とりあえず死ぬわ
昼飯を食べた後、俺達は魔物狩りに勤しんだ。今俺達に必要なのは、慣れる事。森の浅い所で、狩りを続ける事2時間。ゴブリン26匹、スライム18匹、リトルボア5匹の討伐に成功した。
この森は弱い魔物が多く住んでおり、ちょこっと歩くだけで割と魔物が見つかる。イノシシ狩りの様に、1匹も狩れ無いということは無かった。
ついでに、魔物の解体も教わった。ゴブリンは魔石。スライムは全身が、リトルボアは内臓を除いた全てが素材にになる。
魔石は、親指の第一関節程の大きさで、中には僅かな魔力を感じる。この程度の魔石でも、光を照らすだけの魔道具や種火を作る魔道具を動かすには十分らしく、ゴブリンの魔石1つで大体銅貨2~3枚程度になる。乾電池の様な扱いでいいのかな?
ゴブリンの魔石は心臓部にあるので、胸を切り裂いて取り出すのはちょっと抵抗があったが、6体も解体していればある程度は慣れる。光司や黒百合さんも始めこそ嫌そうな顔をしていたが、最後の方では無の顔だった。
スライムの粘液は、スライムが死ぬと不純物が混ざるため素早く瓶に詰める必要がある。俺はスライムを手のひらに載せた後、デコピンで殺し、そのまま瓶に詰めるという荒業でやった。スライム魔石はゴブリンと変わらない値段、粘液は質にもよるが大体大銅貨1〜2枚の間で取引される。俺の倒したスライムの粘液なら、大銅貨1枚と銅貨7.8枚程度だそうだ。
リトルボアはイノシシと変わらないので、慣れている俺と花音がさっさと解体した。唯一心臓部の魔石だけが違うだけで、後は今まで解体してきたイノシシだ。あまりの手際の良さに、アイリス団長や師匠が関心するレベルである。
リトルボアの肉は1kg銅貨4〜5枚で取引される。スライムの方が高いのは意外だ。しかも1匹だけでもこれなりの量の肉があるので、持ち運ぶ苦労を考えたら割に合わないのでは無いだろうか。
と思っていたが、流石は異世界。マジックポーチと呼ばれる、見た目よりもかなり多くのものを収納することが出来るポーチがある。実際に目の前にあった大量の肉が、ポーチの中に吸い込まれていく様はファンタジーとしか言い様がない。作品によって価値が変わるポーチだが、割と安いらしく、銀貨2枚と大銅貨5枚で買えるそうだ。内容量は大体3m四方の部屋程度。このポーチの中に生き物を入れることは出来ないが、それ以外はなんでも入れることができ、ポーチの中に入った物は重さを感じなくなり、更に時間も止まるそうだ。
アゼガエルと呼ばれるカエルの見た目をした魔物の胃袋を使っているらしく、この魔物の胃袋は空間制御、重力制御、時間停止の機能がついており、食い溜めが出来るそうだ。まるでラクダだな。
もちろん中に収納出来る量によって値段が変わる。10m四方の大きさがあるマジックポーチは、白金貨がいるらしい。1億もするのか......
魔力については何も感じなかった。魔物を倒す事で魔力を増やすことができると聞いていたが、ゴブリン達の保有魔力は小さく、更に俺達の魔力が多いので増えても違いが分からないそうだ。極端な例を挙げるなら、水の張った浴槽に一滴の水を垂らしたところで違いは分からないといったところか。
こうして、森への魔物狩りを無事終えることができた俺達は大聖堂に戻ってきていた。
「これから定期的にお前達には、魔物を狩って貰う。今回は低級の魔物だけを狩ったが、次からは中級の魔物も狩ることになるだろう。それまで力をつけておけ。最終的にお前達が倒すのは、厄災級よりも上の魔王達だ。躓いている暇はない。せめて死なないように強くなれ。いいな?」
アイリス団長の言葉に各々が頷く。今日の魔物狩りで得るものは多かった。森の歩き方、気配の消し方、気配の感じ方。これらをもっと磨いていけば、さらに強くなれるだろう。俺が追放される心配も無くなるはずだ。
...............と、思っていた時期が俺にもありました。いやぁ、まさかクラスメイトに追放どころか暗殺計画立てられてるとは思わないよ。ほら?仮にも同郷だぜ?嫌うのはともかく殺すとは思わないじゃん!!
事の発端は、魔物狩りから帰ってきたその夜。中々寝付けなかったので、少し外を散歩するかと思って部屋を出て廊下を歩いていた時だ。最後に部屋に入った奴がドアをしっかりと閉めてなかった為か、部屋の光が廊下に漏れていた。気になって部屋をこっそり除くとそこにいたのは、学校で1.2番を争う問題児達5人組だ。
俺を殺そうと企む、イカれた俺のクラスメイト達を紹介するぜ!!厨二病真っ盛りなクラスメイト屈指の黒歴史製造機!!
自分のことをカッコイイと思っている(顔は普通)ナルシスト!!
いかにも知的ですという雰囲気を醸し出しながら、実は学年最下位の馬鹿!!
頭の中が年中ピンク色の脳が下半身!!
自分が神に作られた、絶対唯一の存在だと本気で思っている割とマジめにヤバいやつ!!
うーん、キャラ濃すぎ。彼らは、学校で関わってはいけない男子の筆頭格達だ。もちろん俺も殆ど関わりはない。だって怖ぇもん。素で“頭が高いぞ愚民”とか言ってくる奴とは関わりたくねぇよ。何故か龍二は普通に話しているが........アイツは怖いもの無しか?
