第13話 超絶冒険者の居た場所

「確かに、Cランク以上には昇格はできないだろう。君の様に、これから成り上がろうとする者には理解できないかも知れないが、皆が頂点を目指している訳じゃ無いんだよ」


アキラは再度、首を傾げる。


スポーツでも仕事でも、更には趣味でも、誰しも最終的にはトップを目指すものだと、思っていた。


まだ学生で、アルバイト位しか仕事をしていないアキラも、幾つかの就活を行った時期だったので、軽く将来の事とかも考えていた。


当然、ソコには【万年ヒラ社員】ではなく【出世】と言う二文字しか無い。

ラーガンドが口にした【平穏】の二文字も眼中に無かった。


不条理な死に方をした今でこそ、面倒臭い事に関わりたくないと思い始めているが、この世界で冒険者を生業なりわいとしている人々が、そう思っているとは考えて居なかったのだ。


「アキラ君は、この町の名前を知っているだろう?」

「はい。【女神の泉】でしたよね?ラーガンドさん」


隣にある教会の泉が町の水源であり、町名の由来だと聞いている。


「そう。正式名称は【女神の泉】だが、一部の冒険者達には【冒険者のオアシス】と呼ばれていて、冒険者業に疲れた奴等の安らぎの場所になっているんだよ」


観光業からの依頼で食い繋いでいく事はできるし、魔物モンスターも、たいしたレベルの物は居ない。

ある程度のレベルを持った冒険者業しかできない者が、ゆっくりするには、最適な場所と言える。


アキラは、ここまで聞いて、ラーガンドの言わんとしている事を、完全に理解した。


それは、ある意味ではアキラの望んでいたユッタリとした生活には最適な町とも言えるのだが。


〔通常のラノベは、始まりの町で最初の出会いとレベルアップをするものだろうが、これは汝が望んだ物に近いのではないか?〕

『確かにソウですが、しかし、何か物足りなさを感じますね。メタトロン様』


つまりはアキラも、まだまだ血気盛んな若者という事の様だ。


「君ほどの能力を持つ者ならば、ここよりもランクを上げやすい地区のギルドを紹介できるが、どうかね?」


ラーガンドに質問していたアキラに声をかけたのは、人集りに隠れていたギルド長だ。


「他の地区ですか?」

「規則としては、Fランクで1年以上か、Eランク以上でないと移籍ができないのだが、ラーガンド君達のチームに混ざって高位の依頼をこなせば、数週間でランクアップできるだろう」


『聞いてないぞ』と言う表情のラーガンドを軽く睨んで、ギルド長の話しは続く。


「君の実力でも規約上は、単独で依頼を受けさせる事はできないし、Fランクの仕事しか与えられないので、書類上の実績を積むのには時間が掛かる。だが、高位の冒険者とのチームならば、上位の依頼を受ける事ができ、実績の積み重ねも早くなると言うわけだ」


チーム活動の場合、チーム内の最高ランクの者が持つ資格で依頼を受ける事ができるのは、ラノベでも有る設定だ。


ラノベと現実の違いは、冒険者研修の時に説明を受けていた。


移籍に関しては、Fランク冒険者の資格をとって、いきなり他のギルドに移籍した場合、経験の有無も分からずに上級者と供に困難なクエストに挑戦する事を避ける為。


初心者は勿論、高位のランクを持っていても、単独で依頼を受ける事ができないのは、依頼者とのトラブルの時に止める者が居ない、証人になる者が居ない事。

事故などに会った時の報告の為の生還率を高くする事。


現実には考慮すべきだが、ラノベでは省かれている点が、この世界では修正されている。


「大変、有り難いお申し出ですが、この国の冒険者ギルドについて、まだまだ不馴れなので、移籍の件は、もう少し考えたいと思います。ただ、他の方のチームに混ぜていただけるのは、此方からも御願いしたいと思っていました」


少し考えてから、アキラが返した言葉は、コレだった。


大元おおもとは、アキラの知るラノベでも、現状は微妙に変化している。

あまり、ラノベの定石通りにやると、とんでもないしっぺ返しを喰らうかも知れない。

どうやら、他の者にも警戒されている様なので、ここは目立たない様に行動すべきだろう。


アキラはラーガンドの方にチラリと視線を向けたが、あからさまに逸らされてしまった。


他の冒険者にも視線を回したが、完全にソッポを向かれている。


再びギルド長の方を見れば、しきりにラーガンドの脇腹をつついているが、必死に無視している。


『レベルが段違いじゃあ、敬遠されるよね?』

〔懸念していた通りだな〕


メタトロンも、この状況を、どうにかできるものでもない。

システム上の異常でなければ、神と呼ばれようと【改編】できないのが、彼の制限なのだ。


『じゃあ、奥の手を使いますか?来た様ですし』

〔昨日のうちに、目を付けていたアレか!〕


アキラが、昨日の側溝清掃の時に目を付けていた者が、今、まさにギルドの扉を開いて入ってくる所だったのだ。


アキラは、ゆっくりと、タイミングを合わせてギルドのサロン入り口へと向かい、ソノ者達と鉢合わせする様に移動した。


「「おっと!」」


アキラとソノ者達が、【偶然】の様に、サロン入り口でぶつかりそうになる。


「失礼しました・・・・って、チーム【ラビットテイル】の方々じゃないですか?ちょうど良かった。少し稼ぐ気はありませんか?」




ーーーーーーーーーー


チーム【ラビットテイル】

最弱冒険者チーム


*フライアット

種族:猫科獣人/ハーフ

 HP7:TP5

 MP5:MT2

総合レベル45

攻撃剣役

隠蔽魔法・強化魔法・身体強化


*ガガント

種族:ロックマン/クォーター

 HP8:TP2

 MP5:MT3

総合レベル31

防御盾役

隠蔽魔法・強化魔法・身体強化


*チースー

種族:アラクネ/クォーター

 HP5:TP2

 MP6:MT5

総合レベル40

魔法支援

隠蔽魔法・土魔法・風魔法

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