第6話

「ま、よくある噂だったよねぇ」



と、軽い口調で言う一穂に「そんなことはない」と、一括している。



「どうした幸生。そんなに真剣な顔して」



「充弘、お前今日部活か?」



「え? まぁそうだけど?」



昨日休みだったのだから、今日は練習があるようだ。



「少し遅らせるとか、できないか?」



「はぁ?」



充弘は幸生からの質問に眉を寄せている。



「放課後、噂が本物かどうか確認してみないか?」



「確認って、つまり肝試しってこと?」



一穂の言葉に幸生は頷いた。



あたしと一穂は目を見交わせた。



「それなら放課後より、真夜中に忍び込んだ方がずっと怖いだろ」



充弘が呆れながら言った。



あたしも同感だった。



今日は部活動もあって、生徒たちも沢山残っていることだろう。



そんな中で肝試しをしたって、さすがに怖くはない。



そう思った時だった。



スカートのポケットに入れていたスマホが震えた。



取り出して確認してみると、それは今目の前にいる一穂からのメッセージだった。



《一穂:肝試し、いいかも!》



《美知佳:どういうこと?》



《一穂:幸生と近づくチャンスってこと!》



そのメッセージにあたしはすぐにスマホ画面を隠した。



なるほど。



一穂は幸生と急接近したいのだ。



そのために肝試しとはうってつけだった。



怖くなくても、怖いふりをして近づけばいいのだから。



「肝試し、やってみてもいいかもね?」



あたしは一穂と目配せをして言った。



「まじかよ。今日の放課後?」



充弘はまだ渋い顔をしている。



「そうだよ。もしかしたら、昨日と同じことが起こるかもしれないじゃん」



それに、あたしも充弘と近づくチャンスになる。



できれば充弘にも参加してほしかった。



「あたしも賛成! 肝試し大好き!」



一穂はすでにノリノリだ。



しかし目は幸生のことしか見えていない。



「まじかよ……。わかった、だったら俺も参加する」



「充弘、部活は大丈夫なの?」



「少し遅れるくらいなんとかなるよ」



さすがに1人のけ者になるのは嫌なのだろう、充弘はそう言い、結局4人全員で肝試しをすることになったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る