第6話 約束の昼休み

キィ  ガラガラ


 家庭科室はカーテンがすべて閉め切っていてとても薄暗い。

 不気味すぎてお化けの一つや二つは軽く出てきそうだ。


「ごめん、待たせたかな」

「大丈夫ですよ。今来たところなので」

 家庭科室の中央に姫野さんはいた。

 やっぱり……可愛い。


 薄暗いからか、二人きりだからか、よく分からないが俺の心臓はいつもの2、3倍は早く動いていた。


「そこ、座ってください」


 姫野は覚悟を決めた顔で、こちらを向き話し始める。

「えと、私が赤穂さんに会いに来ている理由……でしたよね」

「おう……」


 姫野は手を握りしめ、

「……実は私、人の事が色で見えるんです」

「……色?」

「はい。人のことをじっと見ると、背後に色が見えてくるのです。その色はとてもさまざまで、赤色の人もいれば、緑色の人もいるんですよ。でも、ある時私は気づきました。その色はその人の内面。つまり裏の顔がほぼわかると言うことです」

 世の中には音楽が色で聞こえてくる人がいるらしい。

 同じようなものだろうか


「初めて……だったんです。私と同じ色の人と会うのは。周りはほとんど黒ばかりで、たまに白の人もいました。けれど、近づくと眩しすぎて……さっき言った赤色や緑色の人たちだって薄すぎてほぼ黒に飲まれています」

「ちなみに俺と姫野さんは何色なんだ?」

「紫です」

 紫……パッとしないなぁ


「私……とっても嬉しかったんです。自分と同じ色の人に出会えて。赤穂くんにあった一週間前、ありましたよね? 実はあの日に私は自分の見えるこの色について知りました。周りを見ると黒色ばかりで、思わず私は走り出してしまいました。どこに行っても黒、黒、黒。そして気がついたら……赤穂さんとぶつかっていました」

「そんな事が……」

 俺とぶつかった時の涙……もしかしてあれはぶつかった時の痛みで泣いたわけではなさそうだ。

「赤穂くんのおかげで救われました。ありがとうございます。……もう少し早く話せればよかったのですが……男の子と話す機会があまりなかったので緊張して話そびれてました」


 と、姫野はモジモジして顔を赤らめている。

 その様子は普段の彼女からは見れないもので、信じられない可愛さと、再認識した。


「……いや、大丈夫だよ。俺も話を聞けてよかった。ありがとう姫野さん」


 キーンコーンカーンコーン


「あ、もう時間がやばい、行かなきゃ!」

「そうですね……赤穂さん、帰りも一緒に帰りませんか? 私、赤穂さんともっと仲良くなりたいんです」

「あぁ、わかった校門で待ってるよ」

「はい! ありがとうございます!」


 ん……今一緒に帰る流れになったか?

 あの姫野と……まじか


 俺……最近いいことありすぎて死ぬのでは?

 そう思った勇気だった。


         ***


 ――とある家の一室

「はぁはぁ……花音ちゃん、ちょっと待っててね。準備終わったら会いに行くからね……ふふ」



 勇気と姫野のカウント……[7]

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