第10話
ーーDAY1続きーー
夫はお風呂洗いも事前に済ませていた。
だから、久しぶりにゆっくり夫と向かい合って温かいお茶でくつろいでいた。
ちなみにお茶も夫が淹れてくれた。私がやろうとすると「いいよ。僕がやるよ。」と言われてしまったのだ。
「美穂ちゃん、明日は休みだったよね?」
「そうだけど…何かあったっけ?」
私は思い当たるふしが無いか思い出そうとする。
「いや、体調が良かったらで良いんだけど、美容院行ってきたらどうかな?」
美容院…確かに行きたい。だけど、、、
「美容院よりも唯と奈月の肌着とかを買いに行きたいの。陽一さん、買っても良いかな?」
彼は微笑みながら、
「もちろんだよ。というか僕の許可は得なくて良いよ。じゃあ、こうしないか?お昼は美容院へ行って、夕方お買い物へ。そうしたら、僕が車を出すから。」
そこへ唯と奈月がリビングへ入って来た。普段なら夕食が終わったあとはお風呂以外は絶対におりてこない。
「お母さん、明日お買い物行くの?私も行きたい。」
と、唯が言う。
「あっ!私も行きたい!明日部活無いし。」
奈月も続く。
「じゃあ、夕方からみんなで行こうか。久しぶりに外食なんてどうだい?」
夫が笑顔で言う。
「お父さん、良いね!ファミレス?」
奈月はすっかり今の夫を気に入ったようだ。唯も、私ももちろんそうだ。
外食なんていつ以来だろ?ここ10年は無いなぁ。と考えていると、
「僕に任せてもらえれば、僕の知るとっておきのお店とっておくよ?3人がファミレスが良いなら無理にとは言わないけれど。」
料理の得意な今の夫が、とっておきのお店というんだから気になる。すごく気になる。唯も奈月も同じ意見なのだろう。2人の方を見るとうなずいている。
「じゃあ、陽一さん。すみませんがお願いしてもよろしいですか?」
私が代表して言うと、彼は笑顔で
「もちろんだよ。というか敬語はやめよう?」
私は思わず、
「あっ!はい、わかりました。」
「お母さん、また敬語になってるよ?」
と唯に言われて、今度は私以外の3人が大笑いした。
夜もふけ、そろそろ夜のおつとめの時間。あんなに優しい今の夫なら良いかな?と思いながら寝室へ。昨日までとは気持ちが全く違う。寝室へ入ると夫が、
「美穂ちゃん、もう寝る??ゆっくり寝てね。僕は体調には睡眠が何より大切だと思うんだよ。」
(?????)
てっきり夜のおつとめだと思っていた私は訳がわからなくなってしまい、
「あの…夜のほうは…??」
私がおそるおそる訊ねると、夫は笑顔で、
「美穂ちゃんの体調が良くなって、美穂ちゃんがシタイなぁ。と思ってから、、、でどうかな?僕もどうしてもって時には事前に言うからさ。」
こんなに優しくされたことのない私は感激してしまい、
「…ありがとう……。」と言った。
夫は笑顔のまま、
「おいおい、泣くなよ。さ、もう休んで。ゆっくり寝てね。また明日。」
と言って、電気を消してリビングへ戻っていった。まだやることがあるみたいだ。
一人になり、目を瞑って今日一日のことを思い出す。
本当に今日一日で色んなことが変わったなぁ。正反対といってもいいくらい。
いつ以来ぶりだろう?こんな幸せな気持ちで眠れるのは。あぁ、明日起きても夫が彼でありますように、、、
私は幸せな気持ちと不安を抱えながら眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます