第5話

〜唯視点〜


夕食を終えた私は自室に戻っていた。

今日アイツに蹴られたところが凄く痛い。物心ついたときから私はアイツを父だと思ったことは一度も無い。

いつも怒鳴られていた。私が怒鳴られるのは嫌だったけど、それ以上に私のせいでお母さんが酷いことされるのはもっと嫌だった。

だから、少しでもお母さんの負担を減らす為にわがままを言わないのはもちろん、勉強も頑張って良い成績をキープしている。



私は学校の宿題を終え、お風呂を上がって布団に入ったけれど寝つけない。ふと、あの日のことを思い出す。



小学校6年生の時

「お母さん、、私の下着古くてクラスメイトに笑われる。」と泣きついたことがある。

お母さんは、

「ごめんね、何とかするからね。」と言って、その夜アイツに頼みこんでいたのを私は偶然見た。


「あの、、、唯の下着を買いたいので少しお金を頂けませんか??お願いします。」


「あぁっ!?破けたのか?破けてなけりゃまだいけんだろ!!んなことで、相談してくんな!!!クソ女!!」


アイツは酒を飲みながらお母さんを罵倒していた。お母さんは、「年頃の子ですから。」と食い下がってくれたが取り合って貰えなかった。


次の日、お母さんは

「唯、もう少しだけ待ってくれる?下着何とかするからね。」と言った。3日後、本当に新しい下着を買ってきてくれた。パートの先輩に頼みこんで少しお金を貸して貰ったのだそうだ。



だから、私はお母さんが酷い目に遭うのは嫌だ!!私は絵を描くことが好きだけど、画材を持ってはいない。それどころか、中学3年生なのに携帯も持っていない。

画材も携帯も、服だって本当は新しいのが欲しいけど我慢しなければならない。



(あぁ、、お母さん大丈夫かな?奈月も口では大丈夫って言ってたけど、きっと大丈夫じゃない。このままアイツに支配されて、色んなこと我慢して生きていかないとダメなのかな?こんなことなら、いっそ、、、)



(死にたい!!!)



そう思った瞬間、私は深い眠りに落ちていた。時計は4時44分を指していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る