280話 新人戦準決勝





「やあ」

「こんにちは」


 試合場で顔を合わせたミケルとセルビアは、そう挨拶をした。

 互いに気負うところはなく、自然体で向かい合う。


「さあ始まります。準決勝第一試合ミケル・ウィンテスVSセルビアンネ・ブレイドホーム。

 両者の経歴はあまりに対極。

 ミケル選手は芸術都市のハンターとして魔物を狩り、結界を守り、ハンター登録後の四年間で己を鍛えてきた努力の人。

 対してセルビアンネ選手は御覧の通りの実戦経験もない幼い身ながら、なみいる年上の男たちを叩きのめして勝ち上がってきた英才。

 それもそのはず、なんとこのセルビアンネ選手はかの英雄、竜殺しのジオレイン・ベルーガ―卿の娘」


 実況のアナウンスが大きく響き、審判が二人に準備を促す。


「ここまで勝ち上がった外縁都市唯一のハンターであるミケル選手が意地を見せるのか。

 幼い体からは想像もつかない強靭な魔力を秘めたセルビアンネ選手がその才能を見せつけるのか。

 オッズは僅かにミケル選手が優位と示しているが、その差は本当に僅かだ。

 どちらが勝つか、皆様どうぞ目を大きく開いてご覧ください」



 ミケルは愛用の長剣を、セルビアはセージから借り受けた鉈――竜角刀を使う前に使っていたもの――を構える。

 互いの武器に刃引きは無い。触れれば切れる怪しく鈍い銀の輝きが放たれて、それを見た観客が歓声を上げる。


「それでは皇剣武闘祭新人戦準決勝第一試合、始めっ‼」



 先手を取ったのはセルビア。

 彼女は兄の鉈を構え突進する。

 才気溢れるとはいえ、実戦経験豊富なミケルに基本スペックでは遠く及ばない。

 魔力量のみがややミケルを上回っていたが、身体能力、質量、技量、経験は大きく劣っている。

 セージであれば距離をとって実力差を埋める搦手をしただろう。

 だがセージを追いかけるセルビアにはそれが出来ない。


 彼女の脳裏に焼き付いている兄の姿は、圧倒的格上に囲まれながらも一方的に虐殺する姿だった。

 血統と環境に恵まれながらも、本当の意味で才能を開花する機会に恵まれなかった彼女がその姿を追いかけるには多くのものを切り捨てる必要があった。


 だから無策で突っ込む。

 セルビアが鍛えてきた戦い方は、ただそれだけなのだから。


「ふっ」


 ミケルはそれを見て笑った。

 油断でも慢心でもなく、ミケルはセルビアが格下だと見抜いている。

 そして簡単に勝てる相手ではないことも。

 だから心を躍らせて、笑った。


 ミケルの長剣がセルビアの鉈と打ち合い、大きな金属音が響く。


 ミケルはそのまま鍔迫り合いに持ち込み、体格と体重の差を生かしてセルビアを転がそうと思ったが、剣の質で劣ることを察して、止めた。

 ぶちかましで吹き飛ばし、体勢を崩しながら離れたセルビアに衝裂斬を放つ。

 セルビアは踏ん張ることを止め尻を落として衝裂斬を躱し、そこから地を這うような低い姿勢で、ミケルに襲い掛かる。

 ミケルは蛇のように這いより足元を狙うセルビアを、踊るようなステップで軽やかにいなして距離を保ち、衝裂斬を放って攻める。



 ******



「父さん、どうなの?」

「分は悪いが、セルビアもそれはわかっている」

「大丈夫よね。怪我なんてしないよね」

「……それは難しいだろうな」


 観客席ではジオたちが固唾を飲んで見守っていた。

 そんな彼らに拡声器から興奮した声が届けられる。


「これは素晴らしい。素晴らしい攻防が繰り広げられております。

 息もつかせぬセルビアンネ選手の攻撃を、ミケル選手が華麗に躱していく。

 さすがは芸術都市のハンター。踊りはお手の物というわけですね、解説のラウド様」

「そうだな。リズムを刻み流れを生むダンスは武の道にも通じているという」

