39話「勉強会」
「ねぇ、太郎くん! 今日の放課後勉強会しよ!」
朝、挨拶も早々にそう話しかけてきた田中さん。
勉強会とは、もしかしてあの勉強会の事だろうか?
「ほら、そろそろテストあるでしょ? だから、部活も休みだし勉強会という名目で太郎くんと華ちゃんともっと仲良くなろうと思って!」
随分と正直に理由を語る田中さんに思わず笑ってしまった。
まぁ、断る理由もないから俺は別に構わないけど、山田さんはどうだろう?
俺がオッケーすると、田中さんは「やった!」と嬉しそうに喜んだのも束の間、すぐに山田さんの元へと駆け寄り同じく勉強会のお願いをしていた。
山田さんは「太郎くんも一緒ならいいよ」と二つ返事で言った。
そんな理由であっさり承諾する山田さんに、田中さんはちょっと苦笑いを浮かべていた。
こうして、田中さんの提案で放課後勉強会が開かれる事となった。
◇
放課後、勉強会のため俺達はファミレスへとやってきた。
ファミレスで勉強会……本当にあったんだ……。
なんて、ラノベとかでよくあるシチュエーションに今自分がある事が信じられなくて、少し違和感を覚えた。
しかも、相手は学年でもツートップの美貌を持つ山田さんと田中さんだ。
どこのラノベだよと心の中で自分にツッコミを入れた。
これが、世に言うハーレム状態ってやつなんだろうなとか思いながら、俺達はボックス席へとやってきた。
そして、ここで早速問題が生じる。
これ、どうやって座るのが正解なんだ?
「じゃあ、太郎くんと華ちゃんはそっち座って!」
戸惑っていると、田中さんがすぐに席を指定してくれて助かった。
「これなら、二人の顔もよく見れるからね」
なんてニッコリと笑みを浮かべる田中さんは、今日も女神様パワー全開だった。
◇
フリードリンクとポテトを注文して、早速勉強を開始する事になった。
まずは、田中さんの苦手な数学から。
俺は自分の問題を淡々と解きながら、質問してくる田中さんにその都度解き方を教えた。
公式をまずは暗記しないと始まらないが、田中さんはそれがどうしても覚えられないようで苦戦していた。
山田さんはというと、数学は得意なのか難しい問題でもすらすらと解いていた。
もはや、得意というか……あれ? 山田さんってもしかしてめちゃくちゃ頭良いのでは?
うちの高校は割とレベルの高い方の進学校だけど、転入してきた山田さんはもしかしたらうちの高校よりも全然高い学力レベルなのかもしれない。
「ん? 太郎くんどうしたの?」
俺の視線に気が付いた山田さんが、首をかしげながら不思議そうに聞いてくる。
そんな何気ない仕草も可愛らしくて、俺は思わず顔を赤くしてしまう。
「そこ! イチャイチャ禁止だから! 見るなら前を見て! 前を!」
そんな俺達に気付いた田中さんは、直ぐ様禁止を言い渡してきた。
前を見てって、前を向いたらそこには田中さんが居るわけで……と思いながらも前を向くと、田中さんは満足そうに頷いた。
田中さん、なんだか日に日にパワフルになってる気がするなぁ……。
そんな田中さんと山田さんだが、やっぱり超がつく程の美人なため、周りからの視線がこちらに集まっていて中々居心地が悪かった。
なんであんな男がとか思われてるのかなぁなんて、ネガティブな思考まで湧いてくる。
「ちょっとジュースお代わりしてきていいかな?」
「あ、取ってこようか」
「いや、自分で行くよありがとう」
俺は気を取り直すように、ジュースのお代わりを取りに行く事にした。
通路側に座る山田さんが気を使ってくれたけれど、気分転換も込めて自分で向かう事にした。
「2人も何かいる?」
「じゃあ私コーラで!」
「じゃあ……オレンジジュースいいかな」
俺は「了解」と返事をして、ジュースを取りに向かった。
◇
「あれ? 山田くんじゃん」
グラスにジュースを注いでいると、突然後ろから声をかけられた。
驚いて後ろを振り返ると、そこには中学の時同級生だった西園寺さんがいた。
彼女について真っ先に思い出すのは、中学で一番人気だった女子だという事だ。
陽キャの中の陽キャで、俺とは正反対の存在だったのでよく覚えている。
「え? なになに? 光の友達?」
「え? てかめちゃイケメンじゃね?」
「あー、うん。中学の時の同級生」
西園寺さんの後ろから、友達と思われる二人が声をかけてきた。
なんていうか、西園寺さん含め三人とも凄いギャルだった。
茶色に染めて少しウェーブがかったロングヘアーに、ちょっとつり目で整った顔つき。
耳には大きめのイヤリングをしていて、制服のスカートはこれでもかってぐらい短くしている。
そのせいもあって、モデルのように細くて長い足がより強調されて美しかった。
そんな西園寺さんは、山田さんや田中さんとはまたタイプが違う美人だった。
「どうしたよ? てか誰?」
そんな俺達の元へ、遅れてチャラそうな男子が三人組が声をかけてきた。
どうやら西園寺さん達は、男女三対三でファミレスへやってきていたようだ。
「もう、山田くん困ってんじゃん! 行くよ! ごめんね山田くんまたね!」
人がどんどん集まってきた事で、西園寺さんは苦笑いしながら全員連れて席へと戻って行った。
見るからに陽キャな集団だったため、俺は助かったと一人安堵した。
あれ、でもなんで西園寺さんは俺だって分かったんだろう?
中学どころか、俺は小学生の頃から髪で顔を隠して控え目に生きてきたのに、よく今の俺が俺だって気が付いたななんて事を考えながら、俺は一人席へと戻ったのであった。
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