協力者
この世界を守るため、人類の祖アドムと敵対する事が決まった俺達は早速行動を開始した。
戦争をするにも先ずは相手の情報が無ければ始まらない。自分たちの戦力と相手の戦力の差や、相手の計画が分からなければ動くに動けない。
とは言え、子供達をフルに使って一度も話に出てこなかった相手だ。
正直、情報についてはあまり期待が持てなかった。
となると、俺達よりも情報を持っているであろうマルネスに話を聞いた方が早い。
全てを信じる訳には行かないが、貴重な情報源になってくれるだろう。
「今考えれば、俺達に選択肢はなかったな。ファフニールが居て、この世界に生きている時点で敵対は避けられない。大人しく静観もさせてくれなかっただろうよ」
「そうだねぇ。私達が何も知らず静観を決め込んだとしても、アドムとやらが表に出てきた時点で敵対は確定的だろうね。ファフちゃんは間違いなく動くだろうし、それを手伝わない程私達も恩知らずじゃない。それに、今まで関わってきた人が死ぬとなれば、私たちも動かざるを得ないよ。世話になった人や仲のいい人を見殺しに出来るほど、私達は非常じゃないんだから」
「マルネスもそれを分かった上で言ってたんだろうな。あのロリババァ、相変わらずやることがいけ好かないやつだ」
人類の祖と敵対が決まったということは、マルネスと手を組むということ。
俺達はマルネスに手を組むという胸を伝える為に、再び店を訪れていた。
今回もイスは連れてきていない。
と言うか、着いてこなかった。
着いてくるか?と聞いたら、“ちょっとやることがあるの!!”と言って、自分の世界に行ってしまったからな。
イスもファフニールとの話は聞いていたので、なにか準備を始めているのかもしれない。
まぁ、イスのことだから、全く別の可能性もあるのだが。
「大魔術師“マーリン”が高弟マルネス。あいつは何を知っていると思う?」
「少なくとも、人類の祖に関しては私達よりも知っているだろうね。子供たちですら察知できなかった存在を知っていて、それを監視する術すらある。下手をすれば女神よりも感じ能力が高いよ」
「聖女様に神託が下った可能性も考えて、子供達の報告を聞いたがそんなこともない。女神はこの動き見れてないのか?自分を殺そうとする相手が出てきたというのに」
「多分忙しいんじゃない?女神様もずっとこの星を監視する訳には行かないんでしょ。ファフニールの話からするに、外敵からこの星を守ってるみたいだし」
「神でもなく管理者でもない俺達には分からん話という訳か........着いたな」
花音と話していると、マルネスの店に着く。
ここを訪れたのは数時間前だが、その時と違ってこの店が頼もしく感じた。
これからマルネスと手を組むのだ。初めて会った時はただの変人だったが、今では頼もしい協力者になろうとしている。
人生何があるか分からんな。
俺はそう思いながら扉を開いた。
「いらっしゃ........お?随分と早いね。傭兵団内でのお話は終わったのかな?」
「見ての通りだ。我ら
「アハハハハ!!私と同じことを言うんだな。いいね。初めて会った時から面白いやつだとは思っていたけど、君は最高にイカしてるよ」
マルネスはそう言うと、俺に手を差し出す。
前回はその手を握らなかったが、今回は違う。
俺はマルネスと握手すると、ニッと笑って軽くその手に力を込めた。
「よろしく、マルネス」
「よろしく頼むよ世界最強。ぶっちゃけ戦力に関しては君達を宛にしているんだ。厄災級魔物とタメを張れるだけの戦力を期待しているよ」
「任せろ。だが、俺たちだけに全部背負わせたら殴るからな?」
「安心したまえ。私にも仲間はいる。数は少ないが、厄災級魔物と同等の実力を持った猛者たちだぞ」
それは頼もしい。
相手の戦力がどれほどかは分からないが、こっちの戦力が多いことに超したことはない。
大は小を兼ねるのだ。
「それじゃ、色々と話し合おう。水漏れについては安心してくれ。私の最高傑作の結界もあるし、何より奴らは動き始めた。今、私たちの話に聞き耳を立てれるほど暇じゃない」
「頼むよマルネス。俺達は情報を何一つ持ってないからな」
こうして、俺達は情報を交換し合う事とした。
先ずは、お互いの戦力がどれほどかを聞いた方が良さそうだな。
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ついに動き始めた女神への復讐者達は、順調に人間たちを虐殺して行った。
女神の目やそのほかの目もあるためまだ大胆には動かないが、それでも着実に女神の力を削ぎ落とすことには成功している。
とある小国の辺境にある小さな田舎村の人間達を殺し尽くした悪魔達からの報告を聞いたアドムは、機嫌よくワインを飲んでいた。
「順調だね。やはり女神はこちらの動きに気づいてない」
「管理者たちも気づいていませんね........まぁ、この時点で気づかれる様なヘマはしていませんし、何より奴らも暇じゃありませんから」
「いいねいいね。もっと仕事熱心でいてくれよ。僕達のようにサボりまくっていたら、今頃勘づかれていたかもしれないと思うと皮肉だけどね」
「追放楽園から出た時点ではかなり警戒されていたように思えますが、素早く姿を隠したお陰で私たちを見失い、さらに今までかなり静かにしていたので油断しきっています。大きな一撃を食らわせる時は今かもしれないですよ?」
「そう焦らないよニヴ。女神は所詮何も出来ないし、管理者共も気づいたとしてもすぐには動けない。動けるとすれば、バックアップ用の管理者モドキ達だけだけど、あの二体が直ぐに動くわけが無いよ」
アドムはそう言うと、大きく欠伸をして思い出したかのように魔王の分身に話しかける。
彼らの目的には、できる限り戦力があった方がいい。
その中でも最も女神を殺せる可能性を持つ異能を持った人間を、仲間に引き込まなくてはならないのだ。
とはいえ、無くてもなんとかなるとアドム達は思っているのだが。
「ニャル、そろそろ彼に会いたい。仲介を頼めるかい?」
「........大丈夫なのか?ファーストコンタクトは失敗しただろう?」
「問題ないさ。あの時は意識を失っていたというのもあるし、君の力も弱かった。夢の中で何がするのは無理だろうが、話す程度なら問題ないと思うよ」
「分かった。やってみよう」
ニャルラトホテプはそう言うと、最近妙に距離の近い人形と仲良くご飯を食べる。
その様子を見ながら、アドムは小さく呟いた。
「ザ・セカンドコンタクトってね」
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