閑話 好きな男の子1
私には好きな男の子がいます。
それは隣のクラスの赤穂勇気くん。
赤穂くんはそこまで目立つ男子ではなく、運動も勉強も普通……だと思います。
でも私はそんな赤穂くんが好きです。
いつからかと聞かれると、わからないです。
気がついたら好きになってしまいました。
彼と初めて会ったのは確か私たちが小学6年生、彼が修学旅行で京都に来ている時……でしたね。
まぁ、すぐ別れることになったので彼のことは忘れようとしてましたけど。
でも、中学生になって東京に引っ越し、そこでまさか彼と再会できるなんて……想像もしてなかったので当時はものすごく驚きました。
話そう……とは思ったものの、中学では少ししか関われず、結局高校生まで引きずってしまいました。
他の人には普通に話せるのに……なぜ彼とは話せないんだろう。
このことを唯一の親友である美海ちゃんに相談し、いろいろなアプローチをかけるも失敗し続け、気がつけば高校2年生になっていました。
異変が起きたのは始業式の次の日、
「もう、高校2年生だよ! やばいよ! 勇気くん誰かに取られちゃうよ! 花音!」
「それは嫌です!……あ、明日こそ頑張ります!」
「そのいきだよ! じゃあ部活行くからまたねー!」
この何回したかわからない、やりとりを終えいつも通りに私は帰宅します。
(はぁ……結局今日も話せなかった……赤穂くん……)
駅に着いた……その瞬間でした。
「……!?」
景色が歪み、二重に見える。
これが立ちくらみというものでしょうか。
思わず地面に座り込んでしまいました。
「君、大丈夫……?(……よく見ると結構かわいいな、ぐへへ)」
大学生、でしょうか?
顔が整ったお兄さんが助けようと私に手を伸ばします。
「あ、ありがとうございま……きゃっ!?」
その時、
彼の背後には黒く赤い色が見えました。
それは変形して人の形をし、ニタニタと笑っているように私には見えます。
気味が悪く、思わず声が出てしまいました。
「ちょ、ちょっと、どうしたんだよ、嬢ちゃん……?」
「す……すいませ……!?」
ふと近くの店のガラスに映り込む自分を見てみると……紫。
集まる視線、周りを見ると大勢の人に見られています。
普段なら、こんな大勢に注目されると顔が赤くなると思いますが……状況はいつもと違く、私は青ざめていくのを感じました。
周りの人たちにも黒いモヤが見えるからです。
全ての影は人の形をし、ニヤニヤとこちらを覗き込んでいます。
(これは……一体……)
そんな中、ひとつだけ光が見えます。
周りの黒い影が大きすぎるのか、やけに光り輝いて見えます。
(あれは……小さい子ども?)
その時、1つの恐ろしい仮説が私の中に浮かび上がりました。
これは……人の内面を色で表しているのでは……と
確証はない……けれどつい浮かび上がってしまった1つの仮説。
鼓動が速くなり、背筋がツーッと冷たくなるのを感じる。
「……ちょ、おい!」
気がつけば駆け出していた。
「はぁ……はぁ……」
どこを見ても、黒、黒、黒……たまに明るい色が見えるが、それは全て子ども達。
逃げても逃げても、どの人も黒い。
怖い。怖い。怖い……。
「うわっ!」
曲がり角、誰かとぶつかってしまいました。
男性の方のようで、恐怖からか謝ろうとしても声が出ません。
「すいませ……ん」
(……この安心感のある声は……)
そこには、私の大好きな彼がいました。
背後に見える色は紫で私と一緒です。
「姫野花音……」
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