第六十六話

 清三せいぞうは、叫んだ。

「ククク……。チカラガ、ツキノチカラガ、ミナギッテクル……。クラエ!」


 光壁こうへき


 すると清三の胴体、両腕、両脚の前面から無数の光の矢が発射はっしゃされた。それらは光のかべのようになって、誠兵衛せいべえおそいかかった。誠兵衛は光速こうそく軌跡きせきを放ったが全ての光の矢を消滅しょうめつさせることが出来ず、残りの多数の矢を全身に喰らった。


 すると清三は今度は、市之進いちのしんに放った。


 光壁!


 やはり清三の前面から無数の光の矢が発射され、市之進を襲った。市之進は再び音波おとはを放ったが、強力な光の矢を消滅させることが出来ずに全身に光の矢を喰らった。


 この事態じたいにまたも、ことみはおびえた。う、うそでしょ、こんなこと……。まさか全身から、光の矢が発射されるなんて……。


 しかし、ことみは勇気をしぼった。でも駄目だめ。ここで怯えて何も出来なかったら、それは四日前の自分と同じ。戦うのよ。そして今度こそ、せいちゃんを守って清三さんを救う!もし勝てなくても、一矢報いっしむくいてやる! 


 ことみは、左右の『いん』と『よう』を突き立てて叫んだ。

「喰らえ、相模二刀流奥義さがみにとうりゅうおうぎ!」


 右手の『陰』で清三の左脚を右から左へ斬り、左手の『陽』で清三の右脚を左から右へ斬った。ちょうど清三の両脚を、左右からはさむようにった。


 鋏斬はさみぎり!


 攻撃された清三は、ことみに攻撃を放った。


 光壁!


 すると清三の胴体、両腕から光の矢が発射された。しかし数が少なくて、壁のようにはならなかった。ことみは美玖みくとの稽古けいこを思い出して発射された光の矢を、突きを三十回放って消滅させた。


 そして叫んだ。

「ねえ! 光の矢って、攻撃を受けた部分からは発射されないんじゃないの?!」


 すると市之進は、それならばと攻撃した。音波を放ってから二回、きを放った。


 音波、くちばし!

 ぎゅいいいいん、ぎゅいいいいん!


 二つのするど衝撃波しょうげきはは、清三の両腕をつらぬ親指おやゆびほどの大きさの穴をあけた。


「グッ?!」と、よろめきながらも清三は今度は、市之進を攻撃した。


 光壁!


 すると今度は、清三の胴体から光の矢が発射されて市之進を襲った。しかし光の矢の数が少なかったので市之進は、音波で全ての光の矢を消滅させた。


 市之進も叫んだ。

「やっぱり、そうだ! 攻撃を受けた部分からは、光の矢は発射されない! 清三さんの攻撃力は、確実に落ちた。誠兵衛君、攻撃するなら今だ!」


 清三は胴体からしか光の矢が発射されないことにあせり、そしてすきが出来た。誠兵衛は『血啜ちすすり』をさやおさめ、体中を左にひねって『血啜り』を『光』に左から右へ放った。そして更に右から左上に『血啜り』を『光』に斬り上げた。


 光速の軌跡、つばめがえし!


 しかし『光』の刀身とうしんにはひび一つ入らなかった。

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