第二話
女の子は少し
「あ、あの、お
俺は「気にするな」と、答えた。俺はこの『血啜り』に、
それから俺は、女の子をまじまじと見た。
すると女の子は突然、
「あ、そうだ! おとっつあん! おとっつあんは、無事かしら?!」
「ん? おとっつあんがどうした?」
「
「ほう……。なあ、ひょっとして長屋にも
「いえ、分かりません……」
「まあ、いい。夜は始まったばかりだ。もし外道がいたら、めっけもんだな。よし、俺も行くぜ!」
俺たちは小高い山から、長屋に向けて走り出した。
●
江戸の
「おゆうちゃん、大丈夫かい?! 平気かい?!」
おゆうは必死に、
「はい、私は大丈夫です。でも、おとっつあんは?!」
すると老けた女はうつむき、首を左右に振った。
「いやーー!」とおゆうは
俺は確認のために、静かに聞いた。
「どうだ?……」
おゆうは涙を流しながら、答えた。
「
「そうか……」と俺は、おゆうの父に手を合わせて目を閉じた。
そして、言ってみた。
「あまり、気を落とすなよ。見たところだいぶやせ細り、お
おゆうの母は体が弱く、おゆうを生んですぐに亡くなった。だからおゆうの父は仕事と家事の両方をしながら、おゆうを育てた。だがその無理が今になってたたったのだろう、最近、
なのでおゆうも働いてお金を稼いでいたのだが、薬の値段は高かった。それで仕方なくお金を貸している
おゆうから話を聞いた俺は、聞いてみた。
「で、そこに俺が通りがかったという訳か」
「はい、その通りです……」
俺は腕を組んで、
「値段が高い流行り病の薬と、金貸しの桝田屋か……」
「あの……、どうかなさいましたか?」
「ん? いや、なんでもない。とにかくさっきも言った通り、あまり気を落とすなよ。それじゃあな」
するとおゆうは、振り返って聞いてきた。
「待ってください、お侍様! どこへ行かれるんですか?!」
「どこって、そこらへんだよ。寝るところを探すんだよ。ま、俺は
おゆうは必死の表情で、
「それはいけません! 私を助けてくれたお侍様を、
「だろうな……。で、結局、
「はい、良かったら今夜は家で休まれませんか? お客様用の
俺は腕を組んで、
「うーむ、やるな嬢ちゃん。父親が死んだその夜に、会ったばかりの男を家に連れ込むとは」
おゆうは必死に、否定した。
「私はそんなつもりは、ありません! それに嬢ちゃんじゃなくて、私には
「ああ、そうか、すまねえな。じゃあ、あんたはいくつだい?」
「はい、十九歳です」
「なるほど。やっぱりあんたは立派な嬢ちゃんだ。俺は二十三だからな。ちなみに俺の名前は
おゆうは、
「なるほど、誠兵衛さんですか……。って、ええ?! 二十三歳?! 凶暴な表情をされていますけど、見た目は
童顔と言われて、俺は少しイラついた。
「何、言ってんだ! 見た目は関係無いだろ!
おゆうは店で売り子として働いて、父の薬を買って父の世話をしていた。だから結婚なんて、考えていなかった。
するとおゆうは、言い放った。
「っていうか、その発言は
俺は、俺の知らない言葉に疑問を持ちながらも答えた。
「うん? 何だそりゃ? まあ、いいや。とにかくここに
「はい、少しお待ちください。すぐにお客様用の布団を用意しますので」
そしておゆうは父の
●
翌朝。僕は台所らしきところから聞こえてくる、『とんとんとん』という音で
するとちょうどよく、おゆうがふすまを開けて顔を出した。
「あら、何か音がすると思ったら、やっぱり起きていたんですね。もう、布団を畳むのは言ってくれれば私がやりましたのに」
僕は、
おゆうは驚いた。
「え? ちょっと誠兵衛さん?
僕は思わず、
「うーん、二十三歳の僕に、童顔はちょっとひどいと思いますよ。結構、気にしているんですから。でもまあ、今はいいでしょう。おそらく朝食の準備をされているんですよね。僕も手伝いますよ」
おゆうは、
おゆうさんが作ったのは、ご飯と、大根の葉の
僕はおゆうさんに気を使わせないように、笑顔で答えた。
「いえいえ、
するとおゆうさんは、『ほっ』とした表情になった。
「そうですか、よかったあ」
僕は
「あ、そうそう。これは泊めて頂いたのと、朝食のお礼です」
するとおゆうさんは首を左右に振って、全力で
「まさか!
僕は、頭を下げた。昨夜おゆうさんを助けたことと、泊めてもらって朝食をいただいたのは話が別だからだ。それに、おゆうさんに十分な生活費があるようには見えなかったからだ。
僕が頭まで下げているんだから、頂かない方が逆に失礼かな、という表情でおゆうさんはお金を受け取ってくれた。
「それでは、お言葉に
●
朝食が終わり後片付けをした後おゆうさんは、お
一段落して、おゆうは呟いた。
「私、これからどうしようかしら……」
そして、ふと僕の方を見た。僕は『これも何かの
僕はおゆうさんの父親の葬儀も終わったので、玄関で帰り
「それでは、おゆうさん、お
するとおゆうは、聞いてきた。
「あの、どちらに行かれるんですか?」
「ちょっと気になることがあるので、調べたいんですが……。いや、その前にちょっと考えをまとめたいので、少し江戸の町をぶらぶらしたいと思います」
外に出かけて父親の死を
「それでは、私も連れて行ってください! 今日、仕事を休むことは葬儀の前に、店長さんに伝えてありますから!」
僕はおゆうさんの気持ちを
「はい、もちろん構いませんよ」
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