「なるほど、さすがは博識でいらっしゃる」


 実況と解説の声が闘技場内に響き、歓声が沸く。


「お仕事おつかれさまでーす」


 観客席には居たくなくて救護班(無給のボランティア参加)として脇に待機しているセージが、やる気のないラウドとそれをフォローをする実況にそう言った。

 ただ言葉の軽さとは裏腹に、その目は真剣な様子でセルビアとミケルを見ていた。

 そしてそんな彼を正規の救護スタッフが、シスコンを発揮して試合の邪魔をしないか心配そうに見ていた。



 ******



 強いと、セルビアはそう感じた。

 戦う相手が格上というのは初めてではない。

 だが一年前のマックスにしても、一回戦や二回戦の相手にしても、セルビアを幼い少女と侮っているところがあった。ともすればコネで参加しているだけだとも。

 だからセルビアは初めて油断のない格上の相手と戦っている。


 武器の質で勝っているから武器破壊を目論んでいたが、それは一合で見抜かれ警戒されている。

 さらにセルビアに遠距離の技が乏しいことを見抜いて、距離を取りながら丁寧に消耗を強いてくる。


 嫌らしくも堅実な戦い方に強いとそう感じて、勝てないかもと不安を感じて、セルビアは笑った。

 こいつをころせば、あたしはもっと強くなると本能が疼いていた。

 だから彼女は、ゾーンに入った。


 セルビアの速度が、一段階上がる。

 セルビアの技量と能力を見切っていたミケルは、一瞬だけ虚を突かれることになった。

 だがそれは致命的なものではない。

 その程度の奇襲、奇策は、予測はしていなくとも備えるのが常だ。


 ミケルは武器の耐久を心配して打ち合いを避けていたが、一度や二度の打ち合いで折れるわけではない。

 セルビアがゾーンに入ってまで出したスピードは、ミケルに武器を使わせることに成功した、ただその程度のものだった。

 そしてセルビアには、それで十分だった。


 ミケルの剣とセルビアの鉈が打ち合い、しかし金属音は響かなかった。

 セルビアは打ち合う直前で手首を返し、力を抜き、ミケルの剣をすり抜けさせた。


 セルビアは多くの面でミケルに劣っている。

 セージのたった一つの姿だけを追いかけているセルビアには、器用な戦術が使えない。

 そしてだからこそ一意専心をなしてきた剣術だけは、対人戦に優れる騎士養成校の技だけは、ミケルにも通用するものだった。


 打ち合う事なく交差する互いの武器は、一方が空を切り、一方が身を裂く形となった。

 それを狙っていたセルビアと、武器破壊のために打ち合うはずだと思い込んでいたミケル。

 両者に反応の差が表れるのは当然のことだった。


 ミケルは右腕を切り裂かれ、わずかに血が舞う。

 小手先の技で振るった鉈は皮と肉を浅く切るにとどまった。

 このダメージに大きな価値はない。

 だが虚を突いたことでミケルの体勢は微かに崩れた。

 この好機は逃せないと、地力で劣るセルビアは追撃を仕掛ける。

 対してミケルは、距離を取ろうと無理やりに剣を振るう。

 セルビアはそれを反射で避けながらミケルの足を狙うが、それは緩急のあるステップに惑わされて上手くいかない。


「ああああぁぁぁぁあああっ‼」


 セルビアは苛立ちを込めて獣のように、魔物のように吼える。

 魔力のこもったそれに圧され、ミケルは僅かに怯む。

 怯んだように、セルビアには見えた。

 だから突っ込んだ。


 狙うは一点、のけぞり気味の、あらわになった柔らかな喉元。

 確実に仕留めると殺意のこもった鉈は、しかし届くことはなかった。


 背の高いミケルを見上げたセルビアの死角から、回し蹴りが襲い掛かって小さな頭を強かに打ち据えた。


 セルビアは地面に倒れ、力を失った手からは鉈が零れ落ちた。

 ミケルはそれを蹴り飛ばして遠くにやって、長剣を構えなおす。


