第8話 ケイタ♂とイケオ♂
3-2
イケオは新年会で久しぶりにケイタに会った。夏以来だ。あの時は同級生の飲み会だと思って出かけたら合コンだったので、だまされてひどい目にあった。主にカノジョから。高いマカロンを買わされた。たしかに買ってもらわないと食べる気がしない高級品だった。味見もさせてくれなかった。全部味違うから、だって。もう二度と買うことはないだろう。
「今度さあ、ドライブしねえ?俺が広めた都市伝説が流行ってるらしくて、見に行こうぜ」
いやまあ、大学生じゃないんだから。ケイタは相変わらずだな。こういうバカみたいなことも言い始めるが、商社でビジネスマンをしている地元の出世頭でもある。そのうち独立するんだろう。なんだかんだ盆と正月に会えるだけでもちょっとうれしい特別なヤツだ。ケイタが戻ってくれば、たいてい都合をつけて仲間が集まる。
「ちょっとー、覚えてないの!あれよ、真夜中に路線バスが走ってて消えるっていうの」
なんだそれ、ぜんぜん覚えてないわ。覚えてないというより、聞いてなかったのかな。合コンでだまされたとはいえあの時はしこたま飲んで、ものすごく楽しかったことは否定できない。
それにしても、ケイタがそんなくだらないことに興味を持つことは意外だった。調子はいいし、チャラいし、人付き合いもいいけど、合理的でスマートな男だ。顔は見とれるほどではないが好感度が高く、なんといっても背が高くてスタイルがいい。まあそのあたりは、俺も負けてはいないはずだ。
「実はさ、そのバス見たの、俺の先輩でさ。まあなんつうか、好きな人なんだよねー。男なんだけど。だから─── 」
男なんだけど。男なんだけど。男なんだけど。
衝撃によるリフレイン。俺の脳内に響くわ。ちょっとまて。ケイタの好ましく思う相手が男性ということか?いや、だからちょっとまて。だったら、俺がいるだろ。おまえにふさわしくね?お前とだったら、俺まだもっと、仕事頑張れるよ?
「イケオ聞いてんのぉ?」
っと。そんなわけはない。人間として好きなやつだ。
ケイタは人間として、その先輩のことがァ、好きっっ!
ああ、いかん、イケメンがこじれて、ついBL脳になってしまう俺。気を確かに持て。でもさあ、高校の時、いつもお前の隣にいた俺って、最高だったんだよな。あの時の、青春の頂点にいるような、幸せの絶頂のような、ってヤバい、ケイタへの想いがあふれ出てしまう。俺の至高の友情が。
とりあえずケイタがどこか行くっていって、誘われた俺が行かないわけないだろ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます