相変わらず
ストリゴイ→ティール
スンダル→ラーグ
ドッペルゲンガー→オセル
OK?
━━━━━━━━━━━━━━━
人目を引きつつも、これと言って騒ぎは起こることなく、俺達は傭兵ギルドへとたどり着いた。
冒険者ギルドとは比べ物にならない程質素なその建物の扉を開くと、相も変わらず昼前から酒を煽るダメ人間共が俺たちを出迎える。
「お?ジンじゃねぇか!!ひさし........あれ?俺は、酔ってんのか?なんかめっちゃ人がいる気がするんだが........」
「気の所為じゃねぇよゼート。今日は
俺達がギルドに入ってきたのを見て、いつものように挨拶をしようとしたゼートは俺たちが3人以上いることに驚いて、自分が酔っ払っているのかを確認している。
まず、自分の目がおかしいのかを疑う辺り、かなり酒が入ってそうだな。
ちなみに、ゼートとは筋肉ムキムキのオッサンだ。
腕相撲大会を開いた時に、3番目ぐらいに挑んできた奴である。
もちろん、瞬殺されたね。
「半分?俺はてっきり、ジンとカノンとイスちゃんの三人しかいないなんちゃって傭兵団だと思ってたぜ」
「アホか。仮にも傭兵
もう半分近くは人外だし、なんならこの場にいる奴の半分近くは人外だけど。
ゼートは俺の後ろでキョロキョロとしている団員達を見ると、何やらウンウンと1人で勝手に納得してこの場にいる全員に聞こえるように叫ぶ。
「今日は同胞が増えるぞー!!宴だァ!!」
「「「「うぇーい!!」」」」
こちらを伺っていた他の傭兵達は、ゼートの宣言を聞いて勝手に盛り上がる。
予想はしていたが、予想通りすぎて驚きすらも浮かばないな。
「おい。騒ぐのは結構だが、ギルド登録した後は街を見て回るんだ。宴はその後だぞ?」
「分かってるさ!!とりあえず今日は全員オフって話だから、人を集めてくるぞー!!」
「話が噛み合ってないんだが?」
「アッガスさん呼んでこい!!あの人呼べば大抵なんとかなるから!!」
「話が噛み合ってないんだが??」
「大丈夫だぞジン!!俺達はアッガスさんを頼るんだ!!」
「おーい。会話する気ないならそう言ってくれ。酒で頭が狂ったのか?........いやそれは元からか」
相変わらず自由な連中である。
そして、なんか視線を感じたのでチラリと後ろを見れば、ストリゴイとスルダルは少しうずうずしながらこちらを見ていた。
もしかしなくても騒ぎたいのか?だとしたら傭兵の適正高いよ。
この街限定だけど。
とは言え、街の案内が先であり、それよりも前に傭兵登録しなければならない。
既に騒がしくなり始めたギルド内だが、俺はそんな愉快な連中をガン無視して受付のおばちゃんに話しかけた。
「傭兵登録できる?」
「相変わらず話題に事欠かん男だねぇ。もう呼んであるさ。すぐ来ると思うよ」
流石はおばちゃん。
伊達に仕事ができそうな雰囲気を纏っている訳では無いな。
俺はギルドマスターが来る間、おばちゃんと世間話をする。
「門番に聞いたんだが、最近はこの街の勢力図が動いているそうだな?」
「おかげさまでね。上手く行けば、この街の顔役は傭兵ギルドになるさね。衛兵はこっちだし、最近では教会も中立からこちらに寄っているって話も聞く。この街は街長の権力がさほど意味をなさないからできる芸当だねぇ」
ふむ。ゼブラムから聞いた話とほとんど同じだな。
やはり、この勝負で鍵を握るのは教会なのだろう。
そしてこの街の教会のトップはモヒカンにお熱........勝ったのでは?
