第8話 スタンピード
街中にサイレンが鳴り響く。人々は慌てふためいている。店は全て閉まり、固く戸締りを始めている。そして、冒険者と思われる人々と衛兵たちの姿が目立ち始めていた。オレは、冒険者と思われる人に話を聞いた。
「どうしたんですか? 何があったんですか?」
「魔物の森から魔物の大軍が来るらしいぞ。お前も早く非難したほうがいい。」
オレは詳しい状況が知りたかったので、冒険者ギルドの会合に参加した。ギルドマスターが全員の前で状況を説明していた。
「諸君。魔物の森でスタンピードが発生した。先頭の魔物が城壁に到着するまでに約1時間だ。数はおよそ1,000匹いる。中には、大型の魔物がいるので、S・A・B・Cランクの者は魔物の対応に当たる。それ以外の者は、街に残って住民の誘導及び怪我人の手当てだ。住民の命を守るために頑張るぞー!」
「おおー!」
それぞれが、持ち場に散って行った。オレは、念話でギンに話しかけた。
『ギン。今の話を聞いていただろ? この街は守れそうか?』
『無理だな。討伐に当たる冒険者が約50人。その数で1,000もの魔物を討伐できるはずがないだろう。』
『オレとギンが参戦したらどうだ?』
『わしやお前なら一人で片づけられるだろうな。』
『オレにはそんな力はないよ。』
『お前はまだ極大魔法を知らないからな。帝級魔法を使えば簡単さ。』
『帝級魔法? なんだそれは?』
『魔法には段階があってな。低級・中級・上級・帝級・神級とあるのさ。お前が使っているのは、ほとんど上級までだな。』
『ギン。オレに帝級魔法と神級魔法を教えてくれないか?』
『まぁ、この街のためだ。いいだろう。』
オレは、ギンから帝級魔法がどのようなものかを教えてもらった。要するに、威力や範囲が上級魔法とは異なる魔法だ。当然、使用する魔力量も大きく変わる。
オレは頭からフードをかぶり、ギンを肩に乗せ、城壁の上まで『転移』した。遠くに土煙が上がっている。
「ギン。本当に1,000匹か? どう見てもそれより多いだろう。」
「ああ、2,000匹近くいるだろうな。」
城門の外にはギルドマスターを中心に約50人の冒険者が待機している。魔物達が、500mのところまで近づいてきた。冒険者の中には、恐怖のあまり城門の中に逃げ込む者もいた。
さあ、やってみるか。帝級魔法ってやつを。想像力が大事なんだよな。
オレは、地球にいたときのお気に入りの映画を思い出した。手から爪を出したりするやつだ。オレは、嵐を引き起こすことを想像した。
「ストーム」
すると、突然空が黒い雲に覆われていく。地上では、暴風が吹き始め、ところどころで竜巻が発生している。さらに、オレは両手を天に向けた。
「サンダー」
すると、竜巻が魔物達を巻き上げていき、空からは無数の稲妻が地面に向かって落ちた。
「バキバキ、ズドドド―――――ン」
「ゴ―――――」
爆音と地響きがすごいことになっている。目の前は舞い上がった土埃で何も見えない。待機していた冒険者達も、突然の出来事に茫然自失だ。
「なんだ―――――? 何が起こってるんだ?」
「何も見えないぞ!」
土埃がおさまると、ほとんどの魔物が焼けて死んでいたが、魔物の残党が魔物の森に逃げ帰っていくのが見えた。
「ふ~。終わった~。」
「ツバサよ。練習もなしにいきなり帝級魔法を発動させるなど、お前はよほど規格外だの。」
「ギンのおかげだよ。」
「ならばステーキだな。」
「落ち着いたら一緒に食べような。」
オレは、ここから移動する姿を誰にも見られないように『虹の花』の自分の部屋に転移した。その日は、魔力を大量に消費したためそのまま布団でぐっすりと寝たしまった。
翌日、朝ご飯を食べに下に降りると、アオイさんとロゼッタさんが昨日の話で盛り上がっていた。
「でも、不思議よね~。魔物達が城門付近に来たら突然嵐が来たんでしょ?」
「おばさん。きっとこの街は神様に守られてるのよ。」
「それならいいけどね。」
「ああ、おはよう。ツバサさん。」
「おはようございます。ロゼッタさん、アオイちゃん。」
オレは朝食を食べて、フードはかぶらずに街に出た。やはり、街の人達も昨日の噂をしている。
「なんかよ。城門の上に人がいてよ。そいつがあの嵐を呼んだって話だぜ。」
「その話、誰から聞いたんだ?」
「知り合いの冒険者が見たって言ってたぜ。何でもフードをかぶっていたらしいぜ。」
「じゃぁ、何で名乗り出ないんだ? この街の英雄じゃねぇか? 報酬だって半端ねぇぞ。」
まずいな。誰かに見られてたのか~。この街もそろそろ潮時かな。そうだ!確か、魔物の森に幸運を呼ぶ『虹の花』があるんだっけ。この街を離れる前に探しに行ってみようかな?
