最強の光剣使い
アユムはコックピットの中で、無傷の〝施しのアウグストゥス〟を見上げていた。
敵はあまりにも強大だ。
「急造の銃じゃ利かないな……」
『どうしますか、艦長アユム。赤龍をぶつけますか?』
「いや、ちょっと疲れるけどアレをやる。ZYXのエーテルリミッターを第一まで外してくれ」
『地球を救った力を間近に感じることができて光栄です』
「俺本人が救ったわけじゃないさ」
七面天女は、ふふっと笑った気がする。
『第一エーテルリミッター解除――神威機士の赤き牙に祝福を!』
その瞬間、アユムの身体から莫大なエーテルが放出される。
戦艦やZYXのエネルギー源となっているエーテルコアと同質のもので、レッドファングに流すことによって機体のパワーを爆発的に上げることができるのだ。
ただし、エーテルコアと違って不安定であり、力を出し続けられるのも短時間だけだ。
いわゆるスーパーモードというやつである。
「いくぞ、斬り刻まれる覚悟は済んでいるな!」
〝施しのアウグストゥス〟の熱線がレッドファングを襲う。
レッドファングは瞬時に光剣以外の武装を切り離し、強化された機体で超高速移動をした。
切り離された武装だけが熱線に晒されて誘爆する。
「くっ!」
急加速をかけた機体は軋み、鋼がねじ切れるような音が聞こえてきている。
簡易重力制御では殺しきれないGがアユムを殴りつける。
それも慣れているとばかりに口角を吊り上げて犬歯を見せ、レッドファングを敵へと向けてブーストさせる。
その手にあるのは光剣一本だけだ。
「そんな小さな光剣一本でどうするんだ、と思って油断してるな? だが――」
アユムは身体の中から湧き出てくるエーテルを、レッドファングの右手にある光剣に集める。
光剣は輝きを増し、天を突くような光の柱サイズになった。
「あいにく、俺は光剣しか能が無くてね!!」
超高速移動+天を突くような光剣。
それは一国を滅ぼした、超巨大なベヒーモス型の大災害級〝施しのアウグストゥス〟でさえ――敵ではない。
「大罪を斬り割け!
瞬間移動にしか見えない速度で、単純に七回斬りつける。
ただそれだけで相手は脚を、腰を、胴を、首を――切り落とされ地に伏す。
単純に、ただそれだけで強いというのはどうしようもないのだ。
ここに大災害級〝施しのアウグストゥス〟の討伐が完了した。
「メッチャ疲れた……」
レッドファングは負荷に耐えきれず、ダメージ吸収の特殊装甲がボロボロと地面に落ちていく。
赤い装甲が剥がれていき、黒い骨格フレームが見えている。
それは不思議と傷痕のように痛々しいとは思えず、勝利の勲章のようだった。
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