「赤ずきん」〜13個目のシナリオ〜それはとても最悪なものだった。

Yumemi

*赤ずきん*




「やあ...」



ふと目が覚めると、そこは一面真っ白な壁のない空間。



「ここだよここ」



男...いや女?脳に直接語り掛けてくるその声に首を傾げる。



「お〜い。だらかここだって」



視線の端。声の元。それは小さな光の集合体であった。



「おっ、やっと気付いた」

「何...あんた」



◇寝巻きを着た小さな子供。それは私の姿に驚いた様子もなく、やはり他とは少し違っていた。



「早速で悪いんだけど〜」

「無視...」

「仕方ないだろ〜僕も時間が無いんだ。サクッと進めてくよっ」



◇不貞腐れた様子の少女。うん...やはり子供の姿はみんな可愛い。


その光は私に入る余地もなく話の歯車を一方的に回し始めた。



「え〜とまず、君は殺されました!」

「...えっ?」

「それで君は」

「ちょちょ...ちょっと、待って。今なんて?」



その普通、冒頭に聞かない単語に私は思わず光を遮り聞き直す。



「あ〜もう、どうして皆ここで止めるかな〜。だ〜か〜ら、あなたは殺されました。はいっ、話続けていい?」

「え、だっ誰に...?」

「え〜そこ気になる〜?え〜とね、確か...オオカミ。だったかな?」

「オオ...カミ?」

「そっ。オオカミ」



私はここで目を覚ます前の記憶を辿ろうとしたが、何故かぼやがかかっていて思い出せない。


◇少女は自分の死を聞き、何とか記憶を呼び起こそうとするが、そうはさせない。いや...させてはならない。それがここのルールだから。



「死の...世界?」

「まあ、そんなとこ。別の世界では『天国』とも呼ばれてるよ」

「天国...」

「あ〜もういいかい?早くしないと怒られるんだよ」



そういって焦る光のすぐ側には、砂が上から下に落ちる仕組みのどういう用途なのか分からない置物が机の上に置かれていた。



「君は殺されてここにきた。そんで今からこの門を潜って、次の世界へと旅立つ。おけ?」

「お...け?」



私は光が使う謎の言葉に首を傾げ復唱する。



「それにあたって、今から殺された君だけに与えられた権利を伝える」

「おけ...って何なの?」

「あ〜それほんともうどうでもいいから。ごめんね逆に分からないの使って」



◇少女は子供扱いされたのが気に食わなかったのか、またも不貞腐れた顔をする。まあ、その顔はバリ可愛さ極まりないのだが今はマジで時間がないので進めよう。



「その権利っていうのが、次。この先の世界での君の在り方。これを決めてもらい僕はそれを考慮して設定を行う。どう?いいでしょ」

「...なんか思ったより微妙ね」



◇眉ひとつ動かさない少女。これはマジ可愛くねぇ〜。



「普通じゃ君の希望なんて一切聞くことないんだから、これはとても凄い権利なんだよっ!」

「へぇ〜...そう」



◇次第に可愛さが消え、生意気さが増して来た。反抗期か?


光は自慢げにそう言うが私にはあまりその良さが分からなかった。

まあ...醜く生まれず望む美しさが確定で手に入ると考えたら悪くないか。



「はぁ〜もういいよ。じゃあ今から読み取るから、頭の中で文字に起こすように想像して」

「待って...あなたは一体何者なの?」

「え〜今になってそんなのどうでもいいじゃん。これでもう終わりなんだから」

「だからこそよ。得体の知れない物の言う事は聞けない」



◇あともう少しで終わるっていうのに、少女...いや彼女は今になって私の正体なんぞを気に出す。はぁ...これだから歳を重ねた者は嫌いだ。



「はぁ...分かったよ。僕はあんたらの世界でいう天に住む者さ。もうほぼ気付いてたろ?それをまた改まって...こんな空間、こんな姿。この状況を踏まえれば、もうそれしか無いじゃん」

「...」



◇すると女は黙りこくって視線を下げた後、更に私に求めてくる。



「証拠...証拠は?!貴方がそのいわゆるだって証拠」

「はぁ〜」



《パチン》



「はいっ。これでいい?」



◇私は言っても引き下がらない女を一刻も早く黙らして次に進むため、

女の前に鏡を出し、一時的に婆さんの姿にしてやった。



「なぁっ...」



◇一瞬にして少女の姿から婆さんの姿になった女は、

驚いた様子で自分の手と向けた鏡に写る自分の顔のしわを見る。



《パチン》



「どう?これで信じたろ?だから早く頭に浮かばせてその門を潜ってくれ」



◇私は婆さんをまた少女の姿へと戻し、彼女を急かすように背後から語りかける。



「えぇ...分かったわよ」

「はぁ、やっとだよ。は〜い、じゃあ自分の理想を思い浮かべながらいってらっしゃ〜い」



女はゆっくりと門を潜り、姿を消した。



「よし...ではやりますかっ」



私は最後の工程へと移る。



次世界へと向かう女の頭に浮かべる文字を、丁寧にすくって打ち込む。



それを次の部署へと送る。



それで私の仕事は終了っと。




「おっ...浮かんできたきた」




【美しい赤髪と誰もが羨む美貌びぼう。暮らしは豊かで綺麗な街並みを赤い靴を毎日履いて出掛ける日々】




「...愚かだなぁ、ほんと」


〈カタカタカタ....〉


「...うん。この位の誤差バレないバレない」



これは


刺激に飢えた神の好奇心。


人という愚かな生き物を蔑み弄ぶという風潮の表れ。


退屈を持て余しできた心の隙間すきまを埋める為の


世に言う


ちょっとした...



『神の悪戯いたずら』である。




【美しい白髪と誰もが羨む美貌びぼう。暮らしは貧しく綺麗な街並みを赤い靴を毎日履いて出掛ける日々】




「よしっ...送信っと。あっ、もう次が来たか...はぁ。また休憩無しだよ」



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ふと目が覚めると、そこは一面真っ白な壁のない空間。



「やあ...」


「あなた...だ〜れ?」



◇赤ずきんを頭に被った少女は、ぬいぐるみを手に首を傾げる。



「君は恐ろしい魔女に殺されました」


「...そっかぁ。私死んじゃったんだ」



◇悲しそうに俯くいたいけな少女。素直な心がにじみ出る瞳に涙が出そうだ。



「次。君は何になりたい?」


「ん〜とねぇ...ん〜と。私、オオカミさんになりたい!」


「え?オオカミ...?」


「うん!」




真っ直ぐこちらを見つめて返す少女の言葉に多少驚くも、

私はそう言い張る少女を門の先へと送り出した。





「おっ...これはもしや休憩行けるのでは!?」


と思い上がったのもつか


「おいおい流石に早いよ〜...はぁあ」


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ふと目が覚めると、そこは一面真っ白な壁のない空間。



「やあ...って、えぇ!?」



これは時の巡り合わせというやつか、それとも神に対する何者かの悪戯か...




そこに居たのは、小さくも可愛らしい



〈オオカミ〉だった。






【小さな人間の男の子に...】

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「赤ずきん」〜13個目のシナリオ〜それはとても最悪なものだった。 Yumemi @6yuMemi9

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