 ミケルは油断なく切っ先をセルビアに向けて警戒を払い続けた。

 失神を装っていたセルビアは、ちくしょうと心の中で呟いて、最後の博打に賭けようとして、


「そこまでっ‼

 勝者、ミケル」


 審判の試合終了宣言が響き渡り、砂を握りしめた。



 ******



「負けた、か」


 控室で投影魔法モニター越しに試合を見ていたカインはそう呟いた。残念だと思う反面、ほっとしたような気持ちにもなっていた。

 才能にあふれる妹にいつか追いつかれるだろうとは思っていたが、その時はまだ来てほしくなかった。

 そしてそんな妹と真剣を手に向かい合う事も、したくはなかったから。


「あとは俺が勝つだけだな」


 大会運営スタッフに準備をお願いしますと言われて、カインは震える足に力を入れて腰を上げた。



 カインが闘技場の舞台に上がると、対戦相手は既に待っていた。


「妹は負けたようだな」


 対戦相手の女は、レイニア・スナイクは、男のような口調で言った。


「ああ、そうだな」

「少しがっかりしたよ。近くで見ていたけど、聞いていたほどじゃあ無かったから」

「そうか」

「あんたは兄よりも強いんだろ。緊張してるみたいだけど、その実力をしっかり発揮してくれよ」

「ああ」


 上の空で気のない返事を繰り返すカインに、レイニアは苛立った様子を見せる。


「情けない、震えてるじゃない」

「そうだな」

「少しは言い返したらどうなんだ」

「……」


 カインは答えず、ただちらりと審判を横目で見た。

 審判はその飢えた目の色を見て、苦笑して首を横に振った。


「もう少しお待ちください。

 それとお嬢様、この会話は拾われていますので、もう少し観客受けを考えられた方がよろしいかと」

「ふんっ」


 審判の言葉にレイニアは鼻を鳴らして答えた。


「さてさて先ほどとは打って変わって両者険悪な態度を隠そうともしていません。

 一人は先ほど健闘むなしく敗れたセルビアンネ選手の兄、カイン・ブレイドホーム選手。

 かの天使に続く英雄二番弟子であり、養成校やギルドでの実績はないものの、予選から昨日までの試合を見た方は、もはや彼の実力を疑うことはないでしょう」


 実況がカインを煽り文句で紹介し、それはレイニアへと続く。


「そして実力を隠していたのはこちらも同じ。

 守護都市出身の、最強の皇剣の姪っ子にして、筆頭弟子。レイニア・スナイク選手。

 カイン選手と同様に目立った実績はないものの、ラウド・スナイク様直伝の飛翔剣を使いこなし勝ち上がってきたレイニア選手は、なんと国立エーテリア大学に通う才媛。

 精霊様より二物も三物も与えられた彼女がかの英雄の息子を打ち倒すの――」


 そこで唐突に、実況の横から割って入る声があった。


「レイニー、お前を弟子筆頭と認めてはいない。だがそう名乗った以上、ジオの息子に負けることは許さん」

「――はい。ありがとうございます、ラウド様。

 これはレイニア選手も気合が入る事でしょう」


 実況はそう言ったが、レイニアは勝手に言ってるだけなのにと、冷や汗を流していた。

 そしてカインが視線を感じて第二貴賓室に目を向けると、ジオが険しい目つきでぶちのめせと訴えていた。

 試合前からゾーンに入りかけていたカインの気持ちは、余分な緊張から若干冷めてしまった。

 そんな二人に審判が準備を促す。

 カインは鞘に収めた剣に手をかけ、レイニアは腰に下げた三本の剣を解き放つ。


「それでは最強の皇剣と竜殺しの英雄、両者の代理試合の様相も出てきたこの試合。

 オッズは美人大学生戦士レイニア選手の勝利にはっきりと偏っています。

 どちらが勝つか、皆様どうぞ最後まで目を見開いてご覧ください」



 先に仕掛けたのはレイニアだった。