オレはいまだに喧騒止まないこの街を出て、魔物の森に向かった。昨日の今日ということもあり、ほとんど魔物はいなかった。
「なあ、ギン。虹色に咲く花ってみたことあるか?」
「ツバサ! お前わしを誰だと思ってるのだ?神獣だぞ! 知ってるに決まっているだろう!」
「どこに咲いているか知ってるか?」
「それはわしにもわからん。あの花は100年に一度しか咲かんからな。ただ、甘い匂いがするから虫や動物が集まりやすいぞ。」
「なんかすぐに見つけられる魔法とかないのかな~?」
「魔法にばかり頼るな! 自分の足で探せ! 魔法にばかり頼っていると堕落するぞ!」
「はい。はい。」
「はい、は一回でよろしい。」
「はい。」
オレはギンを肩に乗せて森の奥へ奥へと入っていく。すると初めて見る魔物と何度も遭遇した。
「ギン。あれは?」
「あれはホーンボアだな。肉がやたらうまい魔物だ。それに角に価値があるぞ。」
オレはなるべく獲物に傷をつけないように光の中級魔法『ライトアロー』で仕留めていく。
「それにしてもこの空間収納はべんりだよなぁ。ギンに教えてもらって大正解だよ。収納している間は時間も経過しないから腐らないし、最高だね。」
「あとで、そいつの肉を食わせろよ。」
「わかったよ。」
「それにしてもこの森は魔物が多いな。昨日あれだけ倒したのに、入り口にはほとんどいなかった魔物が、奥に行けば行くほど多くなるよ。」
「当たり前だ。森の奥は魔素が濃いからな。」
「魔素ねぇ~。」
「なんだお前。魔素も知らないのか?」
「地球にはないし。あっ!」
オレはうっかりと口を滑らしてしまった。
「地球?」
「ごめん。なんでもない。聞かなかったことにして!」
「前々から思っていたが、お前この世界の人間ではないな? 前にも言ったがお前の匂いはどこかおかしい。」
オレは、話そうかどうか悩んだ。今までずっと秘密にしてきたことだ。でも、ギンは神獣だし、いつかはばれることだろうと思い、すべてを話すことにした。
「つまり、ツバサは渡来人と言うことだな。」
「渡来人?」
「そうだ。他の世界から渡ってきた者のことだ。」
「オレの他にもいるのか?」
「過去にはいたな。今はわからん。」
「過去にいたその人はどうなったか知ってるか?」
「いや、知らんな。この世界で死んだか、元の世界に戻ったかどっちかだろうがな。」
「オレは戻りたいんだ。」
「それで、ナデシノ聖教国にその夢の中の女性を探しに行くんだな?」
「ああ、そうだ。」
「なるほど、お前がアオイのプロポーズを断った理由が分かったぞ。」
「別にプロポーズされてないし。」
「似たようなもんだ。」
それから、オレとギンは話をしながらさらに森の奥へと進んだ。
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