第9話 警告

 ……苦しい。

 目の前が真っ赤に染まる。

 これは……昼の時のおかしな現象?


 真っ赤な世界には黒い影が一つ、どこからか現れそれはやがて近づいて来る。

「ちょ、おい! こっち来んなよ!」


 黒い影はただただこちらに近づいて来るのみ。

 チラリと、何かが見える……


「あれは……」

 ナイフだ。

 果物ナイフとはいえ、刃物であり凶器だ。

 近づくたびにはっきりとわかる体の形。

「やめろ! これ以上近づくな!」

 ナイフが俺の体を刺し――

 

         ***



「……きて」


 ……んあ?

「……きてってば、起きて!」


 目が覚めると教室で如月が俺を起こしていた。

「もう! 寝不足? 前も言ったけど、授業中寝ないで! 次見つかったら補習だよ!」


 今は授業中、気がついたら寝ていたようだ。


「如月……普通に話してくれるんだな」

「そりゃそうよ! ……だって、勇気、今とっても辛そうにしてたもん」


 如月は心配そうに言った。

 たしかに汗をびっしょりとかき、鳥肌が止まらなくなっていた。

 先程の夢はまるで現実。

 とてもリアルな怖い夢……


 でもそんな夢を見て、冷静になれるほど俺は素直に嬉しかった。

 気まずく、喋ることもあまりない中、心配っていう理由で如月は俺を起こしてくれたのだ。

 そりゃあ嬉しいに決まっている。


 この嬉しさを誕生日プレゼントで返さなきゃな。


 ……だが、俺たちはあることを忘れていた。


「おい、授業中だぞ!」

「「はい!! すいません!」」


 ……周りからはクスクスと良い意味での笑いが起こっていた。


 ……寝不足である理由は俺は昨日この頭のカウントについて色々調べたからだ。


 1つわかった事がある。

 それは昨日俺のカウントが[7]から[1]になり、その1時間後、[23:59]という数字に変わった。


 1分ごとに数字が減っていくことから俺はこれが何かしらのカウントダウンという事が分かったのだ。

 ただ、そのなんのカウントダウンかを、インターネットで調べたり、外を歩いたけど何も分からなかった。

 ……いや、正確にいえば1つ仮説を立てかけたのだが、それはありえない。

 ありえない……と思いたかった。


 このまま時間が過ぎ、カウントの正体も謎のまま[05:34]まで減ってしまっている。


 ……まぁそんな事が重なり、今は寝不足だ。


 ちなみに朝、姫野さんを見てみると彼女も[05:33]という数字になっていた。

 俺よりも1分早い事が特に気になった。


          ***


「ねぇ、ゆ、勇気」

「ん? なんだ? 珍しい」


 俺は放課後になった瞬間、如月から話しかけられる。

 気まずくなる前も放課後になると如月はすぐ部活に消えて行く……

 だからこんなことは初めてだ。


「今日は……真っ直ぐ帰ってね。寄り道しちゃダメだからね!」


 急にどうしたのか……改めて顔を見ると、明らかに如月の様子がおかしい。


 焦っていて、顔色が悪い。

 まるでなにか恐ろしい事があったかのようにすこし震えている。

「おい、如月。大丈夫か? 辛いんなら……」

「今は私のことはいいの、それで勇気は真っ直ぐ帰ってね! わかった?」

「でも、外せない用事があるんだ」

「何よ?」


 ……言えない。

 如月には誕生日プレゼントを一応サプライズで渡すつもりだ。

 いつも渡さない俺が急に渡したら驚くだろう?

 だから絶対に言うことはできない……


「すまないが……言えん」

「ふーん……」

 如月は考え込み、そして決める。


「わかった……とりあえず、気をつけてよね」

「おい、本当に大丈夫か如月、顔色が……」

「いいから、自分の周りをよく見て行動して」

「お、おう……」

 顔色の悪さは変わらずで、如月は自分自身の心配だけしてろと言い、教室から出て行った


 ……如月は昔から勘がよく当たる。

 俺は嫌な予感がしてならなかった。

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