 試合開始の合図が終わっても未だ剣を抜かないカインに向けて、剣を二つ飛ばす。

 正面からのそれをカインは大きく横に飛んで避けた。

 二つの剣はカインの背で旋回して飛び続ける。

 レイニアは残り一つの剣を手に持って、その切っ先をカインに向ける。


「来ないのか」

「……」


 レイニアの問いかけにカインは無言で返した。

 レイニアは飛翔剣を操り、カインを襲わせる。

 カインは背中から襲い掛かるそれを、レイニアを見据えたまま回避した。

 大きく避けたカインに向けてもう一つの飛翔剣が襲い掛かり、それもまた同じく避けられる。


 だがそれでいいとレイニアは思った。

 カインは飛翔剣を恐れて大きく避けている。それはミケルがセルビアに対して行った回避とは違う、余裕のない動きだ。

 そんな無駄な動きを繰り返せば体力も魔力も消費する。対して飛翔剣の単純操作に魔力はそれほど必要ない。

 状況は優位に進んでいると言ってよかった。



 ******



「ねえどうなの、お父さん。カインは大丈夫なの?」

「ふん、あいつの弟子に負けなどするか」

「あ、うん、そうだね」

「……」


 観客席では心配そうなマギーと、機嫌の悪いジオと、困り顔のアベルと、死んだ魚の眼をしているセルビアが、カインの試合を見つめていた。

 会場には実況の声が響き渡る。


「これは一方的な試合展開か。

 レイニア選手の飛翔剣を前にカイン選手は防戦一方。

 これまでの選手は何とか飛翔剣をかいくぐってレイニア選手と接近戦に持ち込んでいましたが、それも難しい様子。

 それともカイン選手は何かを狙っているのでしょうか。いかがでしょう? 解説のラウド様」

「……馬鹿め」

「はい、さすがのレイニア選手ですね」


 ラウドの発言にかぶせる形で、実況が慌てて声を上げる。

 その意味が分からなかった救護班の方では、疑問の声が上がる。


「どういうことかわかりますか?」

「次兄さんが様子見してるのを勘違いしてるって言いたかったんでしょうね。でもまあこのまま進むとレイニアさんが有利なわけだから、実況の人の言い分も間違ってないんですけどね」

「ほほぅ、さすがですね」


 セージはセルビアのそばに居てあげたいとは思っていたのだが、スノウの娘に万が一があってはいけないし観客席には戻りたくないので、引き続き救護班でボランティアをしていた。

 とはいえ試合が終わるまでは手持無沙汰なので、雑談がてら解説なんかを始めていた。



 ******



 おかしい。

 飛翔剣が二本しかない。

 地面から隠してある三本目が出るとか、見えないように射出した小さなものが魔力を隠して襲い掛かって来るとか、そういう事が起きない。


 カインはマックスが敗れた試合も、そして決勝大会での一回戦や二回戦のレイニアの戦いぶりも見てきた。

 彼女はシンプルに剣を飛ばすだけでそれらの試合に勝ってきた。

 だが飛翔剣の使い手ならば、絶対に隠し玉があるはずだ。


 それは例えば魔力反応をゼロにして膝の裏を的確に射抜き、体勢を完全に崩したところに本命を雨あられとぶつけてくるとか、剣で払おうとしたタイミングで爆発四散させて空振りを誘いつつ視界を奪ったその隙を突くとか、とにかくそういう嫌らしい戦い方をするはずなのだ。

 カインやセルビアの特訓相手を務めた飛翔剣の使い手は、つまるところセージはそうしていたのだから。


 だがレイニアからそんな嫌らしさはまるで感じない。

 飛翔剣は死角こそ突くものの真っすぐに魔力も隠さずカインを狙う。スピードに緩急を付けたり、カインの回避先の先読みなんかもしてくるが、どれも素直で単純だ。

 カインの知っている飛翔剣は避けたと思ったのに当たっていることがざらで、むしろ思い通りに避けれたとしてもそこで喜ぶことすら読まれて、隙有りと有効打をとっていく嫌らしさがある。


