第13話 異常
えっ……!?
一瞬思考が止まりかける。
疑問が多すぎたからだ。
なぜ、みんなスローモーションなのか
なぜあの男がいるのか
なぜ刃物を持ってこっちに突進してくるのか……
訳がわからない。
体が痛い。
警報がうるさい。
結果、勇気は反射的に果物ナイフを避ける。
スローモーションだったこともあり、避けるのはとても簡単だ。
少し余裕が出たからか、勇気は気づく。
自分の上にあるカウントが赤く大きくなり、スロットのようにいろんな数字へと回っている。
……ただ、それは俺だけではなくて周りも同じだ。
「きゃああああああ!!!」
3秒ほど経つと、周りの動きが元に戻り、女性の叫び声が響いた。
それは刃物を持って人に襲い掛かろうとしたのに気付いたからだ。
場は混乱した、叫びながら逃げるもの、少し離れたところで興味深そうに見てるもの、逃げる人に押され倒れる人。
「……ちっ、避けやがって……」
「なんで……」
理由を聞こうとするが、それよりも早くこちらに走ってくる。
……今度はスローモーションにはならず、普通の速さでの突進だ。
(……カウントはもう0に近かったはずだ……だとしたらやっぱりこのカウントは……姫野さんにこの男を近づけちゃいけない!!!)
勇気はすぐ立ちあがり、姫野がトイレに向かった逆の方向へと走り始めていた。
「待てや!!」
こうして、男との鬼ごっこが始まった。
***
「はぁ……」
女子トイレの個室、姫野はため息をついていた。
(顔が赤い……変な顔でしたかね……なんでこんなこと気にしてるんでしょう、私……)
手鏡を見ながら、姫野はさっきの出来事を思い返す……
――すると
(……ん? なんでしょう……? 外が騒がしいような……)
ドドドドドド
大勢の人が一斉に走るような地響きと女性の高い叫び声が聞こえる。
異常だと気づき、姫野は焦りながら外へ出る。
「!?」
あたりにはものが散乱しており、人っ子一人いなくなっている。
「……一体何が……赤穂くん……」
姫野は勇気の色を探し、歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます