お仕事
のんびりと空を飛んで拠点へと帰ると、アンスールやメデューサが出迎えてくれる。
「お帰りなさい。どうだった?」
「Yah!!おかえりでーす!!」
毎度の如く突撃してくるメデューサを躱しながら、俺はアンスールに話しかけた。
「ただいま。想定外の事ばかりで大変だったぞ。魔王は弱いし、そのせいで登場するタイミングが無くなっちゃうし」
「あーシルフォード達が“魔王瞬殺されてる。ざまぁw”とか言ってたわね。被害は少なかったんだって?」
「あぁ、何名か死者は出たものの、想定よりも被害が少ない。というか、想定以上に魔王が弱かった」
想像以上に想像以下ってこういう事をいうんだろうな。期待してたのに。
「そんなに弱かったの?話では私よりも強いって言ってたじゃない」
「アンスールの方が5倍は強いな。復活したてでベストコンディションでは無く、更に奴が傲慢だと加味してもアンスールやメデューサの方が強い。期待はずれだよホント」
5倍は言いすぎたかもしれないが、アンスールの五分の一の強さでも厄災級には十分足りている。
本当なら最上級魔物と同列に並べてやりたいぐらいだ。
「あ、団長帰ってきたんだ。おかえり」
アンスールと話していると、シルフォードが顔を出す。頭の上に精霊のサラが乗せて、何をしていたのやら。
「サラ!!」
イスは嬉しそうにサラに駆け寄ると、子供らしく土産話を話し始めた。
その光景を微笑ましく見ながら、シルフォードが話しかけてくる。
「どうだった?」
「結果は知ってるだろ?子供達辺りから情報が入っているはずだ」
「うん。でも団長達から話を聞きたい。文字だけじゃ分からない事もあるからね」
そう言ったシルフォードに、俺はイスと同じように土産話をする。
ちなみに、メデューサは放置された事に拗ねて、滅茶苦茶機嫌を取るのが大変だった。
とりあえず、突っ込んでくる癖を治そうね。
団員達へ帰ってきたことを知らせたた後、俺達は溜まりに溜まった報告書と向き合うことになった。
たった2週間近く拠点を開けていただけで、机の上が紙の束で埋まっている。
「........いつもより量が多くないか?2週間拠点を開けてたとは言え、いつもはこんなに山盛りにはならなかっただろ」
「魔王関連で報告するのが増えたんじゃない?早くやって片付けようよ。じゃないとここから更に増えてくよ?」
花音の場合は、早く俺に我儘を聞いてもらいたいのもあるとは思うが、確かにさっさと報告書を片付けていかないと次から次へと増えていだろう。
俺は溜息を吐きながら、1番上に置いてあった紙を手に取る。
これ、全部見るのに何日かかるのかなぁ。
「あぁ、聖女は平原に居たのか。通りで街にいない訳だ。聖女さんは肩透かし食らっただろうな」
「魔王が、想定よりも弱くて出番がなかったんだね.....なんと言うかずっと待ちぼうけ食らってる聖女ちゃんを想像すると、笑えてくるね」
魔王が来なくて平原で体育座りをして待つ聖女。確かに笑えてくる。
あの人、滅茶苦茶綺麗だから余計に悲壮感漂うよな。“まだですかねー”とか言いながら、鼻歌を歌ってそうだ。
「ジークフリードが途中から参加したのは、誘導が目的だったのか。聖女や騎士たちを移動させた後に、急いで戻ってきたらしいな」
「で、ここで仕留めれると判断したから逃がさないような戦い方に切り替えたわけだね」
「だろうな。本来は平原にまで誘導した後、聖女の結界で閉じ込める算段だった様だが、あまりにも魔王が弱すぎた」
聖女さんもある意味、魔王君の被害者という訳だ。今度、会えたら魔王の愚痴大会しような。
「馬鹿五人は教皇の護衛として上手く遠ざけたようだな。流石は教皇の爺さんだ。自尊心だけが高い馬鹿の扱い方が分かってる」
「戦争の火種を消されたら困るもんね。ついでに、戦えないクラスメイトの子たちも避難させているね。みんな元気にしてるのかなぁ?」
今回、顔を合わせたのは龍二と光司と黒百合さんの3人のみ。他のクラスメイト達は、教皇とか一緒に避難したか、聖女と一緒に魔王を迎え撃つことになっていた。
そして魔王が倒された後は、首都ではなく近くの都市で待機を命じられてたらしい。
恐らく、復興をする時にあまり勇者達に出しゃばれると冒険者達から反感を買うのだろう。
それに、復興作業は仕事になる。冒険者が安全に稼げる仕事としてかなり人気があった。
後は、単純に大聖堂がぶっ壊れて部屋が足りないもの原因だな。
「それにしても、他の国の動きが似たり寄ったりだな。大聖堂で魔王が復活した為か、首都に戦力を置いている国が多い。これで他の都市に復活したらどうしようもないぞ」
「まぁ、11大国以外の国だとどこに復活されようが被害は大きそうだけどね」
「それはしょうがない。なるべく早く俺達が居場所をつきとめて、助けに行くまで耐えて欲しいとしか言えないな」
中には国の最高戦力が
俺達が、なるべく早く駆けつけれる場所で復活して欲しいものだ。
「正教会国は剣聖を呼んだらしいな。人類最強とまで言われる化け物だ。復活場所も分かっているし、お手並み拝見できそうだな」
「あのデブが、あの紙をまだちゃんと持っていることが驚きだよ。よく捨てなかったね」
「豚には豚なりの勘が働くんだろ。野生の勘ってやつなんじゃないか?」
ほんとうはもう一度手紙を送ってやろうかと考えていたのだが、どうやらあの豚さんは最初に送った手紙をとって置いたいたらしい。
そのおかげで、早く剣聖を呼ぶことができたみたいだ。
「剣聖1人で大丈夫なのかな?暴食の魔王は弱かったけど、正教会国で復活する魔王の強さも同じとは限らないよ?」
「死にそうだったら手助けしてやるが、子供達の報告を見る限りかなりの猛者だぞ?」
剣聖はどうやら目が見えないらしく、その代わり他の五感が化け物のように鋭いらしい。
子供達が監視を始めて直ぐにその存在に気づいたため、かなり離れたところから遠目に監視するのが精一杯と言っていた。
影に隠れた子供達を察知できる時点で、その強さが伺える。
「そんなに強いんだ」
「実際の強さを見てないから何とも言えないが、噂では厄災級魔物も1人で討伐できるらしい」
「それは凄いね」
「厄災級魔物に関しては、強さがピンキリだからな。もしアンスール達のような上位の厄災級魔物を討伐できる強さを持ってたらヤバいぞ」
いづれ戦争で戦うことになる相手だ。出来れば、弱い方が助かる。
「魔王VS人類最強か。映画にありそうだね」
「ついでにダーク〇イも戦わせておけ」
「またしても戦いに巻き込まれるダーク〇イさん」
そんなくだらないやり取りをしながらも、俺達は山のような報告書を片付けていった。
ちなみに、全ての仕事が終わったのは4日後の深夜である。
つ、疲れた........
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