第三十一話
男は、再び刀を
それを
誠兵衛は、今まで人を殺めたことは無かった。そのため
誠兵衛は決心すると、刀を男の胸を目がけて
突き!
刀は男の胸を突き破り、
男は
「くっ、俺はどこまで駄目な男なんだ……。追いはぎも出来ないとは……」
そして誠兵衛が刀を抜くと、絶命した。誠兵衛には、
商人を無事に江戸まで送ると誠兵衛は一カ月間、山にこもった。二度と人を殺めなくても済むほど強くなるために。そこで毎日、得意の
稽古の結果、誠兵衛は連続して三回、居合術を放てるようになった。これは誠兵衛にとって、大きな武器になった。追いはぎが数人、現れても三人の
そして言い放つ。
「次は、殺めるつもりで斬る……」
今までは一人に居合術を喰らわせると、追いはぎは
しかし稽古の後からは、違った。何しろ一瞬で三人も、居合術で斬られるのである。斬られた追いはぎはもちろん、他の追いはぎも誠兵衛の強さに戦意を失って、
誠兵衛は満足した。これで、あの片腕の
だが、そのような男は二度と現れなかった。結局、誠兵衛が人を殺めたのは、あの片腕の浪人一人だけだった……。
●
俺の話を聞いた美玖さんは、優しい声で言った。
「そうか、そんなことがあったのか……」
俺は今、感じている
「ああ。それからは俺が決心した通り、誰も殺めていない。だが今回は少し自信が無い。
「そうだな。だがな、誠兵衛……」
「うん? 何?」
「うむ。お前は、お前の戦いをすればいいと思うぞ。私は人を殺めたことが無いから、お前の気持ちを理解できないところもある。
だが、お前が考え抜いて出した答えなら、きっとそれは正しいのだろう……」
「美玖さん……」
そして優しい表情で、美玖さんは告げた。
「それに心配するな。何のために
「ああ……」
「分かったら、もう寝なさい。明日は大仕事があるんだ。眠れなくても
俺は不安が少し
「あんがと、美玖さん! それじゃあ、おやすみー!」
「うむ、おやすみ」
●
決戦の朝がきた。朝食を済ませた俺たち四人が出発の準備をしていると、本郷の弟子がきた。
「『
『重』と『音』を脇に差した
「ふん、
「久しぶりだね。今日も、よろしくね、『音』……」
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