔法を使い、花音を殺さんとする。
「死ね!!」
「さっきから“死ね”とか“殺す”しか言ってないね。語彙力がないのかな?あぁ、頭が弱いからしょうがないか。口喧嘩に負けてすぐに手を出すような教養のなさだもんねぇ」
ニヴが放った雷を花音は漆黒の鎖で弾き返す。
相手の魂に干渉できるこの力は、魂から直接魔力を取りだして使う魔法には滅法強い。
異能の様に魔力を一度能力に変換してから使うのとは違い、魂との繋がりが強い魔法は花音にとってなんの障害にもならなかった。
「チッ........やはり能力の差で負けるか」
「ほらほらどうしたの?勢いがあるのは口だけ?三下の雑魚ですらもう少し口はマシなのに、それ以下とか救いようが無いね。辞めたら?生きるの」
「ほざけ!!クソアマが!!」
心の底から相手を見下し、ニヤニヤと笑みを浮かべる花音を見て更に青筋を立てるニヴ。
ニヴは確かに強いが、花音のように魔法を無力化してくる相手にはとにかく弱かった。
“
それがニヴの異能であり、ほかの異能とは少し違った特殊な力を持つ。
この異能はありとあらゆる魔法を使えるようになる異能であり、人類の母とも言えるニヴにとって相応しい能力だ。
しかし、この異能は魔法を使えるようにするだけであり、魔法を使う際の法則からは逃れられない。
魂から直接魔力を取りだして魔法を行使する為、花音の“魂の鎖”には弱いのだ。
相手が花音でなければ、ニヴはここまで一方的な戦いを強いられる事も無かっただろう。
「ほらほら、どうしたの?あれだけイキリ散らかして、この程度?人類の祖の妻のくせに、この程度とか笑い話にもならないね。そりゃ女神に追放されるわけだ。こんなにも弱い雑魚に世界は任せられないってね」
「貴様ァ........」
「さっきから同じことしか言わないし、学習能力もない。まだゴブリンの方が賢いんじゃない?あれ、なんだか見た目もゴブリン以下に見えてきた」
「楽に死ねると思うなよ........四股を割いて腸をゴブリンに食わせてやる」
「アハハッ!!そういうのは私に一撃でも当ててから言うべきだよ。ほら、隙だらけ」
「ゴッ........!!」
花音は一瞬でニヴとの間合いを詰めると、鳩尾に右拳をねじ込む。
戦闘に慣れて居ないニヴが瞬きをした瞬間を狙って移動した為、ニヴから見れば瞬間移動したかのように見えたのだ。
「うーん弱い。その地位に甘んじてあまり戦闘経験が無さそうだねぇ。毎日とは言わずとも、ちゃんと誰かと組手とかしてた?弱すぎて話にならないよ?」
「ゴホッゴホッ........お前達の様な野蛮人とは違うからな。真なる高貴な者は鍛えることなど無い」
「うわっ、救いようのない雑魚じゃん。自分のことを“高貴な者”って名乗るとか、頭にウジでも湧いてるんじゃないの?見ているこっちの方が頭が痛いねぇ。精神科に行った方がいいんじゃない?」
「黙れ!!」
ニヴはそう叫ぶと、周囲に無造作に魔法を撒き散らす。
しかし、花音に対してはそのどれもが無駄であり、花音はケラケラ笑いながら鎖で魔法を掻き消した。
「んー、弱い。相性の差があるのは認めるけど、それを差し置いても弱すぎるね。自分よりも弱いやつしか相手してこなかったから、勘違いしちゃったのかな?ひとつ賢くなってよかったね。世界にはこんなにも強い人がいるんだよ?」
もちろん、ニヴは弱くない。
厄災級魔物相手に勝ち越せるだけの強さはあるし、厄災級魔物の中でも最上位の強さを持つ原初が相手でもそれなりには戦える。
しかし、真なる人外に生半可な強さは通じない。
相性が最悪ならば尚更だ。
「ほら、これも防いで」
「ゴッ」
「残念。防げないねぇ。これは?」
「ゴフッ!!」
「残念。これも防げない。それじゃ、これは?」
「ゴハッ........!!」
「これもまた防げない。ちゃんと防御してよ。これだと私が弱いものイジメしてるみたいじゃん」
口角を吊り上げながら、そういう花音。
徐々にその攻撃は激しさを増し、更には花音の両目が赤く染まる。
「第2段階解除。ここまで耐えられるって凄いねぇ。耐久力だけは褒められるかも」
「くっ........そが!!」
花音の異能である“魂の鎖”。
その効果は自分にも付与することが可能であり、自身の魂を次なる段階に持っていくことで花音は人ならざる存在になることが出来る。
その力は人外と呼ぶにふさわしく、瞳が赤く染った花音の動きは更に激しくなっていった。
「いつまで持つかな?ほらほらほら!!頑張って耐えれば、愛しの旦那様が助けてくれるかもしれないよ?まぁ、仁が負けるわけないんだけどさ........あれ?もしかしてもう終わってる?」
花音は仁のいる方向に探知を伸ばすが、そこには既に反応がない。
戦いが始まってから役2時間。既に仁の戦いは終わっていた。
「ゴッ、カッ、ブハッ!!」
「死ぬまで痛めつけてあげるから、楽しんでね?」
ボコボコに殴りつけ、ニヴの心をへし折る花音。
それから1時間後、ついにニヴの意識は消え、地面に倒れる。
「あ、終わっちゃった。もう少し痛めつけたかったなぁ。まぁいいや。バイバイ」
花音は倒れたニヴに興味を示すことなく、あっさりと首を跳ねて殺す。
既にボコボコに殴り飛ばして気分がスッキリしていたのか、態々再び目が覚めるまで待って痛めつけるなんてかとはしなかった。
「仁はもう終わったちゃったのかぁ.......運が悪かったね。あと2時間ぐらい遅く終わってくれれば........」
花音は小さくつぶやくと、ニヴの死体を念入りに破壊してから仁の気配がある場所に向かうのだった。
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