三番隊VS仁
バラガスを再び倒した後、俺達は
花音やイス、ロナとリーシャも参加し、腕に自信のある奴らを叩きのめしていく。
最初こそ、その見た目から手加減されていたが、徐々にその強さが明らかになっていくと赤腕の盾の連中は本気を出すようになっていた。
それでも、厄災級魔物に鍛えられた俺達には手も足も出ない。
初めて会った時の敵意マシマシの視線はどこへやら。何時しかその視線は尊敬の眼差しに変わっていた。
「君の魔法の腕は悪くない。でも、正面から魔法を放つだけじゃ勝てないよ。もっと工夫して、戦闘中であろうともアタマをフル回転させるんだ。相手の嫌がる事を常に考えて実行出来る実力がみにつけば、君はもっと強くなれるよ」
「なるほど。参考になります。ありがとうございました!!」
自分よりも一回り小さい白色の獣人に頭を下げる大男や
「んー、ちょっと小賢しい戦い方が多いように思えます。それが悪いとは言いませんが、そればかりだと逆に読まれてしまうので、時には小細工一切無しの真っ直ぐな攻撃もした方がいいです。ですが、最後の攻撃は良かったと思います」
「分かりました!!ありがとうございます!!」
どこか弱々しく見える九尾の少女にお礼を言う青年。
「身体強化が甘いの。魔力量は多いんだから、もっと魔力を効率的に使えるようになれば、その分他の事に魔力を回せるの。魔力操作の練習をもっと頑張るの」
「魔力操作........一体どのようにすればいいのでしょうか?」
「まずは、全身を滑らかに魔力が覆えるようにするの。こればかりは積み重ねなの。毎日欠かさずに魔力操作の練習なの。最初はすぐ結果に伴うなんてことはないけど、少しづつ上手くなっていくの。忍耐との勝負なの」
「なるほど。今日からやってみます。ありがとうございました」
2桁に行くか行かないかの少女に教えられ、お礼を言うお姉さん。
「人間は脆いんだよ。特に、体の内部はびっくりするほど脆い。どれだけ魔力で全身を覆っていたとしても、内臓までは鍛えられない。だから、内側から破壊する攻撃はものすごく有効だよ」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。甲冑を着たとしても、衝撃を加えればダメージになるでしょ?表面を殴るんじゃなくて、内部を殴るの。やり方は教えてあげるから、後は練習あるのみだね」
「いいんですか?そう言う技術は秘匿されるべきでは........」
「いいのいいの。私達はその程度で殺れる程弱くないし」
「「「「「「ありがとうございます!!姐さん!!」」」」」」
いつも間にか纏めあげた荒くれ者共に、人を壊す術を教えているヤベー奴など。
首都から少し離れた平野で、和気藹々とそれでいて殺伐とした訓練が行われていた。
ってか、花音はいつの間に“姐さん”と呼ばれるようになったんだ?
まだ訓練始めて2時間ほどしかたってないんだけど?
花音の手腕に困惑しながら、俺も俺の仕事をしている。
「クソッ何度か戦ってるのは見たが、実際に戦うとなると強さが嫌という程わかるな!!」
「コレが
俺の目の前では、片手剣と盾を構えたアッガスとそれを守るように檻を出現させている“堅牢”が肩で息をしながらこちらを睨みつけていた。
俺は何故か隊長格達との模擬戦をやらされており、副団長、一番隊、二番隊、は既にボコしている。
そして、三番隊と戦っているのだが、アッガスがここまで強いとは驚きだった。
模擬戦を始めて15分。
俺が手加減しているのもあるが、未だに俺はアッガス達に有効打を入れられていなかった。
その気になれば“堅牢”が作っている檻を思いっきり破壊して、アッガスごと吹っ飛ばすことも用意だが、それをやるとここら辺の地形を変えかねない。
その為、色々と揺さぶりをかけながら戦いってるのだが、全方向をカバーする檻は厄介だった。
異能を使ってもいいのだが、
そして、一度崩れた天秤は元に戻ることは無い。
つまり、二度と“堅牢”は異能を使えなくなってしまう。
それをやるのは流石に躊躇われた。
これはあくまでも模擬戦。相手の異能を壊すのはやりすぎだ。
「参ったな。もう少し出力をあげなきゃその檻を破るのは厳しそうだが、これをやるとここら辺の地形を変えちまう。どーすっかな」
防衛に関しては最強と自負しているだけあって、その壁を崩すのは難しい。
俺に攻撃をしようと檻を解除した瞬間に“堅牢”を叩くか。
俺がそう考え始めたその時、
「........あ」
俺は気づいてしまった。
これ、地面からの攻撃は回避不可じゃね?と
檻はアッガス達を覆うように護っている。だが、地面に突き刺さっているようには見えない。
つまり、下からの攻撃は当たるんじゃね?
「そうと分かれば........ふん!!」
俺は地面を殴ると、砂煙を起こして自分を隠す。
更に、音でバレないように砂埃の中で異能を発動。
ドンドンと言う音を奏でると同時に、砂埃を何度も巻あがらせる。
それと同時に魔力を操作して手の先にスコップの様な形を創り出し、地面を全力で掘る。
コレが地球人なら、間違いなく成功しないやり方だが、ここは異世界。魔力とか言うチートの概念がなんとでもしてくれる。
魔力で創り出したスコップは、何の抵抗もなく地面を掘っていき、アッガスの気配がする真後ろへと到達。
更にそこから上へと掘り進め、俺はアッガスの真後ろに姿を現した。
アッガス達はまだ気づいていない。少し驚かせてやろう。
「ハローアッガス。後ろを取られた気分はどうだい?」
耳元でボソッと呟かれたその声に、アッガスは過剰に反応した。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
振り向きざまに剣を振るうが、そんな腰の入っていない剣が当たるわけが無い。
俺はヒョイっとその剣を躱すと、アッガスの腕を掴んで“堅牢”に放り投げる。
“堅牢”は自分の盾を破ること無く、中に侵入されたことに驚きが隠せず、反応に遅れてしまった。
「しまっ──────────」
ドサッ
アッガスと“堅牢”は、仲良く2人で倒れ込み、どこぞの腐が見れば大興奮待ったナシの体制になるのだった。
「まっ、こんなもんだな」
少しドヤる俺を睨みつけながら、アッガスは立ち上がる。
「どうやって俺の後ろに?」
「地面を掘った」
「........はぁ?」
何を言っているのか分からないと言った顔をするので、俺は掘ってきた地面を指さす。
そして、本当に穴を掘ってきたと分かったアッガスは天を仰いだ。
「確かにブラームド隊長の能力は地面にまで及ぶものじゃ無いが........思いついてもやるかね普通」
「あの檻ぐらいならぶっ壊せたけど、周りの地形を変えそうだったんでな。無理やりこじ開けるのは品がないし、何より力押しの勝ちはお互いためにならん。だから、こういう方法で侵入されるかもよって教えてあげたわけだ」
「穴を掘って侵入するのは力押しにはならないのか........」
「ならんだろ。もしかしたら、そう言う異能者がいるかもしれない。その対策を考えれて良かったんじゃないか?」
俺はちらりと“堅牢”を見る。
“堅牢”は少し自重気味に笑うと
「しっかり考えておかなければな」
そう言って2mある巨体を平野に投げ出すのだった。
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