第7話 帰り道

4時間目・芸術選択 前


「なぁ……如月」

「なぁにー」


 如月が拗ねている、と涼真は教えてくれた。

 たしかに最近は話す回数も減って、少し気まずい……


「えっとだな……」


 いつもは普通に話せるのに、こう言う時に限って言葉が出てこない

「華ちゃん! 一緒に行こー!」

「あ、うん! ……ごめん、勇気、また後でね」


 友達に連れられていってしまった。

 如月は選択授業を音楽で取っている。

 習字を取っている俺とは移動する教室が全く違う。

「……また、5時間目が始まる前かな……」


5時間目・体育 前


「如月!」

「ごめん後でーー!!」


 女子は体育ですぐ着替えに行ってしまう。

 ……本当にタイミングが悪い。


「おまえ、大変そうだな」

「しょうがねぇだろ、今までこう言うことなかったんだから……」


 後ろから肩に手をトンと置いてきたのはやはり涼真だ。

 こちらを面白そうにニヤニヤして見てきやがる。


「まぁ、勇気と如月さんなら仲が悪くなるなんてことはないだろうからな。お前なら大丈夫だ。頑張れよ」


 そう言われてもな……


放課後


 ――ガタンゴトン


「どうしたのですか?」

「ああ……ごめん、顔に出てたか」


 結局、放課後になって如月はすぐ部活に行ってしまった。

 また、今日もまともに話せていないのである。

 なので俺は約束していた通り姫野さんと帰り途中だ。

 途中俺が乗り換えるまでは帰りが一緒とのことで、30分ほど一緒だ。


「実は……仲の良い友達が訳あって拗ねちゃって……話かけようと頑張ってるんだけど、結局うまく行ってないんだ」


 俺は姫野さんに簡単に説明した。

 昼に姫野さんの話を聞いてから……俺は彼女のことを秘密を共有した仲としてとても信頼していた。


 だからつい、相談という形になってしまったのである。


「贈り物なんてどうでしょう? もちろん、物で釣ろうとかそう言うものではありませんよ!! ただ、日頃の感謝の意味も込めて何か渡してみてはどうでしょう?」

「……そういえば、もう少しであいつの誕生日だな……」

「え、そんな大事なこと、今思い出したんですか!? いつなんですか?」

「……明後日」

「それ、もう少しってレベルじゃないですよ……」


 流石の姫野さんも呆れ顔になる。

 俺としても驚きだ。

 最近別のことに気を取られていたとはいえ、如月の誕生日を忘れかけてたなんて


「……ちょっとLINE交換いいですか?」

「え、あぁいいけど……でもどうして?」

「どうしてって……忘れてたからです。でも今はそれより誕生日プレゼントのことです! また後で連絡しますね」


 また後で……どう言うことなのだろうか。



 電車のアナウンスが鳴り響く。

 もうそろそろ俺の乗り換える駅だ。

「そっか、もう着くのか……じゃあ早く交換しなきゃな」


 こうして、俺のLINE友達は3人となった。


「ふふっ、私のLINEの友達2人目ですね」

 気がつけば、にっこりと姫野さんがこちらに顔を覗き込んでいた。

 ……破壊力が凄まじい。

「じゃあ、またな」

「はい。また明日」


         ***


ガタンゴトン


 姫野さんの乗っている電車が行ってしまった。

 ……俺は夢を見ているのだろうか、まさかあの姫野さんと一緒に帰る日が来ようとは……


 俺が感動を噛み締めていると、後ろから声がする。

「ねぇ、君。ちょっと良い?」

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