第10話 プレゼント選び

「わぁ。やっぱり広いですね。ここのショッピングモールは」

 ここは高校から20分ほど離れたショッピングモール。

 やはり平日なのでちらほら学生が見える

 まぁ当然うちの高校のものもいる。

 ……やけに視線が集まると思ったら、そう言うことか

 それに、やたらと姫野さんのテンションが高く、辺りをキョロキョロしている。


「こう言うところ好きなの?」

「はい! やっぱりお買い物は楽しいんですよね」


 彼女の笑顔の破壊力は今日も絶大だ。

 だが、俺は別のことも気になっていた。

 それはカウントのこと……今、姫野さんをみると、カウントが[00:58]になっている。(俺は[00:59])つまり、あと1時間以内に何かが起こると言う予想だ。


 それにあの如月の警告?のようなもの。

 ……あの時の如月は普通の様子ではなかった。


「赤穂くん……?」

「あぁ、ごめんごめん。 じゃあ、まずはどこから行こうか?」

「その子の好きなものってわかりますか? バックとかキーホルダーとか、動物でも大丈夫です」

「うーむ……」


 如月の好きなもの、と考えた時に真っ先に浮かぶもの……

 俺は膨大な記憶の中から探す。

 正直如月とは起こしてもらう、何か不運なことが起こることを教えてもらう、と言った思い出しか……。


 ――そこで俺は思い出す。

「そう言えばあいつ……タツノオトシゴ好きだったな」


 それは小学4年生の頃に行った宿泊学習。

 夜の水族館を見せてもらう機会があった。

 夜には暗く、幻想的な世界が広がる水族館……そこでの自由行動で、俺は如月と出会った。


 俺の頭にはその日のことが頭の中に思い出される。

『君もタツノオトシゴ好きなの?』

 


「……とりあえずキーホルダー見に行きましょうか」

 姫野は懐かしんでいる勇気の姿を見てふふっと笑うと、エスカレーターに向かって歩き出した。

「……? そうだね」


         ***


「……たくさんありますね、何色のタツノオトシゴが好きだったとか覚えてますか?」

「いや、特になかった気がする……ま、オレンジでいいか」

「……それが無難ですね」


 これを明日、如月に渡す……喜んでくれるといいな。

「この後ですが……すいません。私の買い物に少し付き合ってくれませんか?」


「あぁ……いい――」


 いいよと言いかけたところで、突然目の前が真っ赤になり、胸が苦しくなる……


 痛い。痛い痛い痛い。とても痛いが、なぜか口から痛いと言う言葉が出ない。


 まるでそれは呪いのように、のしかかる。


「赤穂くん? 顔色悪いけど平気ですか?」

「……あぁ、大丈夫だよ」

 ……多分、この選択次第でカウントが変わるのだろう。

 勇気は苦しみながらも冷静に状況を考えていた。


 さらに冷静なこともあり、ある言葉が思い出される。


『今日は……真っ直ぐ帰ってね。寄り道しちゃダメだからね!』


 それは、如月の警告だった。


「……すまん、それは今日じゃなきゃダメなのか?」

 声を振り絞る。

「はい……今日じゃなきゃダメです。 ……あぁ、でももちろん赤穂くんは断っていいんですよ! ……私の用事なので」


 ……もし、このカウントが俺の嫌な予想通りだったら……


 ……なおさら姫野さんを放っておくことはできない。


「……俺も行くよ」

「!! 本当ですか! ありがとうございます!」


 俺の胸から痛みは消え、視界がクリアになっていくと、姫野さんの笑顔が1番に見れた。

 そんな姫野さんのカウントを見ると、変わらず[00:40]俺も当然[00:41]だ。


 あと、40分……

 一応何が起こるかわからない、けど色々な準備はしてきた。

 何が起ころうとも……せめて、姫野さんだけは守る。そう決意した俺だった。

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