第23話 音の正体
「こっち!後少しだよ!」
「お前足早いんだなぁ……。鍛えてるのか?」
うん。この子の年齢を考えれば十分すぎるほどについている。冒険者やってそうだけどなぁ…。
「先に言っておきますけど、僕が動かなくなったらそこが限界って事でよろしいですか?」
「おう。了解。」
そんなに嫌な音なのか…。まぁ兎人族は足だけじゃなくて耳もいいって言うしな。
「もうそろそろ………近づいてきてます!」
「オーケーこの辺りだな…。というより……。」
この場所……走っている途中から何となく分かっていたが……。
「これってやっぱり……ダンジョンの中から聞こえてるんじゃないのか?」
「……可能性は……高いと思います。音源は……上の方だと思います。ただ、どこの階層からなっているかは…流石にわかりませんでした。」
「いや、それは仕方ねぇから大丈夫だ。」
「後もう少しだと思うんですが……。っ!ぅぅううううううう!!!!」
「ここら辺からか………こっから先は俺が行く。お前は先にギルドの方に帰っとけ。そんでギルドマスターに伝言しておいてくれ。」
「…な……っにを……ですかっ!」
「『あんまりにも遅いようなら、迎えにきてくれ。』頼んだぜ。」
俺はそう言い残して、一気にダンジョンに向かって走りだした。
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今僕はまたギルドの方に走っている。二回目で少ししんどいけど、そこまで苦ではない。ただ伝言を忘れないようにしている。運動しながら考えるのはあまり得意ではないけど、そんな事を言える状況じゃないと思うから。僕の本能はこういう時に本当によく予想を的中させてくる。その本能がやばい、と告げているのだから恐らくとんでもないことになると思う。そう確信している。
それにあの一瞬、なぜか一瞬だけ。ギルさんが死地に向かう兵士ような顔をしていたんだ。
………もしかしたら死ぬ人が相当出るかもしれない。
僕はその未来が怖くて、震えながら走った。
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「はぁ…はぁ…はぁ……後……ちょっとっ!」
結構走ってきたからかなり息が上がってきてる。しかもこの音………やべえな。ここ辺りに入ってから聞こえ始めたが……なんだ?これ。なんか本当に……普通の音じゃねえな。急がなきゃな。
前みたいには、なりたくねえからな。
「…はぁ…はぁ…はぁ……。やっと……ここまでっ……。ぶっゴホッゲホッゲホッ……。ふぅ……。ゴホッ…。ふぇぇい…。やるか。」
俺はダンジョンの中に入った瞬間すぐに階段に向かって駆け出した。
(多分この上に……なんかある……。音はだんだん近づいてきてるし。これは何かきな臭くなってきたぜ…?)
こんな音、モンスターたちが出すような音ではない。しかも、さっきからモンスターたちと一度も遭遇していない。
こんな事、人為的要因以外に考え付く物がない。基本的に、モンスターに知性を持っている奴はいない。この前の転移系の魔法を持った奴はいたが、たまたまなだけであって普通はそんな知性を持っていない。統率する奴はいても、下の階層、上の階層などの魔物を集めるなどすることはない。じゃあ一体これは何が起こっているのか?
「まさかとは思うが……あの事件の関係者だとしたら…?………チッ!それなら尚更急がねえと。あん時の因縁、ここで潰さなきゃなんねえしな!」
俺は走る速度をあげた。
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「あの…一度ダンジョンに立ち寄ってもいいですか?」
「え?いいですけど…なんでですか?」
「少し……懐かしい匂いが…。」
「?」
よくわからないが…時間がまだ稼げそうだな!早く堕とさなければ!
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