どうやって知らせようか
魔王の居場所を突き止めた。これは大きな進歩である。
魔王復活まで残り三ヶ月。まだまだ時間はあるのだ。対策は幾らでも練ることができる。
俺は、シルフォードの持ってきた報告書にもう一度目を通す。
神聖皇国の首都である大聖堂と、正教会国の近くにあるとある遺跡。この2つが魔王の封印場所であると書かれたその紙を、長椅子に置いて座りながら俺は考える。
正教会国はどうとでもなるとして、問題は神聖皇国。大聖堂の真下に魔王が封印されていることはまぁいいとして、復活した時にその大聖堂が吹き飛ばないかの心配をした方がいい。
「なぁ、あの大聖堂が吹っ飛んだらどうなる?」
「んー、どうもならないんじゃない?壊れて直す。それだけだと思うよ?」
「大聖堂を直すことで、戦争をしない線は?」
「多分ないと思うよ。昔、正教会国とドンパチやってた時に大聖堂がぶっ壊れたままだった事があったみたいだし」
大聖堂って国の象徴みたいなものだから、何がなんでも優先されると思っていたが、そうでも無いのか。
それなら、魔王が復活してきた時に大聖堂が壊れても問題ないかな。
魔王がどこに封印されているかは、教えるつもりだし。
正教会国には信じて貰えないかもしれないが、神聖皇国には龍二が居る。龍二に分かるように手紙を書けば、きっとなんとか説得してくれるだろう。
あそこの教皇は馬鹿じゃないしな。
正教会国は........まぁ、首都のど真ん中に現れる訳では無いのでなんとかなるだろ。知らんけど。
「神聖皇国の大聖堂なんて、一番最初に調べたのに、なんでその時は分からなかったんだ?」
「報告では悪魔の影に入っていたら、知らない間に着いていたって書いてあった。後、バレそうになって慌てて逃げてきたとも」
「バレそうになったのか?」
あのステルス最強の子供達、それも
その悪魔は、俺ですらかなり本気で探知しないと分からない彼らを感じ取ったのだ。
「バレそうになったって事は、バレてはないの?」
「恐らくバレてはいないと書いてある。ただ、視線を感じたから迷い込んだ魔物のフリをしてその場を立ち去ったらしい」
いい判断だ。なるべく不自然にならないように、それでいて素早くその場を離脱する。しっかり訓練されているな。
「その視線の主は誰だったか分かっているのか?」
俺の質問に、シルフォードバレそう首を横に振る。
「分かってない。そんな余裕はなかったと思う」
バレそうになっていたから、逃げる事に手一杯だったか。視線の主が分かっていれば、今後見られていたとしても対策が取れたかもしれないが、しょうがない。
今は、子供達を見つけることができる存在が魔王側にも居るということを知れただけで収穫だ。
「正教会国の方はどうやって分かったんだ?」
「こちらも、悪魔を発見して着いて行ったら見つけたらしい。こっちはバレてなかったみたいで、かなり詳しく調べることが出来た」
そう言ってシルフォードは、マジックポーチから紙の束を取り出す。
正直こんなにある紙の束全てに目を通すのは勘弁願いたいが、そうも言ってられない。
俺はシルフォードから紙の束を受け取ると、1枚1枚目を通していく。
そこには遺跡の通路やそこに存在する魔物の情報、他にも悪魔についての情報などなど、とてもでは無いがサラッと目を通すだけでいい情報ではなかった。
俺は一旦報告書から目を離す。これは後でじっくりと目を通そう。今急いで目を通しても、見落としが出るだけだ。
「こっちは視線を感じなかったのか」
「そうみたい。こちらも
最上級魔物である子供達を相手に、一切悟られること無く監視するのはほぼ不可能と言っていい。
大抵の魔物は感が鋭く、何となくで見られている事を察してしまうのだ。
俺も探すことはできても、バレないように見るのは無理である。
「こっちは悪魔の名前まで分かっているんだな。全部で5体か」
「知っているのはある?」
「アスモデウスってやつ以外はは確か本に書いてあったはずだ。番号まてまは覚えてないけど、名前に見覚えがある」
アスモデウス、エリゴス、フールフール、ラウム、グレモリー。この五体が子供達の発見した悪魔の名前だ。
アスモデウスを除き、この4体の名前は本に乗っていたはずだ。ちょっとうろ覚えだから、似た名前の奴がいたらどうしようもないが。
「ねぇ。子供達が持ってきた情報に、悪魔の事が書かれた本は無かったの?」
「.........あ、それらしいのをトリスが見ていた気がする。ちょっと聞いてくる」
そう言って、シルフォードは聖堂を出ていった。
「あー、盗み出せばいいのか。そっちの方が記憶を辿るよりも正確だな」
「仁はあまり記憶力良い方じゃないからねー。死ぬ気で覚えたことならともかく、チラッと見た程度じゃ当てにならないよ」
流石は、俺より俺のことを知っていると言うだけの事はある。毎日のように付きまとわれて、知らない間に盗撮されていることを除けば、可愛くて献身的ないい子だ。あ、後ブチ切れた時が怖すぎるのもなければ。
花音って切れた時のパターンが多くて困る。静かにキレる時、にっこりと笑う時、他にも普通に睨む時、ぱっと思いつくだけで4~5パターンある。
しかも、それがランダムで来るから俺は毎回ヒヤヒヤするのだ。
今思えば、馬鹿5人にキレた時にっこりで良かったな。シルフォードにキレてた時の様になってたら、今頃馬鹿5人はあの世に送られていたかもしれない。
「さて、悪魔の確認は後にして、どうやってこの魔王の居場所を伝えるのか考えないとな」
「普通に手紙でいいんじゃない?と言うか、それ以外ないでしょ」
「それは確定しているよ。問題はどうやったら信用してくれるかって事だ」
神聖皇国は問題ない。龍二がなんとでもしてくれるだろ。というか、しろ。
正教会国にはそういった知り合いが居ない。全く相手にされずに、何も対策されない可能性の方が高いのだ。
「サンタさんからのプレゼルトみたく、枕の横に手紙を置いておく?」
「いいなそれ。ついでに、腐った奴の首を並べておけばインパクト抜群だな」
流石にそこまでする気は無いが、正教会国のことを考えるとそちらの方がいいのではと思う。
軽く調べただけでも、ヴァンア王国の何倍もの不正が出てくるような国だ。権力者の犯罪は全て揉み消され、平民に生まれた時点で人生終了と言ったような世紀末状態。
同種族である人間ですら生きづらいこの国で、獣人や亜人はマトモに生きれるはずもなく、奴隷としてこき使われているものもいれば、スラム街で徒党を組むもの達もいる。
ほんの少しだけ良心の残っている貴族もいるが、ほんのごく1部だ。
「いいねそれ。でも、魔王復活の事を考えるよりも、犯人探しの方に意識が向いちゃいそうだよ」
「それもそうか。なら、毎日の様に手紙を送ってやるか?ついでに呪いのメッセージでもつけてやろう」
「それも犯人探しが始まりそうだよ........」
「それを言ったら、枕の横に知らない手紙が届い置いてある時点で犯人探しが始まるだろ」
「確かに」
こうして俺と花音は、シルフォード画面に帰ってくるまでの間にどうやって魔王の居場所を伝えるのか方法を考えるのだった。
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