第18話 超絶冒険者の戦術
そして、メタルウルフ狩りの日を迎えた。
「メタルウルフの縄張りは、この辺りの筈なんだけど・・・」
ハーピーの翼を広げて三人の女冒険者が空を行く。
町から距離があるので、アキラとピッピは馬での移動だ。
特に犬系の魔物は、縄張り意識が強いので、あまり移動をしない。
ただ、数が増えてくると縄張りを広げ、街道や人間の領域にまで広がるので、定期的な間引きが必要なのだ。
「ピッピさんは飛ばないんですか?」
「
ピッピは、かなり上機嫌だ。
だが、そもそも、こんな戦法はラノベの戦い方ではない。
剣と魔法と人海戦術、地の利を生かして戦う物で、電導性を用いたアースや酸化による燃焼を用いた戦いかたは使われない。
アキラは少し悩みながら、飛行隊の先導についていき、地上を歩いていった。
そのまま暫くすると、間隔を広げて飛んでいた三人が、集りだした様だ。
「誘き寄せに成功したみたいですね」
「そうやな」
人のサイズの物が、森の上空を飛んでいれば、相当に目立つ。
その場を縄張りにしているものならば、放置はできずに集まってくるのだ。
「地上から稲妻が走ってますね。メタルウルフの攻撃でしょうか?大丈夫なんですか?」
「あれだけの高度を取っていれば大丈夫や」
幾つもの雷が地上から延びるが、狙いが見えているだけに、当たる事はない。
ただ、彼女達も近付けないので風魔法の攻撃も当たらない。
アキラとピッピは、隠蔽魔法を使い、更に植物系アロマを振り掛けているので、森の中では見付けづらいのだ。
ピーッピーッピーッ
リーアが空中で三度口笛を吹いた。
「直径30メートルか!ほな、行くでぇ!スプラッシュ改!」
「オーバーライド」
スプラッシュと言う魔法は、消火活動に多用される魔法で、町でも頻繁に使われている。
魔石でパワーアップして酒と化したピッピの放水魔法に、アキラが上書きをして、アルコール濃度をウオッカ並みに上げていた。
放たれた水の流は、弧を描きながら、リーア達の足もと直径30メートルの範囲に、にわか雨の様に一瞬だけ降った。
だが、メタルウルフの全身を濡らすには十分だ。
一瞬の雨に、動揺したメタルウルフ達だが、再び上空の敵に敵意を剥いた。
しかし、その放電は身体から地面に流れ、空へと向かう事ができない。
更には、強烈なアルコール成分が、人間の数万倍とも言われる彼等の脳を麻痺させていく。
脚を震わせる者。
千鳥足でフラつく者。
しきりに頭を振る者。
「ファイアボール!」
木々の影から飛んできた炎に、一帯の植物と共に燃え上がり、悲鳴を上げる15匹のメタルウルフ。
「「「キャン!キャンキャン!」」」
もんどり打つが火は消えない。
ピッピを含む四人が四方から風魔法で火力を増していくと同時に、炎上範囲を調整していく。
「致命傷にはならないか・・・」
全身を焼けただれさせながらも、藻掻くメタルウルフに、リーアが漏らした。
「もう一手、足りませんでしたね」
アキラは、そう言って刀を抜き、炎の中に突入してメタルウルフを切り裂いていく。
火の魔法を使える者は、火に対しての防御もできるのだ。
「そうか!この状態なら!」
風魔法を継続しつつリーア達も、炎の領域から燃えながら逃げ出てくるメタルウルフを剣で仕留めていった。
既に狼特有の団体戦はできず、アルコールと炎で疲弊した者など、敵ではない。
「スプラッシュ!」
最後にピッピが、今度は水を放水して木々を鎮火させ、辺りを見回した。
リーアは再び飛び上がり、山火事の心配がないか確認をしている。
「火力が足りませんでしたが、どうにかなりましたね」
計画通りに上手くいくなど、まさに物語りの中にしかない。
今回の様に、力不足や落し穴が現実には常に存在する。
「でも、この方法なら、上から松明を投げて点火し、周囲から金属製の矢で射止めるのもできそうよ」
「あとは、
「あんたは飲ん兵衛だから、すぐに上達するわよね」
「上達する前に飲み潰れなきゅいいんだけどね」
「「「ははははは・・・・」」」
一応の成功に、笑みが溢れる。
「じゃあ、この方法で、もう一回戦、いきましょうか!」
魔石を回収しながら、アキラが声をかけた。
「えっ?成功したじゃない?」
「ええ。でも数が足りないんですよ。リーアさん」
「・・・・・・ち、ちょっと休もうよ」
そして、その日のうちに、35匹のメタルウルフを倒し、クエストを無事に完了する事ができたのだった。
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種族と属性設定
魔物
メタルウルフ狼/雷
デススパイダー蜘蛛/雷
デスピード百足/土
ゴブリン/風
オーク豚/水
オーガ牛/火
スライム/水
ワイバーン竜/火
ベヒモス象/土
ドライアド樹/風
魔族
リザードマン/水
ワーウルフ/雷
ヴァンパイア/水
デーモン/火
ドラゴン/火
エルフ/風
ロックマン/土
獣人/土
アラクネ/雷
ハーピー/風
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