第5話 姫野との約束

「今日も来てたのか……姫野さん、で、何話したんだ?」

「……怪我はないか? とか……」

「それ、もう5回くらい聞いた」

「まじか」


 あれから姫野さんは1週間毎日俺のところを訪ねてくる。

 特に用事があるわけでもなく

 その様子を涼真が聞いて呆れる、これがワンセットだ。


「勇気は、疑問に思わないのか? なんで姫野が毎日勇気を尋ねてくるか。ハンカチはもう返してもらったんだろ?」

「ああ……そうだけど」

「なら、明日来た時聞いてみろよ。なんで毎日来るのかって」

「あー、頑張ってみるよ」

「お前って本当に女子と話すの苦手だよな」

「如月と……妹以外な」


 涼真はなんだかんだ話を聞いてくれる。

 こう言う時に役に立つ存在だ。


「2人だけかよ……あ、それと、忠告二つ。一つ目、ただでさえ姫野は人気があるんだ。周りからの目線とか色々気にしとけよ。二つ目、如月が拗ねてるからな、少しくらいは声かけてやれ」


 小声での忠告。

 ……そういえば如月と最近会話がやけに少ない。

「拗ねてたのか……」

「……それくらい気付けよ」


 女の子はやっぱり分からん。


         ***


「今日はいい天気ですね」

「そ、そうだね」


 この1週間で姫野との気まずさはほとんど消えたものの、話す内容は全然変わらない。

 天気、もしくは怪我の話だ。

「えーと、姫野さんはどうして毎日俺のところに来るのかな?」

「え……えーと」


 俺は勇気を振り絞って聞いてみた。

 姫野さんはいつものキラキラした笑顔、ではなく少し焦り、目が泳いでいる。

「……そうですね。話さないと、いけないですね……わかりました。では、今日の昼休みは空いていますか?」

「空いているが……」

「そうですか! では西校舎の2階。家庭科室に来てくれますか?」

「……わかった」


 昼休みの西校舎はほとんど人気がなく、日があたりにくくやや暗い。

 そんなところに俺と二人で大丈夫なのだろうか


「じゃあまた後で会いましょう」


 こうして俺と姫野は昼休みに会うことになった。


勇気と姫野のカウント……[7]

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