第21話 ダイヤモンドは傷つかない
右の足首を踏まれた。もう、動かせない。左脚は空回りしているし、両脚の内側に入られている。
「しぶとい奴だぜ。ホントは期待してんだろ? 抵抗するフリなんかしなくていいんだぜ?」
「今度こそお待ちかね。最後の一枚を脱がしてやるぜ? お願いしますって言ってみろよ!」
言うわけがない。どうやらこの場では私の負けらしい。でも、絶対心までは屈服しない。こいつらの顔は絶対忘れない。絶対……
その時だった。何かが壊れる音がした。
「だ、誰だてめっ、グボォあっ!」
「そ、それ以上近寄ると、この女ぁゲァッぐっ!」
「ちっ……」
手が離れた! チャンス!
顔に被せられた袋を破る。ふう、空気が美味しい。
「パパ!」
まさかパパ自ら来てくれるなんて。
「よう静香。いつの間にやらお前も大きくなったもんだぜ。こんなガキどもにゃあ目の毒だ。さてと、そこのお前、弁田って言ったな。どうすんだ? 俺とやってみるか? あ?」
「ちっ……ぐおっ……」
弁田君はパパに殴り飛ばされた。
「忙しいのに、ありがとう。」
「たまたま近くに居たからな。それに学校内だから俺が来た方がスムーズってこともある。まあお前が無事で何よりだぜ。全く、由乃に似ていい体してやがんな。さっさと服着ろ、いや無理か。ちょっと待ってろ。」
パパは倒れてる男の子の服を脱がしている。
「ちっと臭えが我慢しろ。帰りに買ってやるからよ。」
「うん。平気。」
「さあてと、静香はこいつらをどうしたい? 塀の中にぶち込んでやろうか?」
「それはもちろんだけど、適当に司法取引持ちかけて情報を集めてよ。どう考えても指示した奴がいるよ。」
「かっかっか。静香の色香に血迷ったわけじゃないってか。そんなら後は任せとけ。服を着たら車で待ってな。今日はもう勉強する気分じゃねえだろ? 遊びに行くぜ!」
「うん。たまにはいいよね。」
パパの大きな車の中で一人。ああ……怖かった。本当に……思い出しても震えがくる……
一対一なら勝てるつもりだけど、やっぱり男の子の力って強いんだな。パパが間に合ってくれて本当によかった。小さい頃に何回か誘拐されたせいでヘアピンにGPSが仕込んである。そして、これを壊したらすぐにパパの会社の人が現場に急行してくれることになっている。もちろんスマホにも同じ機能はあるけど、あんな状態でスマホなんか触れないもんね。
でも、パパが自分で来てくれるなんて。かなり嬉しい。何日も家に帰れないぐらい忙しいのに。
はぁ、城君に何て言おう……そのまま言うしかないよね。城君、悲しむだろうな……親友が塀の中に入るなんて。でも弁田君は城君のことを親友と見なしていないってことが分かった。やむを得ない事情があったようだけど、それを気にしても仕方ないしね。
これも全て北条や水本先輩の指示なのかな。どれだけ他人の人生を狂わせたら気が済むのだろう。
「おう静香、待たせたな。行くぜ。」
「うん。まずはどこに行くの?」
「当然買いもんだ。どこの服屋がいいんだ?」
「うーん、じゃあファトナトゥールがいいな。」
ここから近いから。それに服屋さんなんて3つぐらいしか知らないし。
夏らしい薄い青のワンピースを作ってもらった。裾は思い切って膝が見える長さ。それに合わせて少しだけかかとが高いミュール、それもヘップバーンモデル。城君は何て言うかな。私に似合う服なんてないのは分かるけど、それでも期待してしまう。
少し足を伸ばして次はディスティニーランド。ここなら仮面をかぶっても不思議ではない。誰にも私の顔で不快な思いをさせることもない。遠慮なく楽しめる。パパと2人、結牙にずるいって文句言われそう。
平日だけあって、さほど並ばずに様々な乗り物に乗ることができた。土日ではこうもいかないよね。
もうすぐ放課後になる時間。城君には会いたいけど、少しだけ気が重い。でも黙っているわけにはいかない。勇気を出そう。
「じゃあパパ、今日はありがとう。」
「おう。彼氏と仲良くな。」
パパが病院まで送ってくれた。忙しいだろうに……本当にありがとう。頼りになる両親でよかった。
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