「冒険者ギルドは何してるんだ?黙っているわけがないだろう?」
「そりゃ黙っているわけないさ。最近は傭兵ギルドへの嫌がらせも露骨になってきているし、何とかして権力者を取り込もうと躍起になっているとも聞くねぇ。なんでも、元老院の1人を味方につけようとしているんだとか」
「へぇ?元老院をねぇ........」
「まぁ、ここにいる連中の話と街の噂を色々と総合して話しているだけだから、全部が全部本当な訳じゃないさね。私としては、傭兵ギルドに勝ってもらいたいけど」
遠回しに“お前が問題の渦中にいるんだから、何とかしろや。つーか傭兵ギルドを勝たせろ”と言われている気もするが、ここはスルー一択である。
日本で磨き上げたスルー技術を舐めるなよ!!
「ふーん。冒険者ギルドも必死だな。そこまでしてこの街の顔役を務めたいのかねぇ」
「冒険者ギルドと言うよりは、あそこのギルドマスターが顔役になりたいのさ。自分は前線に立たないくせに、いかにも“自分がやりました”みたいな顔をしやがって........ギルドマスターじゃなきゃ今頃スラムの土に埋めてるぜ」
階段から降りてきたギルドマスターが、俺達の話に入ってくる。
余程冒険者ギルドのギルドマスターが嫌いなのか、その顔は苦虫を何匹も噛み潰したような顔をしていた。
「おいおい。仮にも国を守る傭兵ギルドのトップが言うセリフじゃねぇだろうに。そんなに嫌いなのか?」
「嫌いだね。かれこれ10年以上の付き合いになるが、奴ほど早く死んで欲しいと思いやつはこの世に居ないさ」
そこまで言うか。
これは相当な恨みを買っている。
まぁ、原因は知っているが、それを態々言うものでは無いと分かっているので、俺は少しだけアドバイスをする。
「スラム街を調べると面白いものが見れるかもな」
「あん?何を言って........」
「いや?ただの独り言さ」
俺がその気になれば、冒険者ギルドのギルドマスター如き一瞬で消せる。
物理的にも消せるし、社会的にも消せる。
が、あまり派手に色々とやると冒険者ギルドの主張する“他国の間者”と言う主張を助けてしまうことになる。
だから、知っていても知らないフリをするのだ。
ゼブラムから聞いた“記憶喪失事件”は初耳だったが。
「ギルドマスター、俺は、いや、俺達はこの街をこの国を気に入っている。どうしようも無くなったら、俺に言いな。何とかしてやるよ」
「ケッ、甘く見られたもんだぜ。魔物と喧嘩するしか能がない連中に俺達が遅れをとるわけがないだろう?手助けなんて........マジで困った時以外要らねぇよ」
「いや、そこはカッコつけて“要らねぇよ”って断言しようよ。凄く小物に見えるぞ」
「いや、ここで断言して、“え?あの時カッコつけて『要らねぇよ』とか言ってたのに、結局頼っちゃうんですかぁ?恥ずかちぃですねぇー!!”とか煽られるのはごめんこうむりたい」
「お前は俺をなんだと思ってんだ」
そんなことやらねぇよ。さすがに時と場合は弁えてるって。
逆に言えば、時と場合が許せばやるってことだが。
ギルドマスターは少しだけ顔を赤らめたあと、わざとらしく咳払いして俺の後ろで暇そうにしている団員たちを見る。
「アレが登録希望者か?」
「そうだ。全部で11人だ。大丈夫か?」
「問題ないさ。来る者拒まず去るもの追わずが傭兵なんでな」
そう言ってギルドマスターは、傭兵ギルドの裏庭へと歩き始める。
俺達もそれに着いていき、俺達の裏でどんちゃん騒ぎを始めようとしていた
これに合格出来れば、今日はパーティーだ。
街の案内が終われば、みんなでわちゃわちゃし始めるだろう。
........ところで、なんか人増えてね?もう集まってきたの?
俺は、傭兵たちのフットワークの軽さに驚くのだった。
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