第三十話
半刻後(およそ一時間後)、俺は寝付けず、市之新の部屋を出て
すると美玖さんが、やってきて声をかけてきた。
「うん、どうした
「ああ、
「その話し方と
「ああ、夜になると俺の凶暴性が引き出され、筋力や速さが上昇する。それが『血啜り』の
「そうか……」
美玖さんは切れ長の目で俺を見つめると、
「明日のことが気になるのは分かるが、昔のこととは何だ? よかったら聞くぞ?」
「でもこれは、俺の問題だから……」
「そうかも知れんが、それで明日の戦いに
「そうか……」と
●
二年前。誠兵衛が、
その日も、ある商人の用心棒をしていた。江戸と
山道を二人で歩いていると突然、右から男が現れた。見ると灰色の着物を着て、右手に刀を持っていた。
男はギラギラとした目をしていたが、静かに告げた。
「
「ひいい!」と、おびえる商人の前に出て、誠兵衛は言い放った。
「僕の後ろに、
「た、頼みます!」と商人は誠兵衛の後ろで、おびえ続けた。
誠兵衛は、
「残念ながら、有り金を渡すわけにはいきません。これは後ろの方が、一生懸命に稼いだお金なので」
すると男は、言い放った。
「それがどうした?! 俺だって金がいるんだ! 俺には
そして誠兵衛に、刀を振り下ろした。
上段で受けた誠兵衛は、思った。この男の剣術は、おそらく
男は、語り出した。
「だから我が家の生活費は、妻が
だが俺は知っている。妻が遊郭から帰ってくると、いつも泣いているのを。それから食事の
何なんだ、俺は?! 俺は妻を、あんな風に泣かせるために夫婦になった訳ではない!」
男は、右腕だけの攻撃を続けた。
それを右で受けた誠兵衛は、思った。なるほど、それがこの男の気迫の理由か……。
取りあえず誠兵衛は、いつもの手段を使うことにした。今までも用心棒をしていた時、追いはぎに
実際、誠兵衛は強かった。
そして誠兵衛は、この男にも居合術を放った。誠兵衛の刀は、
男の腹部から血が、にじみでた。だが男は、ひるまなかった。
「こんなものがどうした? 俺には金が必要なんだ。有り金をよこせ!」
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