第2話 女神様は愛読者
「よりによってラノベかよっ!」
「人間の作った文化の中で、アレほど奇抜で変化に富んだ物は少ないでしょう。その世界ならば人間も居るし、物理法則の大半が地球と同じですから、生きるのも楽なのではないでしょうか?」
確かにラノベの世界は、異世界の筈なのに、多くの常識が
その様に、読者受けする為の御都合主義なのは、文学と言うより商業化の
たいした説明もなく、パンがあったり、日本風にノックが2回だったり、貴族階級が有ったりする。
彰も高校くらいまではラノベを読んでいたが、物理を専攻する様になってからは、その御都合主義に閉口する傾向にある。
勿論、全てのラノベが、そうとまでは言わないが。
しかし、俗に言うラノベワールドならば、現実世界の人間が転移や転生するのに【生活に都合が良い】とは言えるだろう。
そしてラノベワールドには、女神様の言う通り、転移や転生、復活や不死、神々まで存在する。
更にチートな便宜をはらってもらえば、勝ち組楽々生活を送れるのが確約されている。
同じ人生なら楽しい方が良い。
「わかりました。その提案を受けます」
「良かったわ。承諾してもらえて」
女神様は、嬉しそうだ。
ひょっとして、ラノベワールドを作ったが、転移や転生者をどうするか迷っていたのかも知れない。
「それで、どんなチートをくれるんですか?」
「定番のチートね?先ずは性格の良い美女にモテて、魔法も身体能力も超弩級よね!更に超感覚と解析能力、魔物使役と精神強化に万能耐性。地位や金が自然と集まる体質と強大なカリスマ性。魔技術開発も付けちゃおう!」
性格の悪い女やブスに付きまとわれるのは真っ平だろう。
【進化】も魅力的ではあるが、途中で殺られては元も子もない。
最初からMAXで駆け抜けるのが楽だ。
「流石は女神様。ラノベ主人公を良く御存じで」
半ば呆れる程ではあったが、彰は内容に問題を感じなかった。
どれも主人公が最終的に身に付ける能力だ。
「一応、魂と肉体の超再生は欲しいけど、不死は要りません。溶岩に落ちて死ねずに、永遠に苦しみ続けるのも嫌ですから。でも不老は一応は付けてください」
「なかなか考えていますね。分かりました。望みを叶えましょう。あと、新世界に詳しいナビゲーターも付けますから、詳しくはソレに聞いてください」
「な、ナビゲーター?あ、ありがとうございます」
案内役まで付けてくれるとは、至れり尽くせりだった。
「では、これから異世界に送りますね」
「いきなり海の底とか、密林の奥とかは、やめてくださいね」
「あれまっ!気が付きましたぁ?・・・・って、冗談ですよ。定番は、町の入り口近くの森ですよね?安心してください」
女神がソウ言うと、彰の身体は光に包まれた。
視界が完全にホワイトアウトした後に、何処かへ流される感覚が生じた。
周囲が光から次第に炎の流れになり、前方に見えてきた大きな炎の柱へと引き込まれていく。
全身が炎に包まれるが、熱くは感じない。
そして気が付くと、サエグサ アキラは森の中の一本道に立っていた。
道の先には、高い塀で囲まれた何かが見える。
ラノベの定番からして【始まりの町】みたいな物だろう。
現実の様ではあるが、日本は勿論、海外でもアノ様な町は存在しないだろう。
「まさに、冒険ラノベの世界だな」
周囲を一応は確認した後で、アキラは自分の手を見た。
「見慣れた手と着ていた服。つまりは【異世界転移】と言うわけか?だが一度死んで再生されたのだろうから、正確な意味での【転移】とは違うんだろうなぁ」
刺された傷は、服にも体にも無い。
単なる転移ならば、斬られた死体が転がっている筈なのだから。
「そう言えば、ガイドが付くとか言ってたっけ?お~い、ガイドさぁ~ん!」
〔
「あれっ?声はすれども姿は見えず。ほんに御前は・・・って、出てきて下さぁい」
〔我が名は【メタトロン】。既に御前の周りに居る〕
アキラは周りを見渡すが、誰の姿もない。
試しに【超感覚】と言うのも試してみたが、人や知性体は周囲に居なかった。
「どこですかぁ~メタトロン様ぁ」
アキラの記憶では【メタトロン】と言うのは天使の一人だ。
それで【超感覚】でも知覚できないのかも知れない。
〔我は神の代弁者。我は声。我はシステム。我は世界。我が内に汝は居る。周りの全てが我が肉体〕
「どっひゃあ~!世界の声を聞いていたとは!」
流石は創造主様だけの事はあって、世界そのものを案内役につけてくれた様だ。
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メタトロン
イスラエルやアラブ系の神話に出てくる天使。
多くの翼と無数の目を持つ。
その姿は炎の柱であり、大きさは世界に匹敵すると言われている。
人間などが直接聞く事のできない神の声を代弁して被造物に伝える役目を持つ。
契約の天使。
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