第18話 結末
いきなり走ろうとしたからだろうか……思うように動かせない
「う……ぐ……」
なんだ、これは……もしかして、血を流し過ぎたのか?
立ち上がり、また走り始めるも、視界がふらふらとし、走りにくくなっている。
「やっと効いて来たのか……」
「効いて来た……?」
(奴は俺に何かしたのか……?)
「軽めの毒を塗ったのさ……ちょっと全身が痺れるくらいのな、ったく、手間かけさせやがって……」
毒……聞き馴染みのない言葉に、勇気はかつてないほどに冷静さを失う。
言葉が出ず、顔が真っ青になる。
血の気が引き、背筋がすっと冷たくなる。
「いいね! その表情だよ!! ……苦しめよ! 俺の女に手を出した罪だ!!」
ナイフを構えながら男は近づいてくる……
トン……トン……トン……
(やばいやばいやばい……死ぬ死ぬ死ぬ!!)
せめて少しで逃げようと手を前に出し、匍匐前進しようとするが……それも難しい
「ははっ!! 逃げろ逃げろ!! もう追いついちまうぞーっと」
男は楽しそうにケラケラ笑う
トン……トン……トン……
あと少しで死ぬ……勇気がそう覚悟した時だった。
「こっちです!!!」
女性の声が聞こえた。
女性の声が合図か、複数の足跡も聞こえる。
「……警……察?」
勇気はぼやっとした意識の中、近づいてくる大量の足音と、自分の視界から赤いものが消えていくのを感じていた。
あのうるさかった警報はもう鳴ることはなく静かになっている。
「あいつが俺の女を取ったのが悪い!!!」
「黙れ! とりあえず確保だ!!」
終わったんだ……
勇気はそのことを実感しながら意識が薄れていく……
「……もう……だから言ったじゃん」
近くには幻だろうか、今頃、部活動をしているはずの如月の姿が見えた。
目は少し赤くなっていて、涙声だ。
(幻……? ははっ、俺死ぬのかな……幻でも如月がいるなら、最後にこれを渡しておきたいな……)
「……これ……誕生日おめでとう……」
勇気はポケットから買ったばかりのプレゼントを出し、如月に渡す。
「……!?」
如月は驚いた顔になる。
まさかショッピングモールに来た理由が自分のためだと思わなかったからだ。
中を見るとタツノオトシゴ……
(覚えててくれたんだね……)
「……誕生日、明日だよばーか」
如月は嬉しそうにそう言った。
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