白色の獣人達

 コンコンと扉をノックされた後、扉が開いてメイドが入ってくる。


  その後に続いて、商品である奴隷達も部屋に入ってきた。


 「この辺りが御要望に添える商品かと」

 「モフモフ!!」


  今にも飛び出しそうな花音を抑えながら、俺は連れてこられた白色の獣人達を見る。


  モフモフの獣人は一目瞭然だ。1番左で、三本の尻尾をゆらゆらと揺らしている人寄りのスタイルのいい女。その尻尾は、触らずともその感触が分かりそうなほどである。


 「あれか?」

 「シャ」


  念の為に子供達に確認すると、肯定が返ってくる。子供達が見つけたモフモフはこの子の事だな。


  とりあえず、三本の尻尾の子は買う事が決定した。花音が偉い食いつきをしているし、コレで買わなかったら花音が怒る。


  その隣に居るのは、男の獣人だ。こちらも人よりの獣人で、おそらく狼がモデルなのかな?鋭い目でこちらを睨みつけている。


  尻尾はある程度やわらかそうだが、モフモフと言った感じでは無いので、恐らく頭のいい枠でここにいるのだろう。


  なんかすっげぇ睨まれているんだけど、何かしたっけなぁ........


  その隣は、おっとりとした優しそうな女性である。首元にマフラーのようなものを巻いており、それ以外はほかの奴隷と同じ貫頭衣を着ている。


  尻尾はやわらかそうだが、最初の三本尻尾の子には敵わないな。


  この人は、隣で睨みつけてきている男の獣人とは真逆で、ずっとにこやかにコチラを見ている。ここまで対照的だと、ちょっと見てて面白い。


  この3人以外にも、10名ほどの奴隷がずらりと並ぶ。


  全員白色の為、少し目がチカチカする。


 「どうです?どれかお気に召す物はおりましたか?」

 「あー、とりあえず1番左の三本尻尾ある子は買いだ。幾らだ?」

 「金貨5枚と大銀貨8枚です」


  日本円にして580万程度ってところか。安いのか高いのか分からんな。


  問題なく払える値段なので、三本尻尾の子は確定。花音は1人いれば落ち着くと思うから、後は事務仕事ができて、最低限の自衛ができるやつを買うとするか。


  強さの簡単な見分け方は、魔力の多さにある。保有魔力が多ければ、それだけ強力な異能や魔法を使うことが出来るのだ。


  後はソイツのセンス次第だが、戦闘系の異能の場合はほぼ100%センスがあることになる。


  何故かって?異能はその人の才能を具現化したものだと言われている。つまり、戦闘系の異能を持っているということは、戦闘に関しての才能があると言う事だ。


  まぁ、戦闘系の異能って結構範囲曖昧なんだけどね。


  具現化系の異能ならば何となく分かるが、俺やイスのような特殊すぎる異能はどう判断していいか迷う。


 「残りはどうするかな」

 「あのモフモフは買ってね?」

 「分かってる。それ以外だ」


  とりあえず、魔力量の多い人から順に話を聞くとしよう........話って聞けるよね?


 「あー、質問とかしてもいいのか?」

 「構いません。気が済むまで質問してください。隷属の首輪のおかげで、嘘は吐けませんので」


  隷属の首輪って言うと、奴隷達全員の首に着いている黒い首輪の事か。1人マフラーのようなものを巻いている獣人の首輪は見えないが、ちゃんと首輪がされているのだろう。


  嘘が吐けないのは有難い。毎回神経尖らせて質問なんてしたくないしな。


  まずは買う事が決まっている、モフモフちゃんから話を聞いてみよう。


 「1番左のモフモフちゃん」

 「は、はい。私のことです......よね?」

 「そうそう。モフモフちゃん、名前は?」

 「ありません」


  おや、名前がない?どういう事だ?


  俺は支配人に顔を向けると、支配人は説明を始める。


 「ここにいる奴隷達を買う御方の中には、性玩具として買う者もおります。その時に、自分の母親をと同じ名前だったり、元婚約者の名前だったりすると萎えるでしょう?」


  なるほど、確かにそれは萎えるだろうな。


 「なるほど、とりあえずモフモフちゃんって呼ぶか。モフモフちゃん、家族は?」

 「います。義理ですが、弟が1人」

 「ん?親は?」

 「物心着いた時にはいませんでした。とある方に拾われて、そこで育ったので」


  捨てられたのか、それとも何かあって親が死んだのか。まぁ、これに関しては深く聞かなくていいかな。


 「その弟は?」

 「私と同じく、ここで奴隷になっています」


  俺は支配人に顔を向けると、支配人は頷いてメイドに指示を出す。コレで、弟も連れてきてくれるだろう。


  弟も、それなりにできそうなら買うとしよう。家族ほど、人の心を縛り付けやすいものは無い。


 「それじゃ、次は──────」


  こうして、俺は次々に質問をして行った。


  モフモフちゃんだけでなく、この場にいる全員にだ。


  その中で俺の目に止まったのは、3人。


  1人は俺を睨みつけていた男の獣人だ。歩き方からして、それなりに強そうだったが、どうやら昔はとある村の警備隊長をしていたそうだ。


  その村は、魔物に襲われて無くなってしまったが、この獣人とその妻は運良く逃げ切ったそうだ。


  ちなみに、その妻は隣にいるマフラーの人である。お前ら夫婦なんかい。


  異能は具現化系。大盾を具現化できるらしい。


  警備隊長ってことは書類関連も少しはやってそうだし、何より自分の身をしっかりと守ることができるだろう。


  この人は、買いだな。後、その妻も買っておこう。内包している魔力がかなり大きい。夫である彼と、一緒に警備兵として魔物を狩っていたこともあるそうなので、鍛えればそれなりにはなりそうだ。


  そして、3人目は青年だ。


  龍二並のイケメンさを持った、物腰の柔らかい青年である。


  どうやらこの青年は、かなり高度な教育を受けているらしく、とても頭がいいそうだ。少し話してみたが、確かに頭の良さは感じられた。


  運動能力も高そうなパーフェクトマンだったので、彼も買いである。


  家族はいないそうなので、それによる縛り付けができないが、頑張って信頼関係を作ろうと思う。


  そのほかの獣人達は、何と言うか話していてピンと来なかった。俺の勘なのでなんとも言えないが、仲良くなれない気がしたので買うのはやめておいた。


  それに、モフモフちゃんを除いた3人と比べると、どこか見劣りするしな。


  この3人に加えて、モフモフちゃんとその弟くんを買うつもりだったのだが........


 「弟.......?」

 「妹の間違いじゃなくて?」

 「どう見ても女の子なの」


  モフモフちゃんのは弟くんが、誰がどう見ても女の子にしか見えない。


  確かに、髪は短いし所々男らしい姿をしているが、全体的に見るとどう見ても女の子だ。


  しかも超絶に可愛い。尻尾を見るに、猫系の獣人なのだろう。猫耳と尻尾も相まって、とんでもない破壊力を持っている。


 「これがリアル男の娘........なんて破壊力だ」

 「すっごい可愛いね。よく今の今まで変態達に売られてなかったね」


  全くだ。世の中には色々な変態がいるのだ。そして、この弟くんはその変態達の標的になりやすい顔をしている。


 「支配人、この子は幾らだ?」

 「大金貨1枚と金貨6枚ですね」


  弟くんがぶっちぎりで高かった。

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