そんな彼らのヘイトをどうして買ったのかと言うと、どうやら俺が美人達とキャッキャウフフしているのが許せないそうだ。アホすぎて言葉が出ない。
しかも、俺を殺せばそのキャッキャウフフしていた美人達が、自分たちに流れてくると本気で思っているらしい。馬鹿も休み休み言えよ。
そして、その計画を聞く限りお粗末がすぎる。食事に毒を混ぜるとか、寝ている時を襲うとか。どうやってもバレるだろこれと言う作戦ばかりだ。殺したあとの死体処理とかを一切考えていない。ガバガバすぎませんかねぇ。
俺はとりあえずその場を後にし、龍二の部屋に行った。
「龍二、起きてるか?」
コンコンとノックするが、反応がない。寝ているようだが、今回は急用なので入らせてもらうとしよう。
部屋に入ると、ベットで寝ている龍二を叩き起す。
「起きろ龍二。緊張事態だ」
「..........はっ?!雪だるまの殺人鬼が襲ってくる!!」
「お前一体なんの夢を見ていたんだ..........」
しかもちょっと気になる内容なのが腹立つ。まだ寝ぼけている龍二に軽くビンタを入れ、目を覚まさせる。ついでに魔道具を起動し、部屋全体を明るくする。
「んあ........朝、では無いようなだな。どうしたんだ急に」
「いやそれがな」
〜少年説明中〜
「............というわけなんだよ」
「ごめん。寝ぼけてるからもう1回言ってくれ」
あまりにぶっ飛んだ内容だった為か、頭を抱えながらもう一度説明を求める。
「だから、俺が美人達とキャッキャウフフしてるのが許せない。そうだ!!殺せばいいんだ!!OK?」
「おーけーおーけーよく分かった。あの5人が馬鹿なのはよぉ〜く分かった、それで?どうするんだ?アイリスさん辺りにチクるのか?」
「それを考える為に来たんだよ。1人より、2人の方がアイディアは出やすいだろ?」
「三人寄れば文殊の知恵ってか」
「2人だけどな」
こうして、俺と馬鹿5人組の今後を決める話し合いが始まった。
「まずはお前がどうしたいかだぞ?仁。それで対応が変わってくる」
確かに、俺があの5人をどうしたいかで対応が変わってくるが、俺の中で答えは出ている。
「絶望の縁まで叩き落として殺す。アイツら花音に手を出そうとしていやがった」
「おぉぅ、それはまた命知らずだな。お前を怒らせる中で、一番やっちゃいけない事だぞそれは」
「俺よりも、花音がの方が怖ぇよ。俺を殺そうとしているって花音が知ったら、今すぐにでもあの5人を殺しに行くぞ」
「花音、お前の事大好きだもんな........」
花音も俺もお互いにお互いを好いているが、花音はちょっとその愛が重い。以前花音の家に遊びに行った時、アイツの部屋には盗撮した俺の写真が部屋中に貼られていた。もちろん俺はドン引きである。それでも花音の事が好きなのは、惚れた弱みと言うやつだろう。
そんな花音がこのことを知ったら、間違いなく暴走する。あれ?もしかして1番最初に考えないといけないのは、花音を止める方法なのでは?
「なぁ、まずやらないといけないのって、花音を止める方法を考えることじゃね?」
「奇遇だな仁。俺も今同じ事を思った........んだが、ちょっと手遅れかもしれないな。後ろ、見てみろ」
あぁ嫌な予感しかしないが、恐る恐る後ろを振り向くと笑顔でナイフを握る花音が立っていた。完全に殺る気満々だ。
「大丈夫だよ仁。私ちょっと行ってくるね」
「ちょぉぉぉぉぉとまて!!気持ちは嬉しいが落ち着け!!今アイツらを殺ったら、悪者はお前になるから!!」
急いで花音を取り押さえる。暗殺計画を立てているとしても、その証拠がなければ悪いのはこっちになってしまう。と言うか、暗殺計画立てただけで殺しても大丈夫なのか?この国は。
「大丈夫だよ仁。私ちょっと行ってくるね」
「あれ?会話してる?もしかしてドラ○エの村人みたいに同じ事しか話さないの?」
「大丈夫だよ仁。私ちょっと行ってくるね」
「大丈夫じゃない!!大丈夫じゃない!!とりあえずナイフ置こう。落ち着こう。おい、龍二!!お前も見てないで手伝え!!」
「仲良きことは美しきかな」
「それらしい事言って、誤魔化そうとしてんじゃねぇぞ!!さっさと手伝えこのボンクラァ!!」
騒ぐこと10分。ようやく落ち着きを取り戻した花音をベットに座らせ、俺と龍二は扉に塞がるようにして椅子に座る。また暴走されたらたまったもんじゃない。
「で?なんでここにいるの?」
「んーなんか仁がここに居そうだったから?」
エスパーかよ。
「そしたら、仁を殺すとか言う
「俺の事を考えてくれる気持ちは嬉しいが、今花音があの5人を殺すと悪いのは俺らになる。証拠もあるかどうか分からないしな」
「むぅ、なら黙って見てろって言うの?」
頬を膨らませながら、足をパタパタと揺らす花音。
「もちろん黙って見ているわけじゃない。そこで、いい作戦を思いついた」
「いい作戦?なんかあるのか?」
俺は、花音を抑えている時に思いついた。証拠がなければ俺達が悪者になる。ならば証拠を作ればいい。
俺は持ったいぶりながら、口を開く。
「とりあえず死ぬわ」
「「..............................は?」」
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