自己紹介
花音がモフモフちゃんをモフモフしているのを見ながら、俺はイスに自己紹介するように促す。
イスは少し、花音を羨ましそうに見た後、自己紹介を始めた。
「イスなの。今は人の姿をしているけど、蒼黒氷竜ヘルが本当の姿なの。よろしくね」
蒼黒氷竜ヘルを知らない彼らは、内心首を傾げながらもイスの自己紹介に軽く頭を下げる。
明日になれば、蒼黒氷竜ヘルがどんなものかわかるだろう。腰を抜かさないようにしてくれよ?
「ベオーク、お前も自己紹介しておくか?」
『一応』
ベオークはそう言うと、イスの頭の上に立って注目を集めさせる。そして、地面に降りて文字を書き始めた。
話せないからな。こういった手段を取らないと多人数に話を伝えることが出来ないのは、数少ないベオークの欠点だ。
『
ただならぬ雰囲気を感じられるのは、センスがある証拠だ。自分より強いやつをしっかりと見分けられるだけで、生存率派ぐっと上がる。
「さて、俺たちの自己紹介は終わったな。拠点に戻ればまだまだ団員はいるんだが、その話はまた明日にしよう。次はお前たちの自己紹介をしてくれ。あ、名前は昔使っていたのがあるだろ?.......あるよね?」
俺が質問すると、全員が頷く。
良かった。これで“ありません”とか言われたらどうしようかと思った。
「それじゃ─────」
「モフモフちゃんからいってみよー」
俺が誰かを指定する前に、花音がモフモフちゃんを指名する。
まぁ、誰からでも良かったのでそれでいいか。
モフモフちゃん話を俺達と同じように立ち上がろうとするが、花音が尻尾をモフモフしている為、立ち上がることが出来ない。
モフモフちゃんは少し困った顔をした後、花音の方を向く。
「あの......副団長様」
「ん?」
「立てないのですが........」
「いいよいいよ。座ったままで。それよりモフモフしたいから」
「.........」
モフモフちゃんは俺に助けを求めるかのような視線を送るが、俺はただ黙って首を横に振るだけだった。
諦めてくれ。そして、今後こういう事ばかりだから慣れてくれ。
「えぇと、リーシャです。モデル白九尾の獣人で.......後は何をいえばいいですか?」
「んー、異能、もしくは魔法の属性。異能なら簡単な説明よろしくね」
「分かりました」
そう言って、どこからともなく取り出したのは1本のキセル。
モフモフちゃん、じゃなくて、リーシャも能力者なのか。今のところ能力者と分かっているのは、これで三人だな。
他に異能を使うと分かっているのは、イケメン君と、俺を睨んでいたおっさんの2人だ。
「私の異能は
リーシャがキセルを吸った後、フーと息を吐くと紫色の煙が辺りを覆い始める。
大丈夫なのか?これは。白色の煙ならまだしも紫色の煙は何と言うか、体に悪そうな気がする。
毒入りですって言われても、納得できそうな色をしているその煙は次第に形を変えていき、最終的にもう1人のリーシャを生み出した。
流石に色は変えることができないようだが、問題はそこではない。
気配がちゃんとあるのだ。この煙のリーシャには。
使い方によっては、かなり強いかもしれないな。
「ありがとう。煙は消せるか?」
「はい。問題有りません」
リーシャはそう言うと、キセルを握り潰す。すると、紫色の煙は嘘のように消え去った。
「ずいぶん面白そうな異能だったな」
「煙で遊べそうなの!!」
確かに、俺の世界にあった遊具とかも再現できそうだ。触れることが出来れば、の話だが。
「すごいよ仁!!尻尾が増えた!!モフモフが増えた!!」
俺が異能についての考察をしていると、リーシャの尻尾をモフモフしていた花音が騒ぎ始める。
尻尾が増えた?なんで?
リーシャ野宿後ろを見てみると、確かに尻尾が増えている。
異能を使う前は三本だったが、使った後は九本になっていた。
そして誰もいなくなった花音はその九本全ての尻尾で、全力モフモフをしている。
「なんで増えたんだ?」
「それが、私にも分からないんです。異能を使うと一定時間尻尾が増えるんですが、その理由はちょっと........」
これは要チェックだな。知らなかったことで、致命的なミスが起こることもある。知っておいた方が絶対にいい。
モデル九尾なのに、尻尾が三本なのは少し変だなと思っていたが、異能を使うと九本になるのか。
「時計回りに行こうか。次は君ね」
「は、はい」
次に指名したのは、リーシャの弟くんである。見た目が完全に女の子だが。
弟くんは立ち上がると、自己紹介を始めた。
「ろ、ロナです。モデル白山猫の獣人で、リーシャ姉さんとは義理の姉弟です。えっと、異能は
弟くん、もとい、ロナは両手を鉤爪のように立てて、手首をクイッと上へ持ち上げる。
すると、地面から手の形をした土の塊が出現し、ロナの手の動きに合わせて同じように動く。
へぇ、こちらもずいぶんと面白い異能だな。ロナが武術なんかを覚えれば、かなり化ける異能だと思う。
少し動かした後、ロナはパンと手を叩いて異能を解除する。土の塊は魂を失ったかのように崩れ去っていった。
「ど、どうでしょうか。ご主人様」
「中々面白い異能だな。後、ご主人様呼びはやめてくれ。なれないから」
こんな可愛い男の娘に“ご主人様”呼びされ続けたら、変な物に目覚めてしまいそうだ。
「も、申し訳ございません。団長様」
ラナーと同じ呼び方だが、まぁいいだろう。ご主人様呼びよりはマシだし。
ロナを座らせた後、その隣の睨みつけてきていたおっさんに自己紹介を促す。
おっさん呼びしているが、見た目はかなり若い。これで36歳とか驚きだ。
「ゼリスだ。モデルは白狼。異能は
そう言って、ぜリスは大盾を出現させた。
赤黒く染まった大盾は、俺の身長の1.5倍はある。重厚感たっぷりのその盾は、生半可な攻撃ならば容易く捌けることだろう。
1度でいいから、その盾を思いっきり殴ってみたい。凄い爽快感がありそうだ。
「ウンウン。よろしくねゼリス。んじゃ、次は......」
「私ですねー」
のほほんとした雰囲気で立ち上がったのは、ゼリスの奥さん。見た目通りの雰囲気と、優しげな声が特徴の人だ。
「私はプラン。モデルは白狐。異能は
具現化された弓は、綺麗な装飾が施されており、日本の弓道で使われる弓と言うよりはアーチェリーに近い見た目をしている。
プランは矢を1本具現化すると、無造作に打つ。
矢は木に突き刺さると、そのまま破裂して木をへし折ってしまった。
「こんな感じですー」
「ありがとう、プラン。はい、最後」
最後はイケメン君だ。
「エドストルです。モデルはゼリスさんと同じく白狼。異能は
お、最後は操作系の異能か。誰もいなかったから少し興味あるが、操作系って俺達は弾きそうなんだよな。
内包している魔力が多いと、自然と相手の干渉を弾いてしまう。
彼の異能は帰ってから確かめるとしよう。シルフォード辺りなら、無防備にしていれば抵抗できないはずだ。
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