「……行くか」


 逃げ続けてもレイニアは奥の手を見せない。ならこちらから踏み込まなければならないだろう。

 カインは意を決してレイニアに向かって行った。



 道場の試合で、未だカインはアベルに及ばない。

 だがアベルはカインを己より強いと、レイニアに語った。

 それは決して嘘ではない。

 カインはアベルには負けるが、セルビアには勝てる。

 セルビアはカインに負けるが、しかしアベルには勝てるようになりつつあった。

 それは相性の問題もあったが、それだけではなかった。


 カインは自分の弱さをよく知っている。

 だからセルビアとこの大会で直接剣を交えることを恐れた。

 戦えばきっと負けると、そう予感していた。


 カインは自分をよく知っている。

 一年前に黒く焦げ付いた記憶を取り戻すのと同時に、カインは一つの扉を開いた。

 カインにとって剣は殺戮に使うものだ。

 憎い相手を殺すためのものだ。

 悪党を殺すためのものだ。

 だからその剣は、家族に向けると鈍ってしまう。


 カインは、そしてアベルはそれを知っていた。

 既に中級相当の実力を持つカインにとって、これまでの対戦相手は殺さないよう気を使わなければならない相手だった。

 そして今回のレイニアは本気になっていい相手だった。

 だからカインはこの大会で初めて、殺意ほんきを見せる。



「――っ‼」


 レイニアはカインに恐怖を感じて、大きく飛びのく。

 彼女もまたカインの試合をよく見ていた。だからこそアベルより強いという言葉を疑っていた。その誤認が、カインの殺意きはくに正された。


 カインの進路をふさぐように飛翔剣を走らせる。

 だが速度も軌道も見切られた後のそれが役に立つことはない。

 カインは剣を鞘から抜いて、飛翔剣を二本とも両断する。


 観客が歓声を上げるより早く、

 実況が称賛の言葉を述べるより早く、

 折れた剣先が飛ぶより早く、

 カインはレイニアとの距離を詰めた。


「ちっ」


 レイニアは最後の一本を振り下ろしカインを迎え撃つ。

 カインはそれを転がって避けてレイニアの後ろをとり、その足を剣で払う。

 切っ先がレイニアの太ももを裂いて鮮血が舞った。


 レイニアは咄嗟に距離をとり、剣を振るう。

 それをミリ単位で避けて、カインは踏み込む。

 剣の切っ先は真っすぐに心臓を狙い、身をよじってレイニアは躱す。

 だが躱しきれなかったそれは、左の二の腕に深々と突き刺さった。

 痛みにあえぐ余裕もなく、レイニアは眼前まで迫ったカインを剣の柄で打ち据える。

 手打ちのそれは痛打にはならず、しかし一応の距離はとる事が出来た。


 レイニアは右足と左腕を痛め、残る武器は飛翔剣を操るための術剣一本のみ。

 対してカインはほぼ無傷で、左腕に突き立てられた剣も抜き取られ、しっかりとその手に握られている。


「降参するか?」


 審判がレイニアに問いかけた。

 レイニアは無言で首を横に振った。

 諦めるのは、諦める。

 心の中でそう唱えた。


 カインが迫ってくる。

 レイニアは剣を振るった。痛みで乱れる意識を無理やりに集中させて、折れた飛翔剣の切っ先を飛ばしてカインを襲わせる。

 それらは足捌きだけで躱され、何を捉えることも出来ず遠くへ飛ぶ。

 飛翔剣の操作に意識を裂いたレイニアの剣は簡単にかいくぐられて、カインの拳はレイニアの腹を深くえぐる。

 レイニアは膝をつき、カインはその首に剣の刃を当てた。


「そこまで。勝者、カイン」


 審判の試合終了宣言が響き渡った。

 旋回し、再度襲わんと飛んでいた飛翔剣は地に落ちて、カインは剣を下ろした。




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