第36話 ダンジョンと着ぐるみ

『なぁMASTER。どこまでなら壊していい?』

“どこまでなら壊していいって、勝てるんなら限界まで被害は抑えてくれ。じゃねえと、今までここに住んでた人たちがかわいそうだ。”

『ヒヒっ!了解任せろ!』


[オートモード発動。これより、着ぐるみの自律を容認します。]


『行くぜデカブツ!俺の力、とくと味わいな!』

結構こいつも好戦的なのかな?だいぶ嬉々としてるように見える。


ゴーレムには自律する事ができない、基本他律的な生物だ。命令は絶対。己の身が滅びるその時まで稼働し続ける。そしてこのゴーレムには事故修復能力がある。

つまり、短時間で一気にバラさ分解しなければ倒せ無いという事になる。

通常、こんな物を相手にした時、逃げるのが最適だろう。だが、相性という物はある。それがこの“トラのたっちゃん”だった。


『《剛爪》!』


手にあった柔らかそうな爪のパーツが伸びる。元の質感はなく、そこにはただ触れるだけで怪我をするような危険な刃物があった。


『ウラァ!』


それを横薙ぎに振るう。

すると、石と金属を当てた時のように、嫌な音はしなかった。


コツ。


そんな音一つで、両対の腕を切り落とした。

それだけでは終わらなかった。


『《加速・二重》』

そう呟くと、姿がブレた。


『音ですら遅れてやってくる………ってね。』


カカカカカカカカ。

圧縮されたような音が聞こえる。人によっては不快感を煽るような音だ。

その音が聞こえた時には、もうすでにボロボロになったゴーレムの姿があった。


___________________________________


SIDE:ミナ


「すっごい………格好はあれだけど……。」

あれ……『着ぐるみ』……だよね……?

あんな能力なかったはずなのに……。何があったの?


一瞬にしてゴーレムが瓦礫の山になった。その事実を受け止めるのに時間はかからなかったけど、なんで着ぐるみがあんな進化を遂げているのか分から無い。


「前はってあんなにおばさんたちに言われてたのに……。なぁんだ……。強いんなら早く言ってよ……。」


あんなに心配したボクが馬鹿みたいじゃないか……。


「でも、まだ終わりじゃないみたいだね……。流石にダンジョンを核にしたゴーレムは一筋縄には行か無いかぁ……。」


___________________________________


???

「………………………う……お………あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああるううううああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

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