第11話 合同練習開始
残り十日、個人のスキルアップはもう各自でやってもらうしかない、今日からの十日間はパーティーの連携に焦点を当てる。正直言って時間は少ない、だからこそ追い込む必要がある。
そして今日からは朝の授業の後に、
なんで
僅差な青銅組じゃなくてその上の白銀組と一緒に授業をする事で上の実力を見せつけるんだ。
「緊張するねぇ」
「わ、私は初めてのパーティーなので足引っ張るかもです」
「それにしても白銀組は殆ど顔ぶれが変わってないね」
「それほど
合同練習は生徒数が増えるため、訓練棟ではなく学園外の私有地で行われる。
森に囲まれた大きな広場、外と遮断された場所という点では学園内と変わらない。
ここは四人パーティーだけがが集められている。それぞれのメンバー構成は似通っていて、
「アッシュ君、あそこにいる長身の彼は覚えていた方がいいよ」
マシャットさんが指さす方を見ると、そこには眼鏡をかけた白髪の男子生徒がいた。装備は戦士科では無い、それを抜きにしても強そうには見えない、貼り付けたような笑みで目は糸のようになっていて、何処かやる気のなささえ感じるほど覇気がない。
「どう言った生徒なんですか?」
「あれは天才、黄金組に行ってない事がおかしい位の軍師だね」
「軍師、だから強そうに見えないのか、支援科ですか?」
「その通り、彼のパーティーは負けない……でも何故か上に行かない、噂では辞退しているって話もある」
一体どれほどの実力なのか気になってきた。そして同時に才能がありながら上を目指さない所に腹が立ってきた。
「よーし全員居るな、今日は初日だからパーティーのメリットとデメリットを肌で感じてもらう……なので鉄組と白銀組の模擬戦をする」
いきなり現れた先生が放った言葉に周りの鉄組生徒は動揺を露にする。いきなり上位クラスと模擬戦と言われたら戸惑ってしまうのも無理はない。
でも俺としては願ったり叶ったりだ。
「みんな、この模擬戦絶対勝つぞ」
「当たり前っしょ」
「緊張するね」
「頑張ります」
先生たちがランダムで対戦表を組み、それぞれ対戦の順番が決まっていく。
俺たちのパーティーは三番目、相手はあの軍師ではない。
順次対戦が行われていく、と言っても殆ど入学したての
経験も実力も差がありすぎる。
「いよいよ俺たちの番か」
「はぁ……おめー達が俺様の相手か?」
「ん?」
いきなり話しかけてきたのは俺たちの対戦相手、岩のようにがっしりとした大きな体躯、顔から頭にかけてターバンを巻いてる。その隙間から覗いてくる目は鋭く、威圧感を放っている。
「あんまりナメないでよね、俺ちん達強いよ?」
「あーはいはい、そういう言葉は鉄組より上に行ってから受け付けるから、さっさと終わらせよーぜ」
何をしに来たのか結局わからなかったが、喧嘩を売りに来たという事は理解出来た。
売られたなら買うまでだ、そもそもこんな所でつまずく暇はない。
「うちのモンが失礼しました、気ぃ悪くせんといてな」
「あ、はい」
今度はさっきの男のパーティーメンバーと思われる女生徒が深々と頭を下げて立ち去っていく。このパーティーはターバンがトレードマークなのか、彼女も頭に巻いていた。
「調子狂うな」
「関係ないよん、勝つことには変わりないんだから」
「そうだね、僕達はやれることをやるだけだから」
「そうですね」
スタート地点まで移り、先生の説明を受ける。
今回のルールはパーティー内から一人を選びその人を守護対象として守りながら、相手の守護対象に攻撃を当てる。
攻撃と言っても指一本でも触れればその時点で攻撃判定となる。つまり守護対象には何も触れさせるなという事。これが貴族や王族の護衛と考えれば納得のいくルールだ。
そして守護対象と選ばれたメンバーは移動と会話以外の行動全てを制限される。つまり戦闘に参加出来ない。
「誰を守護するか……迷いどころだな」
「普通に考えて俺ちんかアッちんかな?」
「僕とエリナ君じゃダメなのかい?」
「私は攻撃なんてからっきしですし、むしろ守護対象に選んでもらった方が」
「二人はこのチームの魔法と回復を担当してるんです、つまり遠距離攻撃と後方支援、遠距離は牽制になりますし、目くらましにも使える、活用しない手はない……回復は言わずもがな重要だ、エリナさえ無事なら俺たちは何度でも戦える」
だがエリナが完全に後方支援として戦闘に参加しないと人数不利は否めない。そして俺かクルーサを守護対象にしたら攻撃面で不安要素しか残らない。
「アッちん、俺ちんが引き受けるよん」
「でも、それだと」
「俺ちん逃げ足だけは速いし、攻撃を受けなきゃいいっしょ? それにアッちんは強いから俺ちんが居なくても一人で前衛を務められるよ」
「そろそろ時間だよ、どうするアッシュ君」
「わかった、今から簡単な作戦を立てる」
クルーサを守護対象に選び、そこからチームの動きと作戦を手短にみんなに伝える。正直言って回復術士がいるから有利だとか、攻撃役三人を揃えれば戦力に余裕があるとかそんなことはない。どんな編成をしても相手の方が上手なのは間違いないんだ。だからこそ俺たちは少しでも食らいつく、一瞬の隙をつくしかない。圧勝はいらない、辛勝で十分だ。
「相手は
「どんな怪我も私が治します」
「僕が敵を近づかせないよ」
「俺ちんは逃げ回る!」
先生の魔法が上空で光っている。スタートの合図だ。
フィールドはこの大きな森全体。
「行くぞ」
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