第19話 超絶冒険者と宴の席

そして、その日のうちに、35匹のメタルウルフを倒し、クエストを無事に完了する事ができたのだった。


日が落ちてから町に着いた一同は、冒険者ギルドで換金と報告を終えると、そのまま酒場へ直行した。

さすがにDランク冒険者チームだけあって、メンタル面は大丈夫だったが、冒険者は毎日連続してクエストをこなす事はない。

万全を期す為に、一仕事ごとに十分な休養を取るのだ。


毎日仕事をする必要がある勤勉な冒険者は、Fランクでも能力の低い者だけと言える。


「おいおい、酒場で酒を作って飲むのはやめてくれよ!」

「うりゅしゃあぁい!こりぇは、しゅきゅはいりゃあにゃくて、きゅんれんなんしまゃから」


店主の文句に、既にできあがっているピッピが返す。


アキラの指導のもと、オチョコ程度の入れ物に、何度も酒を生成しては、アルコール濃度を上げていったが、途中から酔って魔力の集中が効かなくなっていた。


実際、ピッピ以外の者は、店の酒を飲んでいるコレは、クエスト完了の祝杯だ。


「いやぁ、アキラ君のお陰で、本当に助かったよ。どうだい?このままウチのチームに入らないか?」

「男女混合だと、色恋沙汰で揉めるって聞きますからね。仕事では辞めときますよ」

「じゃあ、プライベートでは?アキラ君は歳上はダメかな?ここの二階が宿屋になっていてね」


酔いつぶれて隠蔽魔法が使えなくなった冒険者に対する配慮で、かなりの部屋数があるらしい。


「ギアラ!あんた抜け駆けは無しだろう!」

「ありひなら、こんはんらけれもええよ(アチキなら今晩だけの関係でも良いよ)」


アキラは、ウイスキーに氷の玉を浮かべ、かざして見せる。


「ありがたい御誘いですが、酔っているので立つものも立たない状態ですから」

「「「「が~っ!失敗したぁ~」」」」


人間には、アルコールで血圧が下がる体質の者も居る。


酔った勢いで、寝取ろうと算段していた四人が、一斉に項垂れた。


「でも、アンタは何者なんだい?火属性だけじゃなく、氷。水と風の上級魔法に加えて、剣まで使えるなんて」

「外国の、少し変わった血筋なんですよ」


ウイスキーを飲むのに氷が無いと聞き、つい物足りなくて出した氷で更なるネタバレを起し、必死で誤魔化すが上手くはいかないのが現状だ。


「でもコレで、暫くは安泰だよ。本当にありがとう」


名指しのクエストは、二ヶ月に一回以上の場合、断る事ができるのだ。


「それにしても、要心していたのが馬鹿馬鹿しかったよな。魔力の強さも、慣れれば何て事はないし」

「そうそう。野郎のチームなのに、ビクビクしやがってなぁ」

「そんなに危ない匂いがしてましたか?」

「そりゃ、もう、魔族の襲来かってくらいにな」


ツマミを口に入れて話す彼女達に、恐れている様子は一切ない。

実は、そんな彼女達の祝杯を、遠くから観察していた者が、この酒場にも居たようだ。


「おおっ!氷が作れるのかい?」


あらぬ方からの声に、一同の視線が一斉に動く。


見ると、革鎧に身を包んだ筋肉隆々の女性が、テーブルを覗き込んでいた。

ボディービルダーの様な鍛え上げられた褐色の肉体だが、胸と腰は目立って大きい。


スリムなハーピー系のチーム【ヴァルキュリア】とは対照的なグラマラスな女冒険者だ。


「【キャッツアイ】のマイヤーか?宴の邪魔するなら、毛をムシルわよ」


リーアの脅しに、二三歩下がって、マイヤーは手を上げて見せた。


「姉御に喧嘩売る気は無いけどよ。奴は火属性が得意と聞いてスルーしていたんだ。が、氷が作れるなら、手を貸してくれないかと思ってな!」


どうやら氷が作れる冒険者は少ない様だ。


グラマラスな彼女を隠蔽看破して見ると、猫科の獣人の様だった。


『やっべ!巨乳に加えて、猫耳とモフモフだ!』


チーム【ヴァルキュリア】も羽毛が所々に有るが、毛並みの良い尻尾と巨乳にアキラの目が奪われる。


「アキラって言ったっけ?明日で良いんで、話を聞いてくれないかな?」

「良いですよ!」


二人の会話にリーアが割り込んでいく。


「いったい、何に氷を使うって言うんだい、マイヤー?」

「ああ、詳しい話は明日するんだが、オーガ肉を依頼されているんでね」

「「「「オーガ肉?」」」」


ヴァルキュリアの全員の声が揃った。


魔獣のオーガは、端的に言って牛の魔物だ。

その肉は、冒険者限定だが食用に用いられている。

オークが豚でオーガが牛と言えば、その肉の需要が理解できるだろうか。


共に二足歩行になって、棍棒程度は振り回すが、知能の無い獣には違いない。


魔力の無い人間に対して、牛や豚、猿が居る様に、魔族に対してのオーガやオーク、ゴブリンと言う立ち位置に、この世界ではなっている。


「確かに氷があれば肉の痛みを抑えされて、食べられる部分が増えるわね。久々に安いオーガ肉が食べられるって話か?」


血抜きをして運ぶにしても、移動中に生肉が痛むので、店頭に並ぶまでには半分近くは処分されていた。

当然、値段も高くなる。

それでも、人間の食べている牛や豚よりも安いので氷で冷やして運べば、更に安くなるのだ。


ラノベや漫画では、よく肉料理が出てくるが、保冷技術の無い世界では殆どが干し肉や、それを戻したものになる。


ほぼ全員が高等魔法を難なく使える世界でもない限り、食堂にステーキや骨付き肉が出る事は、常識ではあり得ない。

仮に、魔道具とかで可能なら、冒険者で魔法担当などと言う分担が崩壊する。


『世界をラノベ設定って、無理が有り過ぎだったんじゃないのかな?』

〔最初は、ほぼ、汝の知るラノベ通りに動き出したコノ世界ではあるが、長い年月の間に合理的に変化せざるをえなかったと言う事だ〕

『最適化って奴ですかね』


アキラの疑問に、世界の移り変わりを見てきたメタトロンが答える。


「じゃあ、アキラくん。明日、冒険者ギルドで」

「承知しました。また明日」


その後、夜半までチーム【ヴァルキュリア】の宴は続いた。




◆◆◆◆

チーム【ヴァルキュリア】

*リーア

*ギアラ

*シンディアナ

種族:ハーピー/ハーフ

 HP200:TP6

 MP70:MT5

総合レベル1,550


風魔法・隠蔽魔法・身体強化・強化魔法


*ピッピ

種族:ハーピー・リザードマン/クオーター

 HP100:TP2

 MP150:MT9

総合レベル1,550


風魔法・水魔法・隠蔽魔法・身体強化



同種の婚姻により、ハーフと呼んでいるが、数世代の遺伝により、同じハーフでも遺伝割合は様々。

この四人は、魔族側の特性が多く出ているので、Dランク冒険者にまで成れた。


◆◆◆◆


冒険者レベル概算

SSS勇者10,000

SS6,000~8,000

S4,000~6,000

A3,000~4,000

B2,000~3,000

C1,500~2,000

D1,000~1,500

E500~1,000

F1~500

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