#6 譲れないもの-淘汰した記憶の中に-

守り抜きたいと思った。隣に並んで、笑う日々はいつまでも続くものだと漠然ばくぜんと感じていた。

しかし、それはいつだって唐突に終わりを迎える。

どれだけ酷い言葉でののしっても、どれだけ胃の中に溜まった不安を吐き出しても。時は止まることなく進んで行く。自分1人を置き去りにして、大切な何かを連れ去って。

守りたいのは、譲れないのは。……見つけた、者は。


​時の流れは残酷だ、なんてよく言ったものだ。君の居ないこの世界ほど、無意味なことも残酷なものも無いというのに。



「​───────…」

ゆるりとキングはまぶたを開ける。ギラギラと輝いていた先の場所と違い、人工的な光がその場を照らしていた。

メインストリートの電子掲示板にはミラーハート​─────雪白ゆきしろ鏡歌きょうかの個人情報が並んでいる。文字や画像だけで見る個人情報は、キングが体験した追体験の記憶よりも酷く冷めて見えていた。


「おかえり」

戻ってきたキングの目をしっかりと見つめ、いさみが話しかける。こちらを見つめる藍色の瞳をぼんやりと金色の瞳は見つめていた。

「うん」とどこか雰囲気の違う返事に対し、敢は心配そうに両手を伸ばす。武器を引いた時のように、安心させる為にその手は伸びたのだろう。しかし、それは反対から響くヒール音を聞いて止まった。

「おかえりKing!」

同じ程度の距離の反対側。カッカカと嬉しげに音を響かせてMr.Bon-Bonはキングを抱きしめた。抱き着かれても尚、ぼんやりとした様子でキングはちゅうを見つめていた。

「………」

行き場を無くした両手をそっと敢は下げる。包もうとした優しさは、この場には必要無かったのだろうか。

しかし、下げた手にそっと同じ色合いの黒い手袋の手が乗せられる。ぱっと横を見れば-mojito-が敢の両手に右手を重ねていた。

「モヒート……」

「………」

フルフルと-mojito-は首を緩く振る。それは今、あの2人に首を突っ込むべきではないと制しているようで。

少し困ったように……そしてどこかさびしげな表情のまま敢はキングを横目で見つめていた。


「やはり君は王者に相応しい!流石は僕の相棒…とっても誇らしいよ!」

まるで幼子おさなごをあやすかの様にMr.Bon-Bonはキングの後頭部を優しく撫でる。周囲からしてみればアバター身長・高……現実世界の身長で考えれば180cm超えの男2人が抱き合っているという状況に加え、片方はぼんやりとした目線のまま「あぁ…」と曖昧あいまいな返事を返しているこの状況はかなり異質なものであった。

パチ、とバニヤンとキングの視線が合う。ここに来た時と比べ、少し疲れきったような表情を浮かべる理由は連続して親交しんこうのあった友人達が居なくなったからか。

「…あ、乙乙〜〜おめ〜」

ヘラッとした乾いた笑みのまま、バニヤンはキングを見つめる。隣のコモモは心配そうに見つめていた。

「バニちゃん……」

「……コモたん……」

その瞳を、じっとバニヤンは見つめる。​───────それは、コモモにすがり付くような瞳にも思えて。

「コモたんは…ワタシを1人にしないでね…」

疲れた笑顔のままに見つめるその相棒の手をコモモは強く握り返す。

「そんな顔、しないで……」

自分自身も不安でいっぱいになりそうだが、相棒を気づかいコモモはそう告げる。それに対し、バニヤンはギュッとコモモに抱き着く。相棒を優しく撫でる事しか、今のコモモには出来なかった。



「なぁ」

明らかにその場の空気が変わる声が響く。ピリッと震える雰囲気を感じとり、数人は声の主へと視線を向けた。声の主……ろーゆーはぺたぺたとキングの方へ歩み寄って来ていた。

ピタッとキングの前へ止まる。先程まで熱烈ねつれつ抱擁ほうようを行っていたMr.Bon-Bonは既に離れていたため、かなり近い位置でキングの瞳を見つめていた。

「あのクソガキやったの、おめーだっけ」

「……あぁ…」

「……」

ろーゆーの問いかけにキングはまたぼんやりとした返事を返す。無言の時間が訪れたが、何かを察したのかREINが声をあげた。

「ろーゆー、やめ……!」

「!おいやめ…!」

「​───────、」

REINと何かに気づいた敢が声をあげたのと、ろーゆーがキングに掴みかかったのはほぼ同タイミング。確実にその顔面にダメージを与えるためか首元の金具下の布地を掴み、拳を振り上げるもキングの表情は一切変わらなかった。


