第三十六話

 だが重助しげすけは、言い放った。

「くくっ、重撃じゅうげきやぶられたか……。こんなことがあろうかと、やはり自分で稽古けいこをしていて正解だった! 喰らえ!」


 重助は、『じゅう』を地面に突きした。


 地揺じゆらし!


 すると重助とのぼるがいる、あたり一面いちめんれた。重助は『のう』ではなく、『地面じめん』を揺らした。『重』を握っている重助は揺れなかったが、登は体勢たいせいくずして地面に両手をついた。そして、おどろいた表情になった。

「ば、馬鹿ばかな?! 地面が揺れただと?!」


 するとこの時をのがさず、重助は飛びかかった。

「スキあり!」

 

 ざん


『重』は、登の右肩をった。


 登は、うめいた。

「くっ、体をはがねにする、ひまが無かった……」

「今だ! 喰らえ!」と重助は、『重』をるった。


 斬!


 はらい!


 き!


 重助の連撃れんげきを喰らい、登は背中から倒れた。そして戦意せんいが無くなった。


 重助は『重』で『玄武げんぶ』を真っ二つにすると、えた。

「見たか、四刀しとう二番刀にばんがたなの実力を! わしは、美玖みくさんの次に強いんだ! ごはははは!」


   ●


 美玖は、考えていた。平志郎へいしろうに放った、斬、薙ぎ払いが同じ技を繰り出されて、相殺そうさいされたからだ。突きは『白虎びゃっこ』の刀先で、向きをそらされた。ふむ、どうしたものか……。


 考えている美玖に平志郎が、にやけ顔で言い放った。

「ふふふ、どうした沖石おきいし美玖? 江戸で最強と言われた四刀の一番刀いちばんがたなのお前の実力は、こんなものではあるまい……。さあ、本気を出してみろ!」


 美玖は、無表情で答えた。

「良かろう、ならば見せてやろう! 『きわみ』の神通力じんつうりきを! 体に『ため』を作り『極み』を振るうと、衝撃波しょうげきはが出る。それが『極み』の神通力だ、喰らえ!」


 絶対死ぜったいし


 すると平志郎は、叫んだ。


 予見よけん


 そして平志郎も同様に、上段、中段、下段の左、真ん中、右に突きを繰り出し、九つの衝撃波を相殺した。


 美玖は考えた。斬、薙ぎ払い、はともかく絶対死まで相殺されるとは……。これが『白虎』の神通力なのか? ならば『白虎』の神通力をさぐるのが先か……。


 すると平志郎は、言い放った。お前は今、考えているな、『白虎』の神通力の正体を。ならば教えてやろう。『白虎』を握っていると相手が、これからどんな動きをするのかが、見える。だからお前と同じ攻撃をして、お前の技を相殺することが出来る。玄庵げんあん様は『白虎』を作る時に、トラのきばを混ぜたと言っておられた、と。


『白虎』は競争心きょうそうしんをあおるような、白い刀身とうしんをしていた。


 美玖は決めた。小さな衝撃波が駄目だめなら、大きな衝撃波はどうだ? 美玖は体を左にひねって『ため』を作り、『極み』を左から右へ振るった。

「喰らえ!」


 斬死ざんし


 またも平志郎は、叫んだ。


 予見!


 するとやはり平志郎は左から右へ、『白虎』を振るった。そして美玖と平志郎の間で、『白虎』が大きな衝撃波を相殺した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る