第二十二話
「喰らえ!」
俺は、中段の構えで全破を受けた。だがその
すると直蔵は、感心した表情になった。
「ほう……。岩をも、いや全ての物を断ち切る全破でも
直蔵は再び、居合術の構えを取った。
俺の
俺は『血啜り』を
直蔵はこれを見て、せせら笑った。
「何だ、その
全破!
だが、俺も
「おせえ、喰らえ!」
鞘から飛び出し、まばゆい光を放ちながら光の速さで
すると直蔵は、
「そ、そんな
光速の軌跡を放ち体力を失った俺は、息を切らしながら聞いた。
「お前の全破は確かに強力だ……。だが光の速さの居合術には、かなわなかったようだな……。さあ、教えてもらおうか? 『桃太郎』を含めた妖刀は誰が作った?」
すると『桃太郎』を斬られ、
「そ、それは……」と、俺の後ろに目をやった。しかし、その目は見開かれた。何かに
いつに間にか、直蔵の後ろにいた
「誰がこれらの妖刀を作ったのか、ここで言われると困りますねえ……」
徳右衛門が握っていた刀は、
俺は『血啜り』を中段に構えて、呟いた。
「お前、やはり……」
すると徳右衛門は、意外そうな表情で聞いた。
「おや、私の正体に気付いていたのですか? さすがは
俺は、冷静に答えた。
「『
「ほう……。何かきっかけでも、ありましたか?」
「ああ、お前が言ったことだ」
「私が何と?」
俺は、語り始めた。
「ああ、俺は『
「はい、そうでしたね。それで?」
「なのにお前は、はっきりと言った。『辻斬りがあと、三人もいるだなんて!』 と」
徳右衛門はそれでも、落ち着いていた。
「なるほど。これは私としたことが、口を
そして俺は、
「それで俺は考えた訳だ。辻斬りはあと三人いると。そしてお前もこの件に関わっていると。だいたい俺は、『
すると徳右衛門は、冷静な表情で聞いてきた。
「なぜですか?……」
俺は徳右衛門の顔を真っすぐ見ながら、説明した。俺はあの晩、誰かにつけられていると思ったから、『和魚』に入った。どんなに
すると徳右衛門は、感心した表情になった。
「ほほう、なるほど……」
「するとお前が声を掛けてきたって訳だ」
「なるほど……」
「しかも、お前は更に怪しかった」
怪しいと言われた徳右衛門は、
「何がですか?」
俺は更に、説明した。お前は俺をつけてきたはずなのに、俺と『
すると徳右衛門は、再び感心した表情になった。
「なるほど、さすがは誠兵衛殿! では
「もちろん、お前の正体を知るためだ。それと……」
俺は、ため息をついて続けた。
「それとお前が、おゆうのことを知っていたからだ……」
「はい? どういうことですか?」
俺は、その時のことを説明した。俺とお前が、おゆうの長屋に行った時に、お前がおゆうの名前を呼んだからだ。まだ二人を
すると徳右衛門は、
「素晴らしい! さすがは江戸で一番の
ですが残念です。あなたはこれから、この
俺は、深いため息をついた。
「やれやれ、
「どういうことですか?」
「妖刀『桃太郎』たちを
すると徳右衛門は、
だから私のことを知っているのは、『直蔵』だけ。ちんぴら侍の三人は、私のことは知らない。実際、『雉』を持っていた
俺は、
「ふん、やっぱり世も末だぜ……」
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