第7話

私が目を覚ますと、辺りは完全な闇だった。


(あれ?真っ暗だ。電気消したっけ?電気消してもこんなに真っ暗になるんだっけ?)


私は体を起こした。下が布団じゃないことに気づく。


「私は布団の上にいたはずだけど…下は石畳み?だよね。これ。」

私が呟いたときだった。



「じゃっじゃじゃーん!!!おめでとう!!君たちはこの『ルビちゃん』に選ばれましたー!ぱちぱち、どんどん、ぱふぱふー!」


急に幼い女の子の大きな声がしたと思ったら、真っ暗な中で一か所だけ光が当たる。まるでスポットライトだ。

そこにいたのは、小学校低学年ぐらいの可愛い女の子。いたっていうか浮いている。『ルビちゃん』だっけ。私はなるべく、こわがらせないように声をかけた。


「ねぇ、ルビちゃん?迷子なの??おばさんもなの。ここどこかなぁ?」


「むぅ。。この状況でルビちゃんを迷子だと思うなんて。。」

幼い女の子は顔を膨らませ、ぷぅっと膨れている。とても可愛い。


「まっ、いいや!ここはね、君の夢の中だよ。君の見ていた夢をルビちゃんが書き換えたってわけ。」


「???なんでそんなことを???」


「ルビちゃんさっき言ったよね?君聞いてた?しょーがないぁ。こほん、改めて。

じゃっじゃじゃーん!!おめでとう!!君たちはルビちゃんに選ばれましたー!ぱちぱち、どんどん、ぱふぱふー!」


「あぁ、夢なのね。」

面白い夢だなぁ。と思っていると、


「反応うすっ!!6枚切りの食パンを更に6枚切りにしたぐらいうすっ!!」


ルビちゃんは感情豊かな子だなぁ。表情がころころ変わる。見ていて楽しい。


「それで、おばさんは何に選ばれたのかな??」


「はっ…!?そうだった!ルビちゃんとしたことが本題を忘れるところだった。」


今度はルビちゃんは笑顔になった。



「君の旦那取り替えてあげるよ。」


(????)


「って急に言われてもわからないよねー。だから、1週間お試しでやってみて!1週間後にまた返事聞くから!ただ、1週間後のやつはタダじゃないけどね。」


「えっ…ちょっと待っ…」

私が言い終わらないうちに、ルビちゃんは、


「あっ!ヤバっ!他の2人より時間かかりすぎちゃった!そういうわけだから!じゃーねー、また1週間後にー!」


早口でそう言い終えると、ルビちゃんは消えてしまった。

(なんか不思議な夢だなぁ。)

と思っていると、今度は違う声がする。



「…お…あ…ん。お…あさん。おかあさん。」

はっ!と目を覚ました私に声をかけていたのは唯だった。


「お母さん、朝ごはん…」


唯が言い終わらないうちに時計を見る。7時55分。唯がまだ何か言っていたが耳に入らず、瞬時に飛び起き、ダイニングへ向かう。


(寝過ぎた。朝食も弁当も準備できてない…また殴られる……)


ダイニングへ入ると同時に土下座をする。


「申し訳ございません、すぐに準備を……」

手が飛んでくるか、足が飛んでくるかビクビクしていた私に返ってきたのはあり得ない言葉だった。



「美穂ちゃん、おはよう。体調は大丈夫?朝食食べられるかな?」


いつもの夫ならこんな優しい言葉ありえない。声も少し違うような…

おそるおそる顔を上げると、爽やかなイケメンが弁当箱に卵焼きを詰めながら私を見て微笑んでいる。


(だれー!?この人!)


1日目が始まった。

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