第11話

ーーDAY2ーー


「んーんっ!よく寝たぁ。」


こんなにグッスリ眠れたのは、いつ以来ぶりだろう。時計を見ると6時50分。

清々しい気持ちで朝食を作ろうとダイニングへ下りるといい匂いがする。


「おはよう、美穂ちゃん。よく眠れたかい?もう少しで朝食できるよ。」


夫がすでに朝食の準備をあらかた済ませていた。


(良かった…。今日も彼だった。)


私は内心ほっとして、


「おはよう、陽一さん。朝食の準備手伝います。本来なら、私がやらなきゃいけないのに…すみません。」


「何言ってるの。家事は夫婦で行うものでしょ。僕がたまたま早く起きたから準備してるだけだから気にしないで。じゃあ、こっちのできあがったのを運んでもらっていいかな?」


「うん、わかった。美味しそうね。」


「ありがとう。でも、今日のとっておきのお店の方が美味しいよ?楽しみにしてて。」


彼の笑顔を見ると安心して幸せな気持ちになる。



それから間もなく朝食と4人分のお弁当ができあがり、唯と奈月も起きてきた。夫は笑顔で2人に「おはよう。」と挨拶をし、2人も私たちに「おはよう。」と挨拶を返す。

2人ともホッとした顔をしていたので、私と同じ気持ちだったのだろう。


当たり前の光景。でも、当たり前の光景が当たり前でないことを私たち3人は知っている。あぁ…やっぱり良いなぁ。


「「「「いただきます。」」」」


朝食をとりながら夫は、


「今日も僕は少し早めに帰れると思うよ。繁忙期が終わって少し暇っていうとアレなんだけど、忙しかった分、早めに帰るように言われるからね。」


唯が続く。


「私も、今日は図書室での勉強はやめて早く帰るよ。お買い物楽しみ。ね?奈月。」


「唯浮かれすぎだよ。小学生みたいだよ?私は市大会前だから部活無いし早く帰れるよ。」


唯が笑顔で反撃する。


「あれ〜?昨日の夜、うっきうきでお買い物の予定を立ててたのは誰だったかなぁ?私の部屋に来て、『ね!どこがいいと思う?唯はどこ行きたいの!?』って興奮してた人がいたと思うんだけどなぁ…?」


奈月が顔を真っ赤にしている。


「まぁまぁ、2人が買い物を楽しみにしてくれて嬉しいよ。ね?美穂ちゃん。」


私は笑顔で、


「私も楽しみにしてるから2人じゃなくて3人ね。」


朝食を終えると、夫は会社へ、2人は学校へ「行ってきます!」と元気よく行った。



私は洗い物を済ませ、午前中の間に美容院へ行き、お弁当を食べた。

午後は洗濯をし、鼻歌を歌いながら洗濯物を干した。夫や娘たちに美容院後を見せるのが今から楽しみだ。その為に今日はお化粧もしている。



あっという間に時間がたち、まず最初に帰ってきたのが、奈月だ。なぜか息が荒い。


「ただいま〜!お父さんと唯は帰ってる?ハァハァ。ってお母さん!?劇的ビフォーアフターみたい。良いね、似合ってるよ。ハァハァ。」


「奈月、ありがとう。ところで、あなた走って帰ってきたの??2人はまだよ。」


「えぇー!?早く行きたいのに。」


奈月は少しむくれている。本当に楽しみにしていたんだなぁと改めて感じる。

そのすぐ後に夫が帰ってきた。


「ただいま、美穂ちゃん、なーちゃん。美穂ちゃん、とっても似合っててキレイだよ。」


私が顔を赤くしていると、


「あの〜、子どもの前でノロケるのはやめてもらって良いですかね?」


奈月がジト目で見てくる。


「なーちゃん、帰り早かったんだね。あとは唯ちゃんだね。2人はもう買いたい物決めたのかい?」


と言っているところに唯が帰ってきた。


「ただいま〜。お母さん、とっても似合ってるよ。

ところで、奈月。学校から走って帰ったでしょう?友達に『奈月ちゃん、どうしてあんなに猛ダッシュで帰ってるの?』って聞かれて恥ずかしかったんだから。」


「うっ…良いじゃん。揃ったんだから行こう!!」


私たちは夫の運転する車でデパートへ向かった。



「まずは、唯と奈月の下着を買いたい。」と私が言うと、夫が「せっかくだから美穂ちゃんのも買ったら?」

というので、集合場所を決めてから3人分の下着を見ることに。

夫も見たい物があるらしく、そちらを見にいった。「さすがに女性下着のところに僕は入れないからね。」と。


私たち3人は下着売場で「これはどう?さすがに派手かな?」「これは、地味すぎない?」などと言いあいながら楽しく選んだ。

ちなみに、奈月の選んだ「お母さん、これは?」という私用の派手な下着は必死で止めた。


各自、気に入った下着を買い集合場所へ行くと、夫が待っていた。


「だいぶ待たせちゃったかな?」


私が訊ねると、夫は笑顔で


「全然大丈夫だよ。3人とも気に入ったのは買えたのかい?」


私たちはうんうん!と笑顔でうなずいた。


「次は誰の行きたいところかな?」


「ハイ!ハイ!私!私!!」


待ちきれない奈月が勢いよく手を挙げる。


「なーちゃんは何を買いたいの?」


「服!!」


ということで、4人で服を見に行く。

またまた、夫が「美穂ちゃんの服も買おうか。」ということで、3人分だ。

歳の差だろう。自然と唯と奈月ペア、私と夫ペアになった。


唯と奈月はきゃっきゃとはしゃぎながら選んでいる。普段あまりはしゃがない唯がはしゃいでいるところを見ると相当嬉しいようだ。


夫が「これ着てみてくれない?美穂ちゃんにきっと似合うと思うよ。」と真っ白のワンピースを持ってきた。


私も一目で気に入ってしまったが、歳を考えると躊躇してしまう。でも、せっかく夫が選んでくれたのだから…と試着してみることにした。


「どう…かな?やっぱり若くないから似合わないんじゃないかな?」


夫は微笑み、


「そんなことないよ。美穂ちゃんの清純さが際立っててとってもよく似合ってるよ。」


いつの間にか、近くに来ていた唯と奈月も


「「すごくいい!!」」と褒めてくれた。


唯と奈月はもう選んだようだ。2人の顔がとても嬉しそうで、私は新しい服よりもそちらの方が嬉しかった。

その後、私は唯と奈月が選んでくれた洋服を買うことにした。計5着。

唯と奈月はそれぞれ4着ずつ買うようだ。


夫が「荷物持とうか?」と言ってくれたが、私も唯も奈月も「絶対自分で持つ!!」と言って自分の服を大事そうに抱えていた。


「最後は唯ちゃんだね。やっぱり画材かな??」


夫が訊ねると、唯も待ちきれなかったのだろう。


「そうだよ。お父さん、早く行こっ!!こっちこっち。」


夫の手を引いて進んで行く。

私と奈月は顔を見合わせて、


「あんなにはしゃぐ唯ちゃん珍しいね。さっきの服の時よりはしゃいでる。私たちのこと完全に忘れてるよね?」と言って笑ってしまった。


その後、唯は画材を1時間近く選んでいて、私も奈月も疲れてしまったのだが、夫だけは唯の話を聞いて相槌を打ったり時にはアドバイスしたりしていた。

その時の唯のキラキラした目は本当に嬉しそうだった。


みんなの買い物を終えて、車に戻った。


「さて、時間もいい具合だし、夕食行くかい?」


「私お腹ぺこぺこだよ、お父さん早く行こ!」と奈月。


「奈月ははしゃぎすぎてお腹へっただけでしょう?」唯が笑いながら言う。


「唯だって画材、めっちゃはしゃいでたじゃん。ハッキリ言って私よりヤバかったよ。ね?お母さん。」

奈月が反撃する。


「そうね、唯本当に楽しそうだったわ。確かにお腹すいたわね。陽一さん、お願いしても?」


「もちろんだよ。じゃあ行こうか。」


外食…とてもワクワクする。しかも夫のとっておきなのだから尚更だ。


お店に到着したのは7時前だった。

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DVモラハラ夫交換しました〜アラフォーからの人生逆転物語〜 いっちにぃ @t-xillia

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