第3話 死子
朝、起きると姫葉からメールが届いていた。
『死のメロディを作りたいの、手伝ってくれる?』
今、校内で話題の死のメロディだ。聴いた者は必ず自殺するとの恐ろしいモノだ。噂では写真部の使っていた暗室にあるとのこと。昔は写真の現像に暗室が必要だったが、今は倉庫になっている。それでだ、このメールの返事をどう返そう。わたしも姫葉も死にたい……でも、姫葉と出会ってからは何かが変わった。
それは生きる意味を問う事が多くなった。単純に死にたいからの変化である。
メールの返事は『歌姫を辞めたら手伝う』と送った。姫葉の歌は生きる希望で溢れていた。それでも死にたいのは贅沢である。そんな気持ちで返事を返したのだ。
うん?
返事が返ってきた。
『わたしから歌を取ったら何もなくなる。わたしは幸せな死が欲しいの』
わたしは昨日の包帯の事を思い出していた。姫葉の危うさである。試しにわたしも包帯をして登校しようと思った。朝の短い時間で包帯を巻いて家を出る。学校に着き、周りを見渡すが包帯を気に留める人はいなかった。一限が始まる頃には外していた。わたしは姫葉の様に注目されることは無かった。
やはり、姫葉は特別な存在である事が証明された。
***
わたしは校舎裏の茂みにいた。首を吊るには丁度いい場所だ。
うん?
姫葉からメールが届く。
『会いたいの、今、何処にいるの?』
最近は気高き姫姫も素直になってきた。わたしは校舎裏に居るとメールを送り。
しばし待つ。姫葉がやって来ると第一声は『死に場所を探しているの?』であった。
確かにそうだが今日の姫葉は何かが違う。理由を聞くと簡単であった。教室の机の中にカッターの刃が入った封筒があったのでる。悪質な嫌がらせであるが。実際にやられるとへこむらしい。誰からも愛される姫姫に敵などいないかと思えば現実は厳しい。
「犯人の見当はついているの『死子』と言う霊的な存在のはず」
聞いた事がある。この女子校で初めての自殺者らしい。何でも死のメロディを作って死んだとのこと。彼女は死後もこの学校を彷徨い、獲物を狙っているとか。時々感じる視線は彼女のモノかもしれない。
ま、死にたい人間を殺そうとするなんて考えてみると変な話だ。
わたしはこの校舎裏の茂みから出る事にした。
「姫葉、行きましょう、ここには空が無い」
屋上に向かうと、今日も晴天であった。不思議……ここで姫葉と話していると生きる希望が見える。姫葉はまだ机の中に入っていたカッターの事を気にしているのであった。
『死子』か……。
ファーストエピソードの自殺者か。
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