第七話
「なあ、市之進。話は変わるが、お前は今まで何をしていたんだ?」
「ああ、
「なるほど。俺も似たようなもんだな」
「すると君も剣術道場で、師範代を?」
「いや、俺は江戸の周辺をぶらついて、金はあるが腕力が無い奴の
「ふーん、なるほど……」
俺はゆっくりと立ち上がり、提案した。
「ふう、ようやく立てるようになったぜ。まだ本調子じゃねえけど。さ、市之進、『
すると市之進は、首を左右に振って
「いや、それは僕にやらせてくれないかい? 短い付き合いだったとはいえ、すっかり
「そうか……」
市之進は
市之進は、不思議そうな表情で
「あれ? 真っ二つにできない? 普通の刀ならできるのに。やっぱり、
だから俺は、提案してみた。
「ひょっとすると、同じ妖刀の『
俺が『血啜り』を振り下ろすと、『音』は真っ二つになった。
市之進は大きな木の下に穴を掘り、『音』を鞘ごと
●
妖刀は、つくも
しかしその能力は、妖刀の持ち手の体力や気力があって始めて
すると他の妖刀に、真っ二つに斬られることがある。また妖刀の持ち手の体力や気力に差がある場合も、同じである。
●
市之進は、
「これで良し!
「はあ~、相変わらず、
「ふっ。君だって『血啜り』と別れるときは、こうすると思うよ」
俺は『血啜り』を収めてある鞘を、ちらりと見た。
「そうかなあ……」
そして、とにかく
それから
俺は久しぶりの酒で、しかも仲が良かった市之進と飲めるから
「よしよし、飲め飲め市之進。
酒の肴を持ってきたおゆうは、市之進に聞いた。
「
「そうみたいだね。誠兵衛君と飲むのは初めてだけど」
「え? そうだったんですか?」
「うん。修行の道場破りをする前に、
「そうでしたか……」
その時、俺はすでにいびきをかいて寝ていた。
●
次の日の朝、朝食を食べ終わった後、僕は市之進さんに
僕は桝田屋について考えていることを、言ってみた。
そして僕は市之進さんに、桝田屋を調べたいので手伝ってほしいと頼んだ。
●
それから僕たちは、桝田屋の正面にある
「大きな店ですね」
「ああ、近年、流行り病の薬を買うためにお金を借りる人が増えて、相当、
「なるほど……」
すると市之進さんに、
「顔を
何ごとかと思ったが、顔を伏せて僕は聞いた。
「どうしたんですか? 市之進さん?」
「ちらっとだけ、店から出てきた男の顔を見るんだ!」
「はい、見ました!」
「あれが、ここの店主、桝田
「なるほど、あれが……」と僕は、
市之進さんは、聞いてきいた。
「さあ、どうする、誠兵衛君?」
僕は、答えた。このまま、桝田の後をつけると。そして市之進さんには桝田屋に何か変わった動きがないか、見張ってほしいと頼んだ。
そして僕は桝田の裏の顔を
しばらくすると、
すると今度は山へ入っていった。少しすると、数人の男たちが山に穴を
桝田屋の前の団子屋で合流した僕は、市之進さんに報告した。
市之進さんは、呟いた。
「うーん、借金のかたに女性は遊郭に、男性は力仕事をさせる現場に売る、と考えるのが
「はい、僕もそう思います」と僕は答えた。そして怒りが
すると、ちょうど時の
「ああ、もう、お昼か……。ちょっとお腹がすいたなあ……。どうする、誠兵衛君?」
「はい、僕もちょっとすきましたね……。まずは市之進さんに、ちょっと食べてきてもらいたいと思います。僕はここで桝田屋を見張ってるので。その後、食べ終えた市之進さんに見張ってもらい僕が、うどんでも食べてきたいと思います」
「なるほど、分かったよ。それじゃあ僕は、
「はい、良いと思います」
●
市之進さんは、四半刻(およそ三十分)で戻ってきた。桝田屋に何も動きが無かったことを伝えると、今度は僕が食べに行った。
僕もおよそ、四半刻で戻ってきた。やはり桝田屋に、動きは無かった。
それからは俺たちは、暮れ六つ(およそ午後七時)まで桝田屋を見張っていた。
今日はもう、桝田屋に動きは無いんじゃないかということで、おゆうが待つ長屋に戻った。
するとおゆうは、心配そうな顔で
「まあまあ、二人ともこんなに夜遅くまで、どこで何をしていたんですか? 夕飯のしたくなら、とっくに出来ているんですよ」
俺は
夕飯を食べる時、おゆうに
「とにかく二人とも、危険なことはしないでくださいね!」
「へーい!」
だが俺は、感じていた。『血啜り』の
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