「そこまで」

「っ!!!」

静かに声をあげたのは​───────カミサマだ。

まるで元からそこに存在していたかのように2人の間に立ち、後方の右手を高くあげて何かを握りめている。そしてその足元には頭を抱えてうずくまるろーゆーの姿があった。

武器を引いた時に牽制けんせいとして行った緊箍児きんこじの締め上げとは比にならないレベルの痛みが彼を襲っていた。声をあげることすらも叶わないその痛みは、自身のうめき声すらも聞こえない程にガンガンと増していく。

「対戦相手以外との争いを私は許した訳ではございません。無意味な争いはおやめ下さいませ」

「大丈夫かろーゆー…!」

目を開けること無く淡々とカミサマは答える。蹲るろーゆーに駆け寄ったREINは「落ち着け」と小さく呟いた。

「………」

そんなREINに何か目でうったえるように見つめる。それは、今までとは異なる意味を示すような視線で。

薄々言いたい事の察しがついたREINは少し目を伏せた後、「立てるか?」と言って手を差し伸べる。あの時のように、しかし片側の光は無く。相棒に支えられるようにしてろーゆーは立ち上がる。確かに燃える殺意を隠すこと無くキングを見つめるも、彼はどこか上の空のままであった。


「でもまぁ、あなたもいつもと変わってしまいましたね」

どこか他人事ひとごとのようにカミサマは呟き、ちょいちょいとキングにしゃがむように片手で訴える。キングが少しかがめば、カミサマはすっと目を見開いて何か耳打ちをする。

「​───────」

「……えっ……」

ぺたんと両足を地べたにつけたカミサマは、にっこりとその黒い目を細めて笑っていた。黒い口から覗く尖った歯が、ギラリと光っている。

驚いたままのキングに背を向け、カミサマはぺたぺたと血の跡を残しながら電子掲示板の前へと向かう。「大丈夫か」と敢が声をかけるも、「うん」という気の抜けた返事だけが返ってきた。


「​───────さて、3試合目の勝者は毒属性 キングさんに決まりました」

先頭に立てばくるりと振り返り、いつもの笑みを浮かべる。背後のミラーハートの個人情報はトーナメント表の図へと変わった。

「次が前半戦の最後となります。後半戦は今までと変わらず、行わせていただきます」

「……後半はシードが1組ありますわね」

ぽつりと-mojito-が呟く。確かに画面の図​─────後半戦組の最後の枠は1試合目終了後はそのまま線が伸び、3試合目の準決勝に当たる場所にまで伸びていた。

「最後に選ばれた方が有利なのか…?」

「あら、分かりませんわよ。最後は最後で何かが起きるかもしれませんから」

敢と-mojito-の淡々とした会話が続く。

「起きる危険性は…まぁ……」

「どんな事も想定しなくてはいけませんわよ。………私達も、いつどうなっても良いように覚悟しなくてはいけませんわ」

「…………そうだな」

残る人数と関係性を考えても、相棒同士で当たる確率は充分にある。それは言わなくても分かっている事実であった。


「次が4試合目となります。次の勝者がキングさんの2回戦目の対戦相手となります」

「それでは参りましょう。……邪魔が入らないうちに」

ぽつりと低い声でカミサマは呟く。その冷ややかな視線の先にはとある人物が居たが、4度目の暗転が全員を襲う。パッと目を開け、消えた人物を確認すれば誰かの「ひどい」という小さな呟きが聞こえたような気がした。




「​───────……」

そっとその人物が目を開けば、その場は先程までと異なる景色であった。

自分が次に選ばれたのだと悟り、深く息を吐く。呼吸を整え、ゆっくりと瞬きをすれば脳裏に先程まで聞いていた声が響く。


「傘をお求めですか?止まない雨に濡れないための」

「……明日は晴れるから要らないかな」

「あら……ふふっ、明日あすなんて誰にも分かりませんよ」


カミサマはどこか嬉しげにその人物​───────REINの返しに笑う。カチャリと音を立てながらサブ武器であるサーチグラスのブリッジ部分をあげる。クスクスと笑うカミサマの笑い声が頭の中でよく響いていた。

「武器の説明に入る前に確認しておきましょう。願いの変更は?」

「無いよ」とREINはハッキリと告げる。「早い決断で」とカミサマは返す。

「『自分の居場所が在り続けること』、ですものね。この願いは早々簡単には変われませんね」

「そうだね…」

カミサマの問いかけに返しながらREINは素早く周囲に目を配らせていた。

(ミラーハートちゃん達の時とはまた違った会場だな…多分ここは玄関ホールにでもなる部分だろうけど……運動系か?少なくとも芸術の関わるような会館では無いな)

目視もくし出来る範囲内に垂れ幕のような物を確認する。文字こそよく見えなかったが『大会』と一瞬見えたことから何かの大会の会場であることは確かだ。

「メイン武器はライトセーバーとなります。ご想像の通り、フィクションの世界でよく用いられているような武器ですね」

「持ち手部分以外はほとんどがレーザー。触れれば焼き切れてしまいますが刀身に対して重量はかなり軽いので持ち運びの面だけで見れば拳銃、リボルバーと同レベル程度の有利さになりますね」

カミサマの説明を聞きながらもREINは周囲の観察をおこたることは無かった。

「サブ武器はこのままで良いんだよね?表示方法とか事前に知っておきたいな」

「サーチグラスについての説明ですね。1度の使用につき完全ランダムに相手の情報を3つ得ることが出来ます。しかし、その情報の真偽性しんぎせいは相手への先入観によって大きく左右致します」

「先入観…?」

「……色眼鏡を掛けたままでは、正しい判断を行えませんので。使用後は頭部にダメージを受けますのでお気をつけて」

「……なるほどね、そう来るか…」

REINは少し思考を巡らせる。「何かご質問はございますか?」とカミサマに問われれば「いや、大体は理解した」とREINは返した。

「かしこまりました。​───────只今ただいま、両者共に説明が完了致しました。試合開始の合図と共にスタートです」

しかし、REINの足元が青に染まることは無かった。

「今回は向こうが鬼の権利を握っております。勝利する為にはまず、権利を奪い取るとこから始めなくては」

どこか楽しげの声のままカミサマは説明する。REINはじっと自身の右手を見つめていた。

「では参りましょう。巡る思考も水の流れも止まることが無いように。……自分の生き残る為の策を、その中で見つけ出してください」

「それでは、ゲームスタートです」



ブザー音が響く。カミサマの声が聞こえなくなると同時にREINは立ち上がった。

(あと戦ってないメンツから考えれば可能性は誰だろう…敢くんとかtotoririくんみたいな圧倒的高ランクのプレイヤーとは出来るだけ戦いたくないけど…)

ぼんやりと考えながらREINは周囲の探索を始める。メイン武器を最初から出すことは不利であると考えたのか、しかしその手は強く握られていた。

(……1番戦いたくないのはアイツだけど…)

個人情報の文字色で対戦相手を知れるなら、戦う上で手っ取り早いのは1つの個人情報を見つけて直ぐに相手を探しに行くこと。鬼の権利を持っていないREINはまず相手を探すことから始めなくてはならなかった。

周囲に警戒しつつREINは先程見えた垂れ幕へと歩を進める。辿り着けば、達筆な文字で『第56回関西中学生空手道選抜大会』と書かれていた。

(文字は黒……これはヒントの扱いにはならないのか)

空手道…ということはつまりここはそういう会場になるのだろう。少し複雑な表情をしながらもREINは来た道を戻る。どういった場所かの把握は出来たが、これは個人情報では無い。


少し早足になりながらも、REINは途中に新聞ラックがあるのに気づいた。5段ある新聞ばさみには1部だけ新聞が挟まれている。

「………」

どこまでが個人情報のヒントになるかも分からない。気になる箇所を見つけたのであれば直ぐに確認すべきなのに。​───────何故か、それを躊躇ためらう自分がいる。

(落ち着け……落ち着け……)

ふ、と短く息を吐き、REINはその新聞を手に取る。かさりと音を立てながら、新聞を開けばある色で『オンライン新聞』の文字が見出しにあった。

『動機は?あまりにも残虐ざんぎゃくな事件』

凄惨せいさんなその殺害状況は、その場に居た者達にも深い傷跡として残った事だろう』

『母親は遺族に謝罪を』

「………」

眉間にしわを寄せ、REINはその新聞を閉じた。見えた内容からして、とある殺人事件の内容を取り上げた記事であることは確かだった。

(………いや、そんなはず………)

だとしたら“あの人物”は何故ここに選ばれた?これをしても尚、欠けた何かをおぎなおうとしているのか。

(………分からないな…)

信じたくないのか、受け止められないのか。当てはまる理由は幾つもあるが今はその全てから目を逸らしていたかった。

「……………探そう………」

嫌な予想を否定する為に。その新聞を少し雑にラックへ戻し、REINは歩を進めた。




「……あれ、ここ………」

ふと、REINは先程までと雰囲気の異なる場に自分がいることに気づく。同じ会場空間であることは変わらないのだろうが……会場へと続く廊下のような空間だろうか?

(“模した”なんて言ってたけどどちらかと言えばツギハギに近いな…)

場所と場所を縫い合わせるように。相手と自分の思い出を無理やり繋ぐようにしたこの空間は、どこまでも異質であった。

(……なら、オレの思い出の場所は………)

ピタと足を止め、REINは考え込む。選ばれるなら、きっとそれはでは無く​────……。

スっと視線を下げれば、床に何か文字が走っていることに気づいた。

『てか正直 信憑性しんぴょうせいに欠ける話よな』

ネオンの文字は真っ直ぐと進み、どこかへと向かっていく。1つその文字を見つければ、自身の後方から勢いよく文字の波が押し寄せる。

『マジで言ってんの?てかよくそれくらいで済んだな』

『年齢のせいだろ、正直そんな奴が世の中にいる方がこえーわ』

『会場近所だから怖いんだけど』

『ただのDQNだろ』

『最悪、これで絶対学校の評判も下がったわ。進路に影響出たらアイツのせいだろ』

「なんだ……これ……」

既視感きしかんの正体はどこかの動画サイトで似たような場面を見たからだろうか。流れるコメントがリアルタイムのものとは思えないが、全てある方向へ向かって流れていく。

『正直何考えてんのか分かんねーんだよな』

『アイツと絡む勇気ある奴いんの?』

『親の顔が見てみたいって本当こういうこと。どんな教育してんだ』

『草すら生えんわ』

コメントの波は突き当たりの角を曲がり、どこかへと向かっている。REINはその流れに急かされるように流れのままに歩を進めた。

(個人情報が、近づく程に変化するなら、)

数を見つけれた訳では無い。しかし、主張するこのヒントを無視することも出来なくて。

角を曲がり、見えたのは大きな両開き扉。コメントは更にその奥へと流れていき、戻って来ることは無かった。

肩で息をしながら、REINはその扉を見つめる。そこを開けば、二度と戻って来れないような気がして。しかし、その奥に向き合わなければならないものがある気がして。

少し躊躇い、どうか杞憂きゆうであれと願いながらREINは両の手でその重い重い扉を開けた。




開いた先に広がるのは一面の畳の景色。空手の大会なだけあり、そこは思い描いていたような景色のままであった。

二階建ての構造になっており、上は観戦席となっているのが見える。

(…………よかった)

やはり、あの考えは杞憂でしか無かったのだ。見えた文字も、きっとカミサマ側からの引っ掛けか何かだろう。

想像と異なる向こう側に安堵あんどし、REINはその場へと足を踏み入れる。​───────同時に、軽い音が響いた。

(………!)

無音の会場に小さな音はよく響く。トッ、と軽く何かがぶ音を聞き、思わずREINは右側へと逸れた。

直後、ダンッと強い音が響く。畳に幾らか吸収されたが、その音には確かな戦う意思があった。

ゆるりと重量に添い、その人物の装飾品が揺れる。ゆらりと立ち上がれば、先程までREINが立っていた場所の畳は大きくえぐられていた。

(………嘘、だろ………)

気の所為せいだと否定して欲しかった。バクバクとなる心臓の音すら、杞憂の1つであると肯定して欲しかった。

その人物がゆっくりとREINへ視線を向ける。

(なんで、どうして………)

咄嗟とっさのことに頭は最善の策を練ろうとする。その人物と視線が合う。

(よりによって、お前と)

首をゴキゴキと音を立てて…そして楽しげに、その人物は笑う。



​───────ふらふらと好き勝手に動き、味方も相手も翻弄ほんろうする。その場を引っ掻き回し、その盤面ばんめんをひっくり返す者。

その名は奇術師を指し、タロットでは愚者ぐしゃとも称される。タロットのそれは、まるで“彼”の為にあるようで。

そのトリックスターは高らかに笑う。ようやく、待ち焦がれていた場面になったのだ。

「よぉ〜〜〜、REIN」

赤い狂気の炎……ろーゆーの瞳は、しっかりとREINを見つめていた。

(なん、で…)

埋め尽くされる疑問に呑まれるように。REINはその瞳を焦点の合わない瞳で見つめ返していた。




「1回戦4試合目。水属性 REIN対炎属性 ろーゆーの試合となります」

最早慣れてしまいそうなその景色に思わず目眩すら起きそうだ。電子掲示板に映し出されたその組み合わせは明らかに意図したものなのだろう。

両者と交流のあった者ならば、2人がどれだけ信頼しあっていた相棒関係であったかをよく分かっているだろう。にも関わらず、初戦でこの組み合わせ……かつどちらの想い人も敗者となった今、この組み合わせほどこくなものは無い。

最早もはや誰も声を出すこと無く、その映像を見つめていた。



「っ、」

「んだァ?逃げんなよっ…!」

即座に向かってきたろーゆーの蹴りをすんでのところでかわし、REINは何とか体勢を保とうとする。躱されても直ぐにろーゆーは体勢を立て直し、構えに入る。こうして実際に“中の人物”と戦えば、それは確かに格闘技を習っている者の動きであることが無知でも理解出来る。

「逃げてるワケじゃ、ねぇよ…!」

一瞬の隙を見、REINはサブ武器を使用する。レンズ部分に一瞬のノイズの後、文字が表示される。


『その拳、触れるべからず』『一騎打ち』『相棒』

「っ、」

最後の情報に思わず足がもつれる。分かりきっているその情報は、ランダムとはいえ今1番見たくない情報であった。

そのもつれた足をろーゆーはすかさず足払あしばらいし、そのままREINは畳へと叩きつけられる。

「つっ……!!」

「はっ…!」

REINの上にまたがり、真っ直ぐに上げた如意棒にょいぼうをろーゆーは下へと降ろそうとする。『プレイヤー・REINをキルしますか?』とろーゆーの目の前に表示される。『はい』を選択しようとし、視界の端でこちらへ向かう脚をとらえた。即座に『いいえ』を選択し、軽々とその蹴りを躱す。そのままの勢いでREINから距離を離せば、REINも息を乱したまま何とか立ち上がる。

(ゲームの時と、全然違う……!)

今までのShadow taG内でのREINのプレイヤーレベルは78。一方でろーゆーのプレイヤーレベルは27。ゲーム内の勝率として見てもREINの方が高かったが、中の人間の身体能力が反映されるようになった今。状況は逆になっていた。

サブ武器を介しての攻撃をREINが躱す。ろーゆーのサブ武器使用によるエフェクトの影響もあり、映像越しに見ればそれはまるで炎が踊っているようで。

確かにろーゆーへサブ武器使用による制限はかかっていた。しかし、それを感じさせない程の力があるのか……又はそれを感じない程までにこの戦いを楽しんでいるのか。どこまでも楽しげな表情であった。


「なぁ、REIN」

おめー、本気出してんのか?と何度目かの拳を躱せば、ろーゆーはREINにそう問う。待ちがれるまでの相棒との戦い。REINとしても全力で挑んでいるつもりであったが、「勿論もちろんだ」と続く声はつむがれない。感覚の鋭いろーゆーは、REINがどこか本気になりきれていないのを感じていた。

「おめーもっと本気出せよ」

「お前との戦いで本気出してない訳が無いだろ…!」

「じゃあマジでこいよ、じゃねーとつまんねー!!!!!」

「っ…!!!」

聞き慣れた高笑いを耳にしつつ、REINは乗せられるままに1発を繰り出す。しかし、それは簡単にろーゆーに止められてしまった。

「よえーよ!!!」

カンッという如意棒の落ちる音を聞き、REINの視界には振り上げられたろーゆーの拳と燃える炎。

(……いっそ、諦めた方が)

そんな考えがREINの脳裏を過ぎる。躱すことの出来ない攻撃、そしてもし自分が相手を殺してしまった時のこと。迫り来る拳はスローモーションに見え、REINの頭にはどこかプツリと切れてしまいそうな程の細い細い考えしか残っていなかった。

(もう、その方がいいなら…)

ぼんやりと考えながらゆっくりと瞼を閉じようとした時であった。



「死ぬことで、あなたは目を逸らすのですか」

「………っ!」



機械の音声が頭に響く。それは、確かにカミサマの声であった。

直後、ろーゆーの「ッデエエエエェェーーー!!!!」という叫び声が響く。パッとREINの手を離し、自身の緊箍児の部分をろーゆーは強く抑えていた。

「ジャマすんじゃねーよクソアマ!!!!!」

ふらふらとした足取りのまま、空へと叫ぶろーゆーへはカミサマの違う声が聞こえているのだろう。メイン武器での攻撃がどうこう言っている様子から、何やら話し合っているようであった。

(……!今しか…!)

その隙を利用してREINはろーゆーから距離を取り、体勢を立て直す。同時にメイン武器を願えば、手元に青いサークルが現れる。持ち手をしっかりと握り、引き抜けばパチパチと音を鳴らしてそれは姿を現した。

メイン武器を出したからと言って、鬼の権利をREINが持っている訳では無い。どちらかと言えばこれは“本気”の意思表示に近かった。



(だからと言って……オレは、戦えるだろうか)

1度切れかけた糸を引きるようにREINはぼんやりと考える。落ちた思考は深海に沈むように暗い方へと向かっていく。

この後のこと。もし、上手いこといってろーゆーをキル出来たとしても。残された自分に一体何が残るというのか、何の為に生きれば良いのか。

こんな時に限って過ごした思い出ばかりが思考を埋める。出会った時のこと、共に遊んだ日々。言い合う時もあったが、どれもが自分にとって大切な思い出で。ぐるぐると渦巻うずまく感情のせいか、上手く力が入らない。

(オレは、もう、何の為に戦えば…)

震える始める手を隠すように自分自身の手をREINは重ね合わせる。短く息を吐いても、考えが統一されることは無かった。

(オレは、また…1人に…)


そんなREINの状況を察したのか否か。カミサマからの制限が落ち着いたろーゆーは「なぁ」と声を掛けてきた。

「ぅれ、おめーといて けっこー楽しかった」

「!」

予想して居なかったろーゆーからの唐突な告白に思わずREINは目を見開いた。

「おめーの横にいて楽しかったわ。なんてーの?こーゆー時」

それは今までと変わらずに。当たり前のように疑問を相棒へと投げかけてきて。その言葉に思わずREINは我に返る。

(何考えてるんだ、オレ)

たった1人の、唯一無二の相棒との真剣勝負にも関わらず自分自身のことしか考えていなかったのだと今更になってREINは気づく。

(また1人に、なんて…結局オレはオレのことばっかりだ)

「オイ、おめー聞いてんのかよ?」

「……きいてるよ」

震える声で感情を悟られぬように、いつも通りの“お前の相棒のREIN”として返すように意識する。しかし、溢れそうになる涙を隠すことに必死になりいつものような冷静な振る舞いはとうに無くなっていた。

涙を流してはいけない。大切な相棒を前に流す涙の無意味さや失礼さは充分理解している、なんて立派な言い訳ばかりは決まっていて。

(だって、オレがそうするなんて…情けなくて、こいつに見せる訳にいかないっしょ)

「大丈夫、聞いてるって…っはは、オレ、最後までお前にダサいとこ見せるところだったなぁ」

震える声のままにREINは笑って誤魔化ごまかす。それに気づいているのか、互いが生殺与奪せいさつよだつの権を握りあっているにも関わらず……ろーゆーはいつもと変わらぬ表情でこちらを見つめていた。

「………お前もあの子も、方向性は違えど良くも悪くも真っ直ぐでさ…ほんとに似てるよ」

「……あのクソガキのことか」

「……相変わらずの口の悪さだなぁ」

軽く笑えば、その場にはいつもと変わらない2人の空気が流れ始める。しかし、先程までとは異なりREINの手にはしっかりと力が入っていた。

こちらを見つめるその視線に安心感を覚えてしまうのは、REINにとってそれだけ気を許していたことを顕著けんちょに表していた。​───────しかし、それはろーゆーにとっても同様で。

REINはぐっと力を入れ、涙を堪える。今度はしっかりと視線を合わせ、その眩しさから決して目を逸らさぬように。

「ろーゆー、オレは、勝つよ」

回らぬ頭で必死にREINは言葉を紡ぐ。その言葉を聞き、ろーゆーは何も返さなかったがREINには言葉が無くともそれは「トーゼンじゃん」と言いたげな表情であることは理解出来ていた。

互いにメイン武器を構える。ピリピリとした空気感を肌で感じながら、視線が交差する。

一呼吸置けば、その決意を固める。何も変わらない普段通りの会話のように。他愛もないあの日々にするりと別れを告げるように。


またな、相棒


永遠の別れを告げれば、1歩前へと足を出す。

炎と水。赤と青。武道と知性。対になるそれは、混じり合うことなど無いとすら思っていたそれは。​───────今、全ての終わりを迎えようとしていた。




メインストリート電子掲示板前。息を呑むようにその場に居る者全員がそれに釘付けになっていた。

チラリと一瞬、敢が隣の-mojito-に視線を向ける。じっと目を見開いて見つめるその相棒の横顔は初めて見る表情で。

(……“中の人”…か……)

画面越しかつアバターを介して……音声だけしか知らなかった今まで。画面の向こうでは皆こんな表情をしていたのだろうかと敢はぼんやりと考える。そして画面へと視線を戻せば、その戦いの決着はついていた。



ドサッと前のめりに倒れたのは​───────REIN。そしてその直後、ろーゆーが静かにひざを地面につけた。

状況だけを見れば、ろーゆーの勝利だろう。しかし、ある事実にリルは気づき小さく呟いた。

「…………メイン武器、が……」

そう。ろーゆーの手には握っていたはずのメイン武器が存在していなかった。

畳の上に落としたのかと思ったが、映像で確認出来る分にはそれは見当たらない。しかし、REIN側はしっかりとメイン武器であるライトセーバーを握っていた。

「………影の色がちげぇよ」

小さくラリマーが呟く。え、とリルが小さく声を上げれば「ん」とラリマーは視線を画面から逸らすこと無くあごで指し示した。確かに確認すれば、ろーゆーの足元の赤い光は消えていた。倒れ込んだREINの影は確認出来ないが………この全てを踏まえて、考察するのなら。

「じゃあ、勝ったのは……」

「………」

そのリルの小さな問いかけにラリマーが答えることは無かった。


はっ、とREINは息を吐く。同時に押し寄せた感覚に耐えるように、何とか立ち上がる。

一瞬の速さの違いであった。メイン武器を真っ直ぐに伸ばそうとしたろーゆーの攻撃を一瞬 かがんで躱し、足元の影を踏む。伸ばした如意棒を引き、それを持ち替えてろーゆーは真っ直ぐREINの背を貫こうとするもそれよりも速くにREINの攻撃がろーゆーに当たった。同時に如意棒も消え、そのまま振り降ろすことになった拳が背に当たってREINは倒れ込んだ。痛みこそあるが、やはりこれで死ぬことは無いのだろうとぼんやり感じていた。

ふらふらと立ち上がるREINとは対称的にろーゆーは静かであった。話せなくなるほどの致命傷ちめいしょうだったろうか、とぼんやり考えれば「あーーーー……」と呟く声が聞こえた。

「腕…うごかねーー………」

「ろーゆー……」

ゴロンと仰向けに倒れるろーゆーの顔をREINは覗き込む。その心配そうな瞳に対し、「あ?」とろーゆーは不服そうな声を上げた。

「​───────ハ????? 死なねー、つの、………おめーの横ァ………ぅれだかんな!!!」

「あのクソアマッ、に……オレーマイリしてくるわ、 ヒャヒャヒャヒャッ……」

いつもの高笑いをするも、それに勢いは無い。何かを言おうとし、ぐっとREINは口をつぐんだ。ぼんやりとその異なる両の目をろーゆーは見つめていた。

「……なぁ、さっきのやつ………結局なんてーの……」

「……そう、だな……」

そっとろーゆーの傍に座る。いつものように、相棒の問いかけにREINは震える声で答えた。

「『ありがとう』でいいんじゃないか…?」

「…………フウン」

一瞬の沈黙の後、ろーゆーは笑った。それは、いつもとは違った……子供のように無邪気な笑顔で。


、な。REIN」

「っ……オレの方こそ……、ありがとう、ろーゆー」


涙を流さぬように。溢れる感情を隠すように。心からの感謝を相棒に伝えれば、ろーゆーの口角が少し下がったことに気づいた。……それが意味することは、たった1つで。



ぐっと息を呑み込む。最後まで、相棒に情けない姿なんて見せてはいけないから。

どれだけの想いを抱えても、君に素直に打ち明けることは遅くなってしまった。

憧れだった、素敵だと思った。​───────大切だと、思った。

誤魔化して、目を逸らして。自分の気持ちなんて理解出来てるはずなのに。

伝えそびれていた感謝は最後になってから素直に伝えることになってしまった。

REINは前を向く。今、後ろを振り向くことは相棒にとって1番失礼な事だと理解しているから。


「さようならは、済みましたか?」

「……君…」

気づけばそっと隣に立っていたカミサマに少し驚きながらも、REINは冷静に返す。その様子に少し驚くようにカミサマは「おや」と瞼を閉じたまま返した。

「本当に傘は必要無かったようですね。私の杞憂でしたか」

「カッコ悪いオレを、見せる訳にはいかないっしょ」

クスクスと笑いながらぺたぺたとカミサマはろーゆーの元へと向かう。しゃがみこみ、あちこちの脈を確かめるようにろーゆーの身体に触れる。後ろからそれをじっと見つめれば、「確認致しました」とカミサマは告げた。

「おめでとうございます、今回の勝者は水属性 REINさんです」

神による勝利の宣言をぼんやりと聞く。「武器トレードのご利用は?」と問われ、少し迷った後に「しない」と返す。

了解の意を示したカミサマは、「また私は忘れるところでした」と呟いた。

「忘れる…?」

「はい。これは、忘れてはいけない《めいれい》なので」

そう言ってカミサマはREINの手元にとあるアプリのアイコンを表示させる。驚いて少し指先を動かせば、それに思わず触れてしまって。刹那、REINの中に大量の情報が流れ込んで来る。



最初に見えたのは自分を遠巻きに見つめる周囲の人々。両親と思われる人物も自分を遠巻きに見つめているのが分かった。

ずっと夢中になれるものが無かった。何をやっても無頓着むとんちゃくで、“楽しい”とは無縁の生活を過ごしていた。両親からの勧めか、様々な習い事をさせられる。目の前には与えられた物の山。……それも直ぐに飽きてしまったが。

しかし、唯一惹かれるものがあった。​───────それが空手である。試合中の身軽さが自身の身体能力と影響するという話に今更合点がいく。元々体術に対して高いポテンシャルを持っており、加えて空手を習い始めてからそれはめきめきと力をつけていった。

毎日笑うようになり、静かな性格から少しだけ明るい性格になったようにも感じた。

実力を身につけ、迎えた地方大会。安堵した両親の表情を背にし、自分の手元を見つめる。

………それは、べったりとした赤黒いで。自身の下にいる何かにその拳を振り下ろす。何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。止めに入る人物の顎下を殴りあげ、そしてまた繰り返す。

嫌気を覚えそうなその感覚の中、ふと冷静になる。……コイツ、誰だっけ?

