第六十七話  第五部 完結

 そして清三せいぞうは、誠兵衛せいべえを攻撃した。


 光壁こうへき


 技を放ってすきが出来た誠兵衛を、清三の胴体どうたいから発射された光の矢がおそった。光の矢を受けた誠兵衛は、立っているのがやっとだった。誠兵衛は、苦痛の表情でつぶやいた。

「ぐっ……。『ひかり』を真っ二つにれば、この戦いに勝てるのに、清三を救えるのに……」


 すると、ことみが声をかけた。

「せいちゃん! 今から、せいちゃんに陰陽術おんみょうじゅつをかけるから、それで戦って! 私の陰陽術はとおり雨が止むまでくらいの短い時間しかからないけど、それで戦って! そして、この戦いに勝って!」


 そして、ことみは『いん』と『よう』を頭上で交差こうささせて、呪文じゅもん詠唱えいしょうした。

なんじ、防御を捨てて攻撃に専念せんねんせよ!」


 神通力じんつうりき陰陽術、修羅しゅら


 すると誠兵衛の全身は、闘争本能とうそうほんのうつつまれた。

「な、何だこれは?……」


 その時誠兵衛に、『血啜ちすすり』からアナグマの意識いしきが流れ込んでいた。

『ふむ。あのニンゲン、面白い術を使う……。今のお前は、攻撃をすることしか考えられないようだ……。もちろん攻撃力は上がるだろうが、防御は出来ないようだ。この戦いに決着を着けるなら、今だ……』


 誠兵衛はこの戦いに決着を着け、清三を救うために『血啜り』を振るった。『光』の刀身とうしんの一部に、攻撃を集中させた。


 上から下。下から上。左から右。右から左。右上から左下。左上から右下へ合計六回、『血啜り』をるった。


 連続斬れんぞくぎり、阿修羅あしゅら


 すると連続攻撃を受けた『光』は、真っ二つにくだけた。誠兵衛、市之進いちのしん、そして、ことみが見守っていると清三の全身から光が消えた。


 そして清三は、告げた。もう私は、『光』にあやつられることは無いでしょう。みなさんの、おかげです。ありがとうございます。もう私は、妖刀ようとうは作りません。普通の刀だけを作って、静かに暮らしていきます、と。


   ●


 小屋に入っていく清三の背中を見ながら誠兵衛は、ことみに告げた。

「助かったぜ、ことみ。この戦い、お前がいなかったら勝てなかったぜ」


 市之進も、告げた。

見事みごとな戦いでしたよ、ことみさん」


 少しれた、ことみは月に向かってえた。

「よーし! 私は、もっと強くなるぞー! そして相模二刀流さがみにとうりゅうの強さを、日本中に広めるぞー!」



 第五部 完結

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