魔王捜索
会議という名のただの集まり
俺達が住んでいる宮殿は、広すぎる上に部屋が多すぎる。よって使われていない部屋が多くあるのだが、今日はその使われていない部屋の1つに集まっていた。
「どうしたの?団長。急に呼び出して」
三姉妹を代表して、シルフォードが口を開く。鬼ごっこ以降かなり仲良くなった(つもり)三姉妹だが、こういう三姉妹が集まって話す時は、以前と変わらず大抵シルフォードが代表して話す。
ただ前と違うのは、その横にいるラナーとトリスが俺達を警戒していない事だ。
一応団長である俺としては、嬉しい出来事である。誰だって円滑なコミュニケーションを望むのだ。
「昨日、お前達を追っていた悪魔達を倒したって言っただろ?」
「イスちゃんが倒してくれたって言ってたヤツ?」
「そうそう。あの後、悪魔達の痕跡もウロボロスに頼んで消してもらったし、消えた悪魔達を追って来ることはまず無くなった。要は、お前達の安全が確保されたって事だな」
あの悪魔達は、この三姉妹の痕跡を追ってここまで来たと言っていた。
悪魔達を消したことによって、ほかの悪魔達が捜索に乗り出す場合、間違いなくこの痕跡を辿ってくるだろう。
そうすれば、また悪魔達がこの場所に来てしまう。
というわけで、ウロボロスに頼んで痕跡をほぼ全て消してもらった。魔力の残滓や足跡など全てだ。
これを使えば逆探知ができるのではないかと思ったのだが、どうやら悪魔達も馬鹿ではないらしく、途中で痕跡が無くなっていたそうだ。
今は痕跡が無くなった場所を中心に、子供達を放って捜索させているが、期待はしていない。見つかったらいいな程度である。
「それに関しては、改めてお礼を言う。ありがとう団長」
「ありがとうございます。団長様」
「ありがと。団長」
三姉妹が立ち上がり、頭を下げて礼を言う。
昨日の食卓でも礼を言われたが、なんというか慣れるもんじゃないな。少し恥ずかしい。
「気にすんな。座ってくれ」
俺は、照れを頑張って隠しながら三姉妹を座らせる。花音が、少しニヤッとしながらこちらを見てきているが無視だ。
「お前達を
「分かってる。これまで以上にしっかりやる」
「是非ともしっかりやってください。お姉様。毎回ミスを直すのは私ですので」
よっぽどミスが多いのか、普段顔を崩さないラナーが少しイラッとしたら雰囲気を出している。
仮面が剥がれかけてますよ。
シルフォードも、妹の不穏な空気を感じ取って少し冷や汗を垂らしている。
話題を変えて、助け舟を出すとしよう。
「ま、まぁ、そんな訳で俺達も本格的に魔王探しをしようと思う。魔王復活まで後、8ヶ月と少し。できる限り封印された魔王たちを探し出して、各国に情報を流したい」
「情報を流すの?」
「あぁ。魂を七つに分けて封印された大魔王だが、復活パターンには二つあると俺は思っている」
「二つ?」
調べて何かわかったという訳では無いので、あくまで予想だ。ただ、どちらかはあっていると思う。
「1つは、全ての魔王が同時に復活するパターン。もうひとつは、バラバラに復活するパターンだ」
「ねぇ仁、ちょっと思ったんだけどさ」
俺が少し格好つけていると、花音が横槍を入れてくる。
「ん?どうした?」
「神聖皇国は七大魔王って言ってたけど、元は大魔王アザトースの魂を七つにわけて封印したものだよね?」
「そうだな。勇者ナハトによって、その魂は七つに分けられ封印されたって言ってたな」
「封印されたのは魂だけであって、身体は封印されてないの?」
「確か、身体は七つに分けられて魂と一緒に封印されたって書いてあったかな?如何せん、文献が少なすぎて正確な事は分からないけどな」
もし、文献が少ないのが悪魔達の仕業だったとしたら、いい迷惑だ。お陰でこちらは、必要な情報が全くない状態で対策を立てなければならない。
女神に、封印場所を聞くこととかできなかったのだろうか。封印が解ける時期が分かるなら、封印された場所も分かりそうなものだが........
俺がそんなことを考えていると、花音が自分の考えを言う。
「なら、全て同時に復活する可能性が高いんじゃない?同時に復活して、元の姿に戻るために移動する。その一緒に封印された肉体がどうなっているのかは知らないけど、大魔王からしたら早く合体して強い自分に戻りたいと思うな」
「なるほど、ゲームでも、微妙に強いボス七体よりもクソ強いボス一体の方が手強いしな.......つーか合体するのか?」
「するでしょ。元は一体なんだから」
もし、花音の考えの通りだとすると、余計に魔王の封印場所を知らなくてはならない。
俺達の最終目的は神聖皇国と正教会国の戦争であり、どちらにもなるべく被害が及ばないようにしたいのだ。
もし、同時に魔王が復活すると俺達だけでは対処出来ないし、神聖皇国にいる龍二達も全ての魔王を相手取る事ができるわけがない。
更に、封印場所が分からなければ、対処が後手に回ってしまう。
そうすれば、余計に被害は広がるのだ。
「........シルフォード達はどう思う?」
「副団長の意見に1票。魔王だって人間に負けたのだから、今度は更に警戒しているはず。バラバラに復活して、敵の戦力を集中させるような真似はしないと思う」
「お姉様と同じ意見です」
「んー私はバラバラかな?」
花音の意見に肯定的なシルフォードとラナーとは裏腹に、トリスは逆の意見を言う。
「なんでそう思う?」
「何となく?」
勘かよ。流石に根拠の無い意見を取り入れる訳には行かない。だけど、ラナー曰くトリスの勘はよく当たるらしい。
もしかしたら、バラバラに復活するかもな。
「ま、とりあえずは全ての魔王が同時に復活するという方向で対策を立てよう。この対策がしっかり建てれれば、バラバラに復活されても対処できるだろうしな」
「そうだね。その為にも先ずは、この世界の情報が必要になるよ?」
「特に11大国だな。何か悪魔絡みの事件が起きていれば、そこから探し出せるかもしれない。それに、都市のど真ん中とかに復活されるのは困るけど、辺境の何も無いような場所なら国への被害は少ないだろうからな」
1番優先するべきなのは、11大国の首都と大きな都市だ。もし、そこに魔王が眠っていたら復活した際の被害は大きくなる。
11大国の勢力バランス合体して崩れると、今後の戦争に影響があるかもしれない。なるべく今の状態を保ちたいのだ。
中小国には申し訳ないが、俺達は別に聖者では無い。自国に魔王が封印されていないことを祈っておいてくれ。
「どの国から行くの?」
「まずは、俺たちの拠点から1番近い大エルフ国から行こう。子供達もかなりの数になったし、この国全土に糸を張ることができるはずだ」
子供達は、既に何万体いるか分からない程増えている。天敵の居ない安全な環境で、安心して子作り出来るため増えに増えまくったのだ。
ある意味、生態系の破壊である。
更に、この子供達は訓練を積んで強くなっているので、そこら辺の上級魔物と同じような扱いをしてはいけない。
中には、最上級魔物と同じぐらいの強さをもつ者もいるのだ。と言うか、最上級魔物に進化しているやつもいる。
ベオークの
影を操ることが出来る厄介極まりない魔物だ。影があれば、その全てが武器となる。夜なんて彼らの独壇場だ。
「そう言えば、シルフォード達って大エルフ国に詳しかったりする?」
「んーとりあえず知ってる事を話そうか?」
「よろしく頼むよ」
こうして、本格的に魔王探しが始まった。
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