誰かに取り押さえられるも、笑いが止まらなかった。同時に気づく。惹かれていたのは“空手”では無く​───────“暴力”である、と。

その後過ごした場所は少年院か。しかし、過ごしても尚得る物など1つも無かった。

場面が変わる。……これは、Shadow taGのゲーム画面だ。

こちらを見るアバターには見覚えがある。それは自分自身​───REINだ。いつかの勝負の記憶だが、軽く笑って返す自分の声が聞こえる。視点が切り替わり、そこに映った姿は……。

「あぁ、ライブね。何?アンタも興味あんの?毎週金曜にやってんのよ。…リクエストがあんなら特別に歌ってあげようか?」

「リクエスト?なにそれ?」

そう問う質問にどこか呆れたように返すミラーハートの姿があった。


はっ、と意識が戻れば目の前のカミサマは目を開いてにっこりと微笑んでいた。

「なんで…」

決着がついたのなら、個人情報の公開は必要無いはずだ。それなのに、何故?

疑問を口に出せば、カミサマは両手を口元に当てて笑う。

「個人情報の漏洩ろうえいって、どれほどの罪で考えられるのかな」

「……は?」

「意味なんて無いかもしれないよ。最初から言っているじゃないか……伏線とか、難しいことは考えるなよって」

「これは、​─────の話なんだから」

その部分だけが上手く聞き取れない。くらりとゆがむ景色の中、REINは何気なにげ無くサブ武器を起動した。……そこに表示されていたのは。

「………“作り手”……?」

小さく呟き、そっとREINは目を閉じる。最後に見えたのはこちらをじっと見つめるカミサマの姿であった。





これまでを振り返っても、つまらない日々だった。

(ババアの話も、センコーの話も、なんもかんもつまんねーなって思ってた)

遠巻きに見つめてくる他人を振り返っても、残ってる記憶などほとんど無くて。

(あ、でもメシはスキだったわ)

残る朧気おぼろげな記憶を繋ぎ合わせれば、まともなものにでもなっただろうか。

何がきっかけだったか。幾つかこなしたうちの1つにこれまで感じたことの無かった高揚感こうようかんを覚えた。

(“暴力”ってヤツ、マジ楽しい!!)

幼子のように単純な思考回路だった。楽しいと感じたそれに、ズブズブとのめり込んで行く。汚れた自身の拳にある“武道”という誇りの重さではなく、その先の“暴力”を見つめていた。

少年院にいた5年を振り返っても、得られたものなど言うまでもない。

腫れ物扱いの日常の中、見つけた非日常の日々に快感を覚え始めていた。画面越しに見るきらびやかな光景では無く、その向こうの人物との対話に。

「あぁ、ライブね。何?アンタも興味あんの?毎週金曜にやってんのよ。…リクエストがあんなら特別に歌ってあげようか?」

こちらに問うその人物に疑問の声を投げかける。

「リクエスト?なにそれ?」

「はぁ…。わかったわよ」

どこか諦めたようにその人物は返す。んー…と小さなうなり声を上げ、「あ」と何かを思い出したように呟いた。

「…じゃあ、私の好きな歌…。といっても10年くらい前の曲だから、アンタが気にいるか知らないけど…それでもいい?」

それでも良いと感じた。いつわっている姿より、ありのままでいるその姿にかれていた。

「おめーがいつもフリフリやってる ライブ?アレよりよくね?」

「…そう…?」

「でもあのライブも私のやりたい事でもあるから続けるけど」

鮮明に残るその記憶を辿れば、確かに過ごした日々を思い出して。

「アレはきめーけど ソレはおめーってカンジ」

「ぅれはソレのがイイ」

素直な気持ちを告げれば、向こうから少し遅れた返事が返ってくる。

(んなこと初めてだった)

(次が欲しくなった)

それは確かに、暴力なんてものじゃない『楽しい』だった。過ごした日々が、抱えていたこの執着心の名前が。全て全て自分の中ですとんと納得のいくものに変わっていく。

譲れないものが、確かにここにあった。変わらない日々の中に、確かに正しい変化が起きた。



(キョーカ、だったっけ。おめーの『うた』、また聴きてーな)

かすむ意識の中。ろーゆーは1人静かに彼女を思い出し……そして、静かにその炎を消した。

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