厄災達の宴
「それで?その卵はなんなの?もしかして、食べるつもり?」
あっという間に
「実はな———」
俺はここまでの経緯を説明する。と言っても、グリフォンから羽を貰った帰りに青い竜から卵貰って、
「へぇ?じゃぁこの卵は
「そうなるな」
俺たちに卵を渡してきた
火を噴くのではなく、氷のブレスを吐く。一瞬にして全てが凍りつき、氷の彫刻がその場に出来上がると言わている。
「ジン達が追われていたのは、
「
「勿論肉食よ?その卵はデザートだったんじゃないかしら」
「これがデザートになるのか........」
ダチョウの卵の3倍の大きさはあるであろうこの卵がデザート感覚とか、スケールが違いすぎるな。
「それで、その卵はどうするのかしら。食べるなら、私が調理してあげるわよ」
「食べた事有るの?」
「昔ちょっとね」
こんなくっそデカい卵から作られる目玉焼きとか食べてみたいが、そんな事のためにトラウマ卵運搬をした訳では無い。
俺は首を振リながらその提案を断った。
「いや、この卵は育てるよ。ドラゴンを育てるって楽しそうだろ?」
「いいねー。私、ドラゴンの背に乗って空を飛ぶのとか、憧れだったんだよなー」
「ロマンあるよな」
「あるある」
そんな訳で、この卵は食べることなく育てる事に決定した。俺に卵を託してきた、あの
ただ、1つ問題がある。
「孵化ってどうやってさせるんだ?」
「あっ...........」
『ワタシも知らない』
アンスールの方を期待しながら見ると、彼女はドヤ顔で(見えないけど)こういった。
「私も知らないわ。でも知ってる竜ならいるわよ」
おぉ!!流石アンスール。知り合いに竜が居るのか!!
「それに、タイミングがいいわね。今晩は宴の日よ」
「あぁ、この前言ってたヤツ?」
「そうよ。夕飯を食べたら行きましょう」
夕飯を食べた後、俺達はアンスールの後ろに乗っていた。
アンスールなら下半身は蜘蛛なので、馬のように乗ることができるのだ。アンスールについて行くよりも、こうして乗っていった方が早いと判断した為、乗らせてもらっている。
厄災級の魔物の上に乗っていると思うと、中々スリリングがある。が、
「〜♪」
乗られている当の本人を見ると機嫌が良さそうなので、全くこわくない。アンスールは優しいお母さんなのだ。
そして、アンスールは森の中を歩くのが速い。この森での暮らしが長いのか、蜘蛛としての歩き方を完全に熟知しており、一切の無駄なく歩いている。最早一種の芸術だ。
1時間と少しで、目的の場所には着く。
その場所は木が無く切り開かれており、広さは東京ドームよりも広い.........と思う。テレビでよく、東京ドーム何個分とか言われてもピンと来ないよね。
「あら、私が最初ね。少し待ちましょう」
「暇だし、大富豪でもやるか」
「賛成。今日は負けないよ?」
「安心しろ、今日も完膚なきまでに叩き潰してやる」
「あら、私も参加しようかしら」
『ワタシもやる。今日は負けない』
アンスールは俺たちを下ろし、その場に座り込む。俺達もその場に座り、マジックポーチからトランプを取り出した。
アンスールとベオークも参加して、大富豪大会が始まる。アンスールは人間の手があるが、ベオークは蜘蛛の手のままだ。しかし、器用に腕を使ってトランプを持つ。
「8切り、はい、上がり」
「うがァァァ!!また負けたぁ!!」
「本当にジンは強いわねぇ........特にトランプに関しては」
『ちょっと強すぎ。イカサマとかしてないのに』
ふはははは!!大富豪やババ抜きは、イカサマのやり方も含めてうちの婆さんに仕込まれたのだ!!当時小学二年生の孫に、ブラックジャックのカウンティングやポーカーのイカサマを教えるのはどうかと思うが。
そんな事をやっていると、森の奥から魔物の反応がある。
「あら、来たわね。コレで最後にしましょうか」
「アンスール、魔物が来てるのに呑気にトランプやってていいのか?」
「大丈夫よ。いつもの面子の1人だから」
最後も容赦なくボッコボコにして気持ちよく勝った俺は、トランプを仕舞い立ちあがる。
花音もベオークも悔しそうにしながら、立ち上がる。ふはははは、しばらくはその悔しがる顔をしているといい!!
森の奥から来ていた魔物が姿を現す。人間の女性のような上半身に、蛇の下半身。両目には布のようなもので隠しており、その髪は蛇の集まりで自由に動いている。
俺は思わず呟いた。
「蛇の女王、メデューサ.........」
「ジンは博識ね。そう、彼女はメデュ———ぶふ!!」
アンスールが説明している途中で、メデューサがこちらへ突っ込んできた。しかも、とんでもない速さで音もなく。
殺気や悪意が一切なかったため、俺もアンスールも反応が遅れてしまった。気づくと、アンスールはメデューサにハグをされていた。
「△△△△△△!!△△△△△△!!」
「分かった、分かったから離れなさい!!」
「△△△△?」
「どうもこうもないでしょ!!苦しいからさっさとどきなさい!!」
有り得ない速さで頬擦りされていたアンスールだが、何とかメデューサを離す。なんか、アンスールといいメデューサと言い、だいぶ文献に書いてあった事とは違うなぁ。
メデューサは厄災級魔物で、全ての蛇系統の魔物の母と言われる存在だ。アンスールと同じような存在で、蛇を生み出す事ができる。
最大の特徴はその目、見たものは全て等しく石に変えると言われており、かつてメデューサが暴れた国は石像の国になったと言われている。
目を布で覆っているのは恐らく、間違って石化させないための目隠しなのだろう。体長は5m程の巨体で、ほとんどは蛇の尻尾だ。
「紹介するわね。メデューサよ。西の洞窟に住んでいるわ」
「△△△△?△△△△△△△!!」
「あぁ、仁だ。よろしく」
握手をしようとすると、メデューサは俺の匂いを嗅いだ後ハグをしてくる。
「もが!!」
「△△△△△!!」
どうやら、俺の体質のせいでメデューサに好かれてしまったようだ。2つ柔らかい感触を顔に感じながら、俺は取り敢えず花音に助けを求める。
「あーメデューサさん?仁が苦しそうだから話してあげて?」
「△△?」
今度はスンスンと花音の匂いを嗅ぐと、そのまま花音に抱きつく。
どうやら花音も、メデューサのお眼鏡にかなったようだ。
「ちょ、むぐ!!」
「△△△△△△!!」
「ちょっとメデューサ、落ち着きなさい」
花音に抱きついたメデューサだが、ずくにアンスールに引き剥がされる。アンスールはメデューサに少し説教すると、メデューサは怒られた子供のようにシュンとして大人しくなった。
「なんかちょっと可愛いね」
「同感」
元気すぎるが、根暗よりは接しやすいのでいいだろう。。
メデューサとのやり取りが一段落した頃、またしても俺の探知に反応がある。しかも示し合わせたかのように、至る所から反応があるぞ。
少し経つと、その姿を見せ始めたがそのメンツがおかしすぎる。
「...........おいおいおい、ここは厄災級の見本市か?ここにいる奴らだけで、魔王倒せるだろこれ」
「みんなやばい雰囲気纏ってるんだけど、この島こんなにヤバいとは流石に思ってなかったかも.........」
俺も、花音も開いた口が塞がらない状態だ。
厄災級と言えば、生涯で一度も会うことは無いと言われるレベルの魔物である。その厄災級の魔物たちがこんなに集まっている光景は異常と言えた。
「凄いぞ、輪廻の輪ウロボロス。死毒ヨルムンガンド。強大な粉砕者ジャバウォック。原初の竜ファフニール。終焉を知る者ニーズヘッグ。流星リンドブルム。真祖スンダル・ボロン。同じく真祖ストリゴイ。神狼フェンリル。月狼マーナガルム。地獄の番犬ケルベロス。自己像幻視ドッペルゲンガー。蛇の女王メデューサ。蜘蛛の女王アラクネ。計14体の厄災級魔物がいるぞ」
「何その世紀末」
『ワタシも流石に、こんなに集まってるのは見たことない』
特にドラゴン関係が多い。ドラゴンが6体、吸血鬼が2体、狼が2体、犬が1体、特殊か1体、女王が2体。この全員に喧嘩を売った日には、コンマ数秒で塵と化しているだろう。
と言うか、改めて思うがけどこの島ヤバすぎでしょ。厄災級が14体もおり、この島の最弱と言われる魔物は全て上級。召喚されてから、戦闘訓練をしていたから何とか生きてこれたものの、初手からこの島にいたら間違いなく死んでたな........
「この島にいる強い魔物たちよ。どう?凄いでしょ」
アンスールが俺たちの反応を見て楽しそうに、微笑む。この反応を期待していたな?計画通りって雰囲気が出ている。
「凄いどころじゃない。この島のヤバさを改めて実感してたところだ。よく2ヶ月だけとは言えど、生きてきたものだと自分を今めっちゃ褒めてる」
「それは同感だね.......こんなに人外魔境に、よく2ヶ月間も生きてこれたものだよ。いやホント」
「みんなちゃんと話の分かる者たちだから、喧嘩を売らない限りは大丈夫よ。少し話してきたら?ほら、卵の事とか」
難易度高すぎませんかねぇ........アンスールの様に好意的な厄災級ならともかく、性格も何も知らない厄災級魔物に話しかけるのって中々勇気がいりそうだ。
そもそも言葉が分かんないだろ。
「どうする仁?」
「アンスールはメデューサと話してるし、取り敢えず挨拶回りはしよう。こういう時は諦めが肝心なんだ。食われたら諦めよう」
「嫌すぎる......」
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