第4話 姫野のクラス訪問

 朝、目が覚めると頭の上のカウントが[15]から[14]になっていた。

 もしかして1日ごとに減っていくのだろうか……


         ***


「あ、おはよ〜勇気」

「なんだ、如月か」

「なんだってなによ〜! ……ねぇ、なんか気づかない?」

「……?」

「もう!!」


「お前ら今日も元気だな」


 声をかけてきたのは俺の右隣の席の大塚涼真。

 高校1年生の時に転校してきたやつで、2年になった今は生徒会の書記を担当している。


「おはよ〜大塚!」

「はい、おはようさん。お、如月さん髪切ったんだ、いいね」

「わかった? これが普通の反応だよ?」


 ……髪切ってたのか、全然気づかなかった。

「俺には同じ髪型に見えるが」

「前はもう少し長かったでしょ! 今はほら! 短い」

 ……と、言われても分からん


「おい勇気、お前に客だぞ」

「ん?」

 

 後ろから「無視すんなー」と、声が聞こえるが、まぁ気にしないでおこう。

 出入り口の方に目を向けると、そこには昨日会ったばかりの姫野花音の姿があった。

「姫野さん? おはよう」

「赤穂さん。おはようございます」


 何の用だろうか……というか、裏で人気とはいえ彼女にしたいランキング1位だ。

 とても目立つ。

「ハンカチ、返しにきました」


 にっこりと天使のようなスマイル。

 くっ……人気なのもわかる……


「わざわざ、ありがとうな。その……本当に怪我はなかったか?」

「はい……赤穂さんこそ、平気でしたか?」

「あぁ、大丈夫だ」

「それは良かったです」


 ……なんと言うか、会話のネタがなさすぎて気まずい……

「あ、もうこんな時間ですね! クラスに戻りますね。それでは、また」

「ああ」


 ん……また?


「お前いつ姫野さんと知り合ったんだよ?」

「まぁ、ちょっとな」


 涼真は軽くいじってくるが、如月は少し怒ってる?

「無視して悪かったって」

「……そうじゃない」


 ……如月はよく分からん


         ***


 その日から毎日のように、姫野さんが訪ねてくるようになった。


         ***


「おはようございます」

「ああ、おはよう」

「……」

「……」

「……怪我……本当にない?」

「……はい。赤穂さんこそ……」

「俺も大丈夫……」

「……」

「……」


 ほぼ、毎日これだ。

 特に話す話題もお互いになく、怪我のことだけを聞く毎日。


 変化もなくもはや面白いその変な光景は、クラスの人はもう見慣れてきていた。


 俺は毎日姫野さんに会うたびに気づく……俺と姫野さんの頭上の数字、そういえば